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代数学II 要約 No.7

今日のテーマ:

\fbox{有限体の乗法群の構造と、有限体の存在II}

前回、いくつかの定理と補題の証明が残ってしまっていた。

定理 7.1 (定理6.1と同じ)   素数 $ p$ と正の整数 $ n$ にたいして、 元の数が % latex2html id marker 765
$ q=p^n$ の体は存在する。 もっと詳しくいうと、 % latex2html id marker 767
$ X^q-X \in F_p[X]$ が一次式の積に分解するような体 $ L$ (前の補題によって存在する) をとり、$ L$ のなかの % latex2html id marker 773
$ X^q-X$ の根の全体を $ K$ とおくと、$ K$ は体で、その元の数は % latex2html id marker 779
$ q$ になる。

この定理のうち、 $ K$ が体で、その元の数が % latex2html id marker 783
$ q$ 以下であることは前回 証明した。$ K$ の元の数がちょうど % latex2html id marker 787
$ q$ 個であることを示すには、 多項式の微分の概念を知っておいた方が便利である。

補題 7.1   体 $ k$ 上の多項式 $ p(X)=\sum_{k=0}^n a_k X^k$ に対して、 その微分を

$\displaystyle p'(X)=\frac{d}{dX}p(X)=\sum_{k=0}^n k a_k X^{k-1}
$

で定義する。この時、
  1. 微分は $ p$ の係数体をどう選ぶかに関係しない。
  2. 微分は $ k$-線型である。
  3. % latex2html id marker 800
$ (pq)'=p'q+pq'$.

補題 7.2 (補題6.2とおなじ)   有限体 $ K$ に対して、

$\displaystyle a_n= \char93  \{ x; x$$\displaystyle \text {の位数は } n \}
$

と定義すると、
  1. % latex2html id marker 808
$ a_n\neq 0$ であるのは $ n$% latex2html id marker 812
$ q-1$ の約数の時に限る。
  2. % latex2html id marker 814
$ a_n\leq \varphi(n)
=(1$    から $ n$ までの整数で, $ n$    と互いに素なものの数$ ) $

定理 7.2 (定理6.2とおなじ)   有限体 $ K$ にたいして、位数が $ \char93 (K)-1$ であるような $ K$ の元 $ x$ が存在する。 言い換えると、$ K$ の乗法群 $ K^\times$ は巡回群である。

系 7.1   素数 $ p$ と正の整数 $ n$ に対して、 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の既約多項式 $ f(X)$で、 その次数が $ n$ のものが存在する。

注意:次の問題は(いつもの例に反して)難易度の順に並んでいない. 解きやすいものをとくこと。 また、これらは本質的に違う問題というわけではないので、今回は 一問のみを選んで解くこと。

問題 7.1   元の数が $ 16$ の体 $ K$ $ {\mathbb{F}}_2[X]/f(X){\mathbb{F}}_2(X)$ の形でつくり、 その $ K$ に対して $ K^\times$ の生成元を一つ求めなさい。

問題 7.2   元の数が $ 27$ の体 $ K$ $ {\mathbb{F}}_3[X]/f(X){\mathbb{F}}_3(X)$ の形でつくり、 その $ K$ に対して $ K^\times$ の生成元を一つ求めなさい。

問題 7.3   元の数が $ 25$ の体 $ K$ $ {\mathbb{F}}_5[X]/f(X){\mathbb{F}}_5(X)$ の形でつくり、 その $ K$ に対して $ K^\times$ の生成元を一つ求めなさい。



2002年6月4日