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代数学 II 試験解答

問題 1.1-1.4 のうちから2つを選び、解きなさい。

問題 1.1   次の各々の場合について、 $R$ のイデアル $I$ に対応する代数的集合 $V(I)$ の概形を描きなさい。

1.
$R=\mbox{${\Bbb R}$ }[X]$$I=(X^5-X)$ の場合。
2.
$R=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y]$ $I=(X-3,X^2Y-X-42)$ の場合。
3.
$R=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y]$ $I=((Y-X)^2-(X+Y)^2-(X+Y)^3)$ の場合。
4.
$R=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y,Z]$$I=(Y-Z)$ の場合。

(解答)

(1) $X^5-X=0$ $\mbox{${\Bbb R}$ }$ での解の全体が答えになる。

\begin{displaymath}X^5-X=X(X^4-1)=X(X^2-1)(X^2+1)=X(X+1)(X-1)(X^2+1)
\end{displaymath}

だから、 $\{-1,1,0\}$ を実数直線上にプロットすればよい。

(2) 連立方程式
\begin{align*}& X-3=0 \\
& X^2Y-X-42=0
\end{align*}
の解を求めればよい。 答えは $(3,5)$ を平面上にプロットしたものである。

(3) この問題はちと難しかったかも知れない。 $Y-X=T, X+Y=U$ とおくと、

\begin{displaymath}T^2-U^2-U^3=0
\end{displaymath}

なる方程式の曲線を描く問題になる。(つまり線型な座標変換を したわけだ。

$T,U$ に関する上の式は講義で扱ったから描けるはずである。 $(T,U)$ から $(X,Y)$ に戻すには、単にこれを $\pi/4$ だけ回転させて さらに $\sqrt{2}$ 倍に縮小すればよい。

\includegraphics[scale=0.5]{113.ps}

もちろん、「正攻法」で、$X,Y$ が大きい時等の漸近挙動等から総合的に判断して グラフを描いてもよい。

問題 1.2   $A=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y,Z]$ のイデアル $I=(X^2-Y^2-Z)$ について、次の問い に答えなさい、
1.
$V(I)$ を平面 $V(Z-1)$ で切った切り口(すなわち $V(I)\cap V(Z-1)$ の図形を描きなさい。(平面で切ったわけだからもちろんグラフは 平面上に描けばよい。)

2.
$I$ $Z-(X^2-Y^2-Z)$ とで生成されたイデアル

\begin{displaymath}J=(X^2-Y^2-Z,Z-(X^2-Y^2-Z))
\end{displaymath}

について、 $A/J$$0$ でない元 $[f],[g]$ で、 $[f][g]=0$ をみたすものを 一組求めなさい。 ただし $[?]$$?$$A/I$ でのクラスを表すものとする。
3.
上の $f,g$ について、

\begin{displaymath}fg=a(X,Y,Z) (X^2-Y^2-Z)+b(X,Y,Z)(Z-(X^2-Y^2-Z)) \end{displaymath}

を みたすような $a,b \in A$ を実際に求めなさい。

4.
$A/J$ の元 $ [Y^4+3Y^2+Z]$$X$ だけの式 $p(X)$のクラスとして表現しなさい。つまり、

\begin{displaymath}[Y^4+3Y^2+Z]=[p(X)]
\end{displaymath}

となる $p(X)$ を一つ求めなさい。

(解答)

(1) $X^2-Y^2-1=0.$ これは双曲線である。

(2)

\begin{displaymath}J=(X^2-Y^2-Z,Z-(X^2-Y^2-Z))=(X^2-Y^2,Z)
\end{displaymath}

となって、$V(J)$ は平面上の二直線 $X^2-Y^2=0$ とみなすことができる。 答えはたとえば

\begin{displaymath}f=X-Y, g=X+Y
\end{displaymath}

(3) これは諸君の選んだ $f,g$ の取り方によるわけだが、 上の取り方ならば、
\begin{align*}fg&=X^2-Y^2=(X^2-Y^2-Z)+Z-(X^2-Y^2-Z)+(X^2-Y^2-Z)\\
&=2(X^2-y^2-Z)+(-1)(Z-(X^2-Y^2-Z))
\end{align*}
でたとえば $a=2,b=-1$ とすればよい。

(4) $A/J$ のなかでは、 $[X^2]=[Y^2]$, $[Z]=0$ がなりたっているわけであるから、

\begin{displaymath}[Y^4+3Y^2+Z]=[Y^2]^2+3[Y^2]+[Z]=[X^2]^2+3[X^2]+0=[X^4+3X^2].
\end{displaymath}

