気体液体転移は常温の世界で日常的に観察される現象であるが、古 くから統計力学の難問の1つとされて来た。ヘリウム4で起きる気体液体転移は低温 で起きる為に量子効果が加わり古典気体での転移にはない異質な側面が現れる。一般 に量子系は古典系に比べてより問題が難しくなるのが普通であるが、ヘリウム4では ボース統計の為にむしろ問題が簡単になる。これを考察するには、ある性質を持つ多 角形の場合の数を評価する事が必要である。最近、教育学部中村教授によりこれに答 えるグラフ理論の成果が得られた。この結果を気体液体転移の問題に適用すると、ボ ース気体で気体液体転移が起きるのに必要な引力は古典系でのそれに比べて桁はずれ に弱くても十分である事がはっきりした。この結果はヘリウム4での転移が古典気体 での転移とは異質な『量子気体液体転移』である事を示している。この研究を通じて ささやかではあるが数学と物理の1つの出会いを体験した様に思う。