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代数学II 要約 No.5

今日のテーマ:

\fbox{有限体上の線型代数について}

諸君は線型代数と言うと $ \mbox{${\Bbb R}$}$$ {\Bbb C}$ の上のそれしか知らないかも知れないが、 一般の体についても線型代数学の知識はほとんどそのまま使える。 例えば、行列, 行列式, 逆行列(ガウスの掃き出し法など), 線型空間とその基底、線型写像、などは体が違ってもほとんど 扱いは変わらない。 例えば問題5.1 を解いて感じをつかんで頂きたい。

但し、行列の固有値などについて固有方程式を解く必要があるので、 その根の取り扱いについて知るまで待たなければならない。 また、ノルムの正値性などを使う部分(二次形式の理論など)は修正する必要があったり、 問題によっては体の差が大きく効いてくる場合もある。臨機応変に対応して頂きたい。

定義 5.1   体 $ K$ の部分集合 $ k$$ 0,1$ を含み、$ K$ の演算をそのまま流用して 体になっている時、$ k$$ K$ の部分体である($ K$$ k$ の拡大体である)と言う。 $ K$$ k$ の拡大体ならば、$ K$$ k$ 上の線型空間でもある。 $ K$$ k$ 上の線型空間としての次元 $ \dim_k K$$ [K:k]$ で書き表し、 $ K$$ k$ 上の拡大次数と呼ぶ。($ [K:k]$ は有限でない時もある。) $ [K:k]$ が有限である時、すなわち $ K$$ k$ 上の線型空間として 有限次元である時、 $ K$$ k$ の有限次拡大であると言う。

補題 5.1   $ p$$ k[X]$ の既約元であるとする。このとき、 $ k[X]/(p(X)k[X])$$ k$ 上の拡大次数は $ \deg(p)$ と等しい。

補題 5.2   $ k$ の拡大体 $ M$, $ M$ の拡大体 $ L$ が与えられている時、

$\displaystyle [L:M][M:k]=[L:k]
$

がなりたつ。

補題 5.3   有限体 $ k$ の拡大体 $ L$$ k$ 上の拡大次数が $ d$ ならば、

$\displaystyle (\char93  L)=(\char93  k)^d
$

がなりたつ。 とくに、$ k$ の標数を $ p$ と書くと、$ (\char93  k)$ の元の個数は必ず $ p^N$ ($ N$ は正の整数)の形をしている。

($ \char93  ?$$ ?$ の元の数をあらわす記号である。)

問題 5.1   $ {\Bbb F}_{11}={\mbox{${\Bbb Z}$}}/11{\mbox{${\Bbb Z}$}}$ の元を成分に持つ行列

$\displaystyle \begin{pmatrix}
1 & 2 & 3 \\
4 & 5 & 6 \\
7 & 8 & 1
\end{pmatrix}$

の行列式と逆行列とを求めなさい。



2002年5月22日