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代数学特論 II 要約 No.4

今日のテーマ:

\fbox{体の拡大次数}

定義 4.1   体 $K$ の拡大体 $L$ に対して、$L$$K$-ベクトル空間としての 次数 $\dim_K L$ のことを $L$$K$ 上の 拡大次数と呼び、$[L:K]$ で書き表す。 $[L:K]<\infty$ のとき、$L$$K$ の 有限次代数拡大と呼ばれる。

 
1.
$[\mbox{${\Bbb Q}$ }(\sqrt{2}):\mbox{${\Bbb Q}$ }]=2$.
2.
$[\mbox{${\Bbb Q}$ }(X):\mbox{${\Bbb Q}$ }(X^2)]=2$.
3.
$[{\Bbb C}(X):{\Bbb C}(X^3)]=3$.
4.
$[{\Bbb C}:\mbox{${\Bbb R}$ }]=2$.
5.
$[\mbox{${\Bbb R}$ }:\mbox{${\Bbb Q}$ }]=\infty$.

補題 4.1  
$K$ の有限次代数拡大体 $L$ が与えられているとき、 $L$ の任意の元 $a$$K$ 上代数的である。すなわち、 $K$ 上のある1変数多項式 $f(\neq 0)$ があって、$f(a)=0$ をみたす。 さらに、このような $f$ として最低次数のもの $f_0$ をとると、$f_0$ は既約で、

\begin{displaymath}\{h\in K[X]; h(a)=0\}
\end{displaymath}

$f_0 K[X]$ と一致する。

定義 4.2   上の $f_0$ のことを $a$$K$ 上の最小多項式と呼ぶ。

次の事実はこの講義の目的のためには必須の知識というわけではないが、 話がやりやすくなるので使うことにする。

定理 4.1 (``代数学の基本定理'')   複素数体 ${\Bbb C}$ は代数的閉体である。すなわち、${\Bbb C}$ 上の任意の1変数多項式 (ただし定数を除く)は必ず ${\Bbb C}$ のなかに根を持つ。

証明は複素解析学を知っているならば最大値の原理を使うのがもっとも簡明であろう。

系 4.1   複素数体上の1変数 $d$-次方程式

\begin{displaymath}f(X)=a_d X^d +a_{d-1}X^{d-1}+\dots +a_1 X+a_0
\end{displaymath}

は,必ず $d$ 個の根を持つ。すなわち、

\begin{displaymath}f(X)=a_d(X-\alpha_1)(X-\alpha_2)\dots(X-\alpha_d)
\end{displaymath}

と因数分解できる。

補題 4.2   既約な代数的集合 $V\in {\Bbb A}^n({\Bbb C})$ があって、 $V$ の関数体 $K={\Bbb C}(V)$ の単純拡大 $L=K(a)$ が与えられているとする。 いま、$a$$K$ 上代数的とすると、このとき、
1.
体の拡大次数 $[L:K]$$a$ の最小多項式の次数 $d$ と等しい。
2.
$V\times A^1$ の代数的部分集合 $W$ があって、$K\to L$ は 射影 $V\times {\Bbb A}^1\to V$$W$ への制限 $f$ から 定まる関数体の写像と同一視される。(既出)
3.
写像 $f$ は「ほとんどの場所で」 $d:1$ である。 すなわち、$V$ の代数的真部分集合 $V_s$ があって、$V_s$ を除いた部分では $f$$d:1$ の写像である。

問題 4.1   $L={\Bbb C}(X,Y)\subset K={\Bbb C}(X+Y,XY)$ とおくとき、 $L$$K$ 上の拡大次数 $d$ をもとめ、さらに

\begin{displaymath}{\Bbb C}[A,B]\ni f \mapsto f(X+Y,XY) \in {\Bbb C}[X,Y]
\end{displaymath}

なる準同型写像 $\phi$ が引き起こす多項式写像 $\Phi={}^a \phi:{\Bbb A}^2({\Bbb C})\to {\Bbb A}^2({\Bbb C})$ を考えて、 ${\Bbb A}^2({\Bbb C})$ の代数的真部分集合 $F$ で、 $\Phi$ $U={\Bbb A}^2\setminus F$ への制限 $\Phi\vert _U$$d:1$ となるような ものを一つ見つけなさい。




2001-10-31