next up previous
Next: About this document ...

    

代数学特論 I 要約 No.3

今日のテーマ:

\fbox{行列の固有値と弱固有空間II・Cayley Hamilton の定理}

今回も、$k$ といえば体を指すものとする。

前回、次の補題を証明し残した。

補題 1 (前回の補題2.5)   $A\in M_n(k)$ が与えられていて、その最小多項式 $f$$k$ 上の多項式として 一次式の積 に分解できた

\begin{displaymath}f(X)=
(X-\lambda_1)^{e_1}
(X-\lambda_2)^{e_2}
(X-\lambda_3)^{e_3}
\dots
(X-\lambda_l)^{e_l}
\end{displaymath}

とする。このとき、 $k^n$ の直和分解

\begin{displaymath}k^n =V_1\oplus V_2\oplus V_3\oplus \dots \oplus V_l
\end{displaymath}

で、
1.
$AV_i\subset V_i$
2.
$V_i$ 上では $A-\lambda_i E $ は巾零
となるものが存在する。$V_i$ は次の諸性質を満たす。
1.
$V_i$ での $A$ の最小多項式はちょうど $(X-\lambda_i)^{e_i}$ である。
2.
$V_i=\{v\in k^n; A^Nv=0 \quad(\exists N>0) \}$
3.
$V_i=\{v\in k^n; A^{e_i}v=0 \}$
4.
ある $p_i\in k[X]$ があって、 $P_i=p_i(A)$ は巾等($P_i^2=P_i$)かつ、 $V_i=P_i( k^n)$ がなりたつ。

定義 1 (前回の定義2.3)   $V_i$ のことを $A$ の固有値 $\lambda_i$ に属する弱固有空間と呼び、 $P_i$ のことを $V_i$ に対応する射影と呼ぶ。 。

定理 1 (Cayley-Hamilton)   $n$-次の正方行列 $A$ に対して、その固有多項式 $\Phi_A$

\begin{displaymath}\Phi_A(X)=\det(XE-A)
\end{displaymath}

で定義する。このとき、 $\Phi_A(A)=0$ がなりたつ。

問題 3.1   次の(複素数を成分にもつ)各行列の固有値(重複は考慮しない)と、 それに属する弱固有空間に対応する射影を全て求めよ。
1.

\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
3 & 1 & 9 & 8\\
-1 & 1 & 7& 6\\
0 & 0& 5 & 2 \\
0 & 0 & -3 & 0
\end{pmatrix}\end{displaymath}

2.

\begin{displaymath}\begin{pmatrix}
3 & 1 & 1 & 2 \\
-1 & 1 &3 & 4\\
0 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 0 & -1 & 1
\end{pmatrix}\end{displaymath}



Yoshifumi Tsuchimoto
2000-10-21