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代数学II 要約 No.12

今日のテーマ:

\fbox{1変数の方程式のゼータ関数II,平方剰余の相互法則}

前回、次の補題が残ってしまっていた。

補題 12.1 (補題11.6と同じ)   % latex2html id marker 942
$ {\mathbb{F}}_q$ 上の既約な1変数 $ n$ 次多項式 $ f(X)$ が与えられているとする。このとき、
  1. $ f(X)$ % latex2html id marker 950
$ {\mathbb{F}}_{q^r}$ のなかに根をもつのは $ r$$ n$ の倍数のときに限る。
  2. $ r$$ n$ の倍数ならば、 % latex2html id marker 960
$ {\mathbb{F}}_{q^r}$ のなかの $ f(X)$ の根はちょうど $ n$ 個ある。

命題 12.1 (命題11.1と同じ)   % latex2html id marker 967
$ {\mathbb{F}}_q$ 上の既約な1変数多項式 $ n$ 次多項式 $ f(X)$ に対して、 $ V(f)$ の合同ゼータ関数は

$\displaystyle Z(V(f),t)=1/(1-t^n)
$

で与えられる。

一般に、ゼータ関数が $ p$ によってどのように変わるかは複雑である。 例えば $ X^2-5$ は各素数 $ p$ に対して $ {\mathbb{F}}_p$ 上の多項式と見られるが、 それが既約かどうかは $ p$ によって異なる。 どのような $ p$ に対して既約であるかを判定するのに 便利なのが、平方剰余記号とその相互法則である。 相互法則の証明はいろいろ知られているが、この講義の話の応用として 有限体上のガウス和を用いた証明を紹介する。

定義 12.1   奇素数 $ p$ と、$ p$ で割れない整数 $ a$ に対して、 平方剰余記号(Legendre 記号)を

\begin{displaymath}
{\left(\frac{a}{p}\right)}=
\begin{cases}
1 & (X^2-a\text{ ..
...-a\text{ が }{\mathbb{F}}_p\text{ 上既約のとき})\\
\end{cases}\end{displaymath}

により定義する。$ a$$ p$ の倍数の時には、 $ {\left(\frac{a}{p}\right)}=0$ と定義する。

補題 12.2   奇素数 $ p$ に対して、次の式が成り立つ。
  1. $\displaystyle {\left(\frac{a}{p}\right)}= a^{(p-1)/2} \mod p
$

  2. $\displaystyle {\left(\frac{ab}{p}\right)}= {\left(\frac{a}{p}\right)} {\left(\frac{b}{p}\right)}
$

とくに $ {\left(\frac{-1}{p}\right)}=(-1)^{(p-1)/2} $ にも注意しておく。

定義 12.2   $ p,\ell$ は相異なる奇素数であるとし、 $ {\mathbb{F}}_p$ の拡大体の $ 1$ の原始 $ \ell$-乗根 $ \lambda$ を取る。 整数 $ a$ に対して、有限体のガウス和 $ \tau_a$

$\displaystyle \tau_a=\sum_{t=1}^{\ell-1}{\left(\frac{t}{\ell}\right)}\lambda^{at}
$

で定義する。 $ \tau_1$ のことを単に $ \tau$ とかく。

補題 12.3   次の等式が成り立つ。
  1. $ \tau_a={\left(\frac{a}{\ell}\right)}\tau$.
  2. $ \sum_{a=0}^{l-1} \tau_a \tau_{-a}=\ell(\ell-1)$.
  3. $ \tau^2=(-1)^{(\ell-1)/2}\ell$ ($ =\ell^*$ と書く).
  4. $ \tau^{p-1}=(\ell^*)^{(p-1)/2}$.
  5. $ \tau^p=\tau_{p}$.

(なぜ、上の補題のような計算をしたくなるのか、 その一つのヒントはフーリエ級数論にある。)

上の補題を使うと次の定理を証明できる。但し(3)の証明は問題に譲る。

定理 12.2 (平方剰余の相互法則)   奇素数 $ \ell$ に対して次の等式が成り立つ。
  1. $ {\left(\frac{p}{\ell}\right)}={\left(\frac{\ell^*}{p}\right)} $ (但し $ \ell^*=(-1)^{(\ell-1)/2}\ell$)
  2. $ {\left(\frac{-1}{\ell}\right)}=(-1)^{(\ell-1)/2} $
  3. $ {\left(\frac{2}{\ell}\right)}=(-1)^{(\ell^2-1)/8} $

問題 12.1   $ {\mathbb{F}}_{359}$ 上の多項式 $ X^2-113$ は既約かどうか判定しなさい。 ヒントをつけると簡単すぎるのでノーヒント。

問題 12.2   $ p$ は奇素数であるとする。 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の多項式 $ f(X)=X^2-5$ に対して、その定める方程式(系) $ V(f)$ の ゼータ関数 $ Z(V(f),t)$ を求めよ。

問題 12.3   奇素数 $ p$ に対して、

$ X^4+1\in {\mathbb{F}}_p[X]$ の根を $ \zeta$ とするとき、

  1. $ x=\zeta+\zeta^{-1}$ の二乗 $ x^2$ をもとめなさい。
  2. $ p=\pm 1 \mod 8$ のとき、$ x^p-x$ を求めなさい。
  3. $ p=\pm 3 \mod 8$ のとき、$ x^p+x$ を求めなさい。
  4. $ {\left(\frac{2}{p}\right)}=(-1)^{(p^2-1)/8} $ を示しなさい。


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平成14年8月15日