ゆえに $p=X^4+3X^2$ とすればよい。

問題 1.3   $\phi: \mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y] \to \mbox{${\Bbb R}$ }[T]$

\begin{displaymath}\phi(X)=T^2 ,\qquad \phi(Y)=T(T^2-1)
\end{displaymath}

で定義する。このとき、
1.
${}^a\phi(0),{}^a\phi(1),{}^a\phi(2),{}^a\phi(-1)$ をそれぞれ求めなさい。
2.
$\ker(\phi)$ を求めなさい。 (ヒント: $\phi(X)=T^2 ,\qquad \phi(Y)=T(T^2-1)$ から $T$ を消去することを 試みなさい。) (さらにヒント: $\phi(Y)=T(\phi(X)-1)$. ここから有理式(「分数」)をつかえば $T$ を消去できるはず。ただし最終的な答えは分母を払った多項式の形でなければ 困る。)

(別のヒント: $U=T^2, V=T(T^2-1)$ の間の関係式を求めるには、 実は3変数の多項式環 $\mbox{${\Bbb R}$ }[T,U,V]$ のイデアル $(U-T^2, V-T(T^2-1))$ のグレブナ基底のうち、$U,V$ だけの多項式であるものを 取り出せばよいことが知られている。(辞書式順序について $T>U, T>V$ である所がミソである)なぜこれでよいかは成書を見てもらうことにして、 とりあえずは計算してみると何をやっているか分かるかも知れない。)

3.
$\operatorname{Image}({}^a\phi)$ の概形を求めなさい。 ( $t\to \pm \infty$, $t\to 1$ , $t\to \pm 1$ の時にどうなるかにとくに注意を 払うこと)

(解答)

(1)

\begin{displaymath}{}^a\phi(t)=(t^2,t(t^2-1))
\end{displaymath}

というわけであるから、 $t=0,1,2,-1$ をそれぞれ代入して、

\begin{displaymath}{}^a\phi(0)=(0,0),\quad
{}^a\phi(1)=(1,0),\quad
{}^a\phi(2)=(4,6),\quad
{}^a\phi(-1)=(1,0)
\end{displaymath}

という具合になる。

(2) ヒントにあるように、

\begin{displaymath}U=T^2, V=T(T^2-1) \quad(\phi(X)=U ,\phi(Y)=V \text { と書いた})
\end{displaymath}

から $T$ を消去すればよいわけだ。

\begin{displaymath}V^2=U(U-1)^2
\end{displaymath}

ゆえに、

\begin{displaymath}\phi(Y^2-X(X-1)^2)=0
\end{displaymath}

よって、 $Y^2-X(X-1)^2$ $\ker(\phi)$ に入るのを知る。 あとは

\begin{displaymath}\ker(\phi)=(Y^2-X(X-1)^2)
\end{displaymath}

を確かめればよいわけだが、これには例えば $Y$ に着目した割り算を 行う方法を使えばよいだろう。詳細は講義で解説したのでここでは略する。

(3) (省略)

問題 1.4  

$A=\mbox{${\Bbb R}$ }[X,Y]$ のイデアル $I=(X^2-4Y^2-1)$ $B=\mbox{${\Bbb R}$ }[T]_{(T^2-1)} $ とについて、 $\mbox{${\Bbb R}$ }$-準同型 $\phi:A\to B$ を、

\begin{displaymath}\phi(X)=\frac{1+T^2}{1-T^2},\quad
\phi(Y)=\frac{T}{1-T^2}
\end{displaymath}

で定義する。このとき、
1.
$V(I)$ を図示しなさい。
2.
$\phi(I)=0$ である事を示しなさい。
3.
上の二つの事から、 $\phi$ $\mbox{${\Bbb R}$ }\setminus\{\pm 1\}$から $V(I)$ への写像 $f$ を定めることが分かるが、 その $f$ について、

\begin{displaymath}f(0), f(\pm 2),f( \pm 3)
\end{displaymath}

をそれぞれ求め、さらにそれを(1) のグラフに書き込みなさい。

(解答)

この問題は問題11.2 とほぼ同じである。(もっと詳しく言えば、11.2 を単に $Y$ 方向に $1/2$ に潰しただけである。)したがって解答は省略する。


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Yoshifumi Tsuchimoto
2001-07-31