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代数学II 要約 No.2

今日のテーマ:

\fbox{環の標数、9去法、「11去法」}

${\mbox{${\Bbb Z}$ }}/9{\mbox{${\Bbb Z}$ }}$ での計算は、九去法(あるいは、ナントカ占い)の名で知られている ものの簡単な説明を与える。

例題 2.1   $3457$$9$ で割ったあまりを求めよ。

(解答)
\begin{align*}&[3457]_9 \\
=&[3\times 10^3+4\times 10^2+5\times 10+7]_9\\
=&[3...
...^2+[5]_9\times [10]_9+[7]_9\\
=&[3]_9+[4]_9+[5]_9+[7]_9\\
=&[1]_9
\end{align*}

つまり $[10]_9=[1]_9$ であることが最大のポイントなわけだ。 同様にして、10進法で書いた数を $11$ で割ったあまりも 簡単に求めることができる。( $[10]_{11}=[-1]_{11}$)に注意)

$R$ に対して、その単位元を $1_R$, と書き、 $1_R+1_R$$2_R$とかく。 $3_R$, $4_R$ 等も同様。(この $?_R$$R$ は「石井浩郎」と「石井琢郎」 を区別するのに $\text{石井}_{\text{浩}}$ とか $\text{石井}_{\text{琢}}$とかくのと同様で、言わなくても分かるときには省略する。)

定義 2.1 (環の標数)   ある正の整数 $n$ があって、

\begin{displaymath}n_R=0
\end{displaymath}

が成り立つとき、このような $n$ のなかで正で最小のものを $R$ の標数と呼ぶ。 そのような $n$ がないときには、$R$ の標数は $0$ であると定義する。 $R$ の標数のことを、以下では $\operatorname{char}(R)$ と書く。

  ${\mbox{${\Bbb Z}$ }}/n{\mbox{${\Bbb Z}$ }}$ の標数は $n$ である。

上で、「余り」というものがでたついでに、整数同士の「余りを許した割り算」 について復習しておこう。この講義では特に断らない限りは次の意味の割り算をする。

定義 2.2   $m,n\in {\mbox{${\Bbb Z}$ }}$ とし、$n\neq 0$ であるとする。このとき、$m$$n$ で割った商 $q$ と、余り $r$ とは、次の関係式を満たす唯一のものとして定義される。

\begin{displaymath}m=nq+r \qquad 0\leq r \leq \vert n\vert-1
\end{displaymath}

この定義では、 $m$$n$ が負の数でも構わないということに注意しておく。 余りだけについて言えば、次のような言い換えも可能である。

\begin{displaymath}\text{$m$ を $n$ で割った余りが $r$} \quad {\Leftrightarrow}\...
...=[r]_{\vert n\vert} \text{ かつ } 0\leq r \leq \vert n\vert-1)
\end{displaymath}

割り算を用いて次の結果を証明できる

補題 2.1   ${\mbox{${\Bbb Z}$ }}$ のイデアルは $0$ か、または $n{\mbox{${\Bbb Z}$ }}$ ($n$ は正の整数)の形のものに限る。

前回、時間が余ったので次の補題について述べた

補題 2.2   正の整数 $n$ について、

先週述べたこの補題の証明はもう少し一般化できる。

まず次の言葉を用意しておこう。

定義 2.3  
1.
$R$ の元 $x$ が零因子であるとは、ある $R$ の元 $y\neq 0$ があって、 $xy=0$ が成り立つときに言う。
2.
$R$$0$ 以外に零因子を持たないとき、$R$ は整域であると言う。

補題 2.3  
1.
元の個数が有限の環の非零因子は必ず可逆である。
2.
元の個数が有限の環 $R$ が整域ならば、$R$ は体である。

レポート問題が複数ある場合には、一つを選んで解くこと。 保険のために二つ選んでもよい。その場合には評価はよい方のものを与える。 (和にはならない。)

問題 2.1   10進法で書いた整数 $n$ (例: $n=1234567890$) を13 で割った余りを求めるのは、 9や11のときほど簡単ではないが、つぎのようにできる。
1.
$n$ を三桁毎に区切る。( $n=\vert 1\vert 234\vert 567\vert 890\vert$ )
2.
区切ったものをそれぞれ符号をつけて加える。

\begin{displaymath}890-567+234-1 =556
\end{displaymath}

3.
加えた答えを $13$で割った余りを求める。 ($556$$13$ で割った余りは $10$)
この最後の答えが $n$$13$ で割った答えである。これはなぜか説明せよ。

問題 2.2   上と同様な考察により、 10進法で書いた整数を $17$で割った余りを「一定の桁数毎に区切って」 求める方法はないか?

問題 2.3   一般に、素数 $p$ に対して、 10進法で書いた整数を $p$ で割った余りを「一定の桁数毎に区切って」 求める方法はいつでも存在するだろうか? (但しもちろん $p= 2$$p=5$ の場合は例外とする。)




2002-04-18