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代数学 II 補遺

次の定理を証明するのを抜かしていました。すみません。 証明は簡単なので、以下では略証のみを書いておきます。


定理 0.1   体 $k$ とその有限次拡大体 $L$ との間の中間体 $M$ に対して、

\begin{displaymath}[L:k]=[L:M][M:k]
\end{displaymath}

がなりたつ。

[証明]

$[L:M]=e,[M:k]=f$ とおく。定義により、
\begin{align*}&M=kv_1+kv_2+\dots+kv_f (\text{直和})\\
&L=Mw_1+Mw_2+\dots+Mw_e (\text{直和})
\end{align*}
をみたすような $v_1,v_2,\dots,v_f\in M,w_1,w_2,\dots,w_e\in L$ が 存在する。

\begin{displaymath}L=\sum_{ij} k\ w_iv_j
\end{displaymath}

がなりたち、これが直和であることもすぐに確かめられるので、$ef$ 個の元

\begin{displaymath}\{w_iv_j ;\ i=1,\dots,e,\ j=1,\dots,f\}
\end{displaymath}

$k$ 上の $L$ の基底を与えていることが分かる。 すなわち、等式

\begin{displaymath}[L:k]=ef=[L:M][M:k]
\end{displaymath}

が成り立つことが分かる。


上の定理を使えば、例えば $\mbox{${\Bbb Q}$ }$ の 4次拡大 $L$ $\mbox{${\Bbb Q}$ }$ の3次拡大を 含むことはないことなどがわかります。(なぜだか考えてみてください。)


なお、No.11 のレポートで、例えば $\alpha=\sqrt[3]{5},\quad \beta=\sqrt[3]{5}\omega$ にたいして、 $\mbox{${\Bbb Q}$ }[\alpha,\beta]=\mbox{${\Bbb Q}$ }[c\alpha+\beta]$となるような $c\in \mbox{${\Bbb Q}$ }$ を求めよ、という問題について、 「求め方が分からない(教えてもらってない?)から、解答できない。」 と答えた人がいますが、 たぶんそのような人でも、

$\mbox{${\Bbb Q}$ }[\alpha,\beta]=\mbox{${\Bbb Q}$ }[2\alpha+\beta]$ を示せ

という問題にすれば解答できたと思われます。 ちょっとした考え方の変更で、本当は対処できる問題が 解けないのはもったいない話です。

土基善文



 

Yoshifumi Tsuchimoto
2000-07-14