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代数学II 要約 No.13

今日のテーマ:

\fbox{平方剰余の相互法則II}

前回、平方剰余の相互法則の証明が残ってしまっていた。 ガウスの和の定義の復習から書いておこう。

定義 13.1   $ p,\ell$ は相異なる奇素数であるとし、 $ {\mathbb{F}}_p$ の拡大体の $ 1$ の原始 $ \ell$-乗根 $ \lambda$ を取る。 整数 $ a$ に対して、有限体のガウス和 $ \tau_a$

$\displaystyle \tau_a=\sum_{t=1}^{\ell-1}{\left(\frac{t}{\ell}\right)}\lambda^{at}
$

で定義する。 $ \tau_1$ のことを単に $ \tau$ とかく。

ついでにこの定義の意味についてもう少しだけ述べておこう。 まず、上の $ \lambda$ は次のようにしてとることができる。 $ {\mathbb{F}}_{p^{\ell-1}}^\times$ は位数 $ p^{\ell-1}-1$ の巡回群で、 その生成元を $ \xi $ とおく。 フェルマーの小定理により $ p^{\ell-1}-1$$ \ell$ で割り切れるから、 $ \xi^{(p^{\ell-1}-1)/\ell}$ を考えることができる。この元の 位数はちょうど $ \ell$ であるから、これを $ \lambda$ とすればいい。 なお、$ \lambda$ の取り方は一意的ではなく、 1の $ \ell$ 乗根は $ \lambda^a$ $ a=0,1,2,\dots,p-1$$ p$ 個ある。 これらに対応して $ \tau_a$ ができる。下の補題の(1)はそれらが符号の差を除いて 等しいことを述べている。ただし、$ a=0$ のときだけは 特別で、$ \tau_0=0$ がなりたつ。

補題 13.1   次の等式が成り立つ。
  1. $ \tau_a={\left(\frac{a}{\ell}\right)}\tau$.
  2. $ \sum_{a=0}^{\ell-1} \tau_a \tau_{-a}=\ell(\ell-1)$.
  3. $ \tau^2=(-1)^{(\ell-1)/2}\ell$ ($ =\ell^*$ と書く).
  4. $ \tau^{p-1}=(\ell^*)^{(p-1)/2}$.
  5. $ \tau^p=\tau_{p}$.

定理 13.1 (平方剰余の相互法則)   奇素数 $ \ell$ に対して次の等式が成り立つ。
  1. $ {\left(\frac{p}{\ell}\right)}={\left(\frac{\ell^*}{p}\right)} $ (但し $ \ell^*=(-1)^{(\ell-1)/2}\ell$)

問題 13.1   $ p=31$, $ \ell=5$ にたいして、 $ {\mathbb{F}}_p$$ 1$の原始 $ \ell$-乗根を 一つ見つけ、ガウスの和 $ \tau$ を求めて、$ \tau^2$ を実際に計算してみなさい。

問題 13.2   奇素数 $ \ell$ と、体 $ K$ が与えられていて、 $ 1$ の原始 $ \ell$ 乗根 $ \lambda$$ K$ のなかに存在するとする。 (とくに、$ K$ の標数は $ \ell$ ではない。) $ {\mathbb{F}}_\ell$ 上の $ K$-値関数の全体 $ V$ は (各点ごとの加法、スカラー倍により) $ K$ 上のベクトル空間になり、 $ V$ 上に内積が

$\displaystyle \langle f,g \rangle=\sum_{\ell=0}^{\ell-1}f(a)g(-a)
$

で定まる。(証明不要)
  1. $ V$$ K$ 上の次元を求めよ。(答のみでよい。)
  2. (指標の直交性。) $ a=0,1,\dots,\ell-1$ に対して、$ V$ の元 $ \chi_a$ を、

    % latex2html id marker 992
$\displaystyle \chi_a(x)=\lambda^{ax}
$

    で定義するとき、内積 $ \langle \chi_a,\chi_b \rangle$ を求めよ。
  3. $ \{\chi_a\}_{a=0}^{\ell-1}$$ V$ の基底であることを示しなさい。 さらに、$ V$ の元 $ f$

    $\displaystyle f=\sum_{a=0}^{\ell-1} c_a \chi_a
$

    と書くためには、 $ c_a \in K$ をどのように求めればよいか、述べなさい。

問題 13.3   前問と同じ仮定の下で、 フーリエ変換 $ \mathcal F:V\to V$ を、

$\displaystyle \mathcal F[f](a)=\langle f,\chi_a \rangle
$

で定義する。このとき、
  1. $ \langle \mathcal F[f],\chi_a\rangle =\ell f(-a)$ がなりたつこと を示しなさい。
  2. $ \mathcal F[\mathcal F[f]]$ を計算し、 $ \mathcal F$ の逆変換を求めなさい。
  3. 任意の $ f,g\in V$ に対して、 $ \langle \mathcal F[f],g \rangle=\langle f,\mathcal F [g]\rangle$ が 成り立つことを示しなさい。
  4. $ f_L\in V $

    % latex2html id marker 1025
$\displaystyle f_L (a 1_{{\mathbb{F}}_\ell}) ={\left(\frac{a}{\ell}\right)}1_K \qquad (a \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}})
$

    で定義する。$ f_L$ $ \mathcal F$ の固有ベクトルであることを示し、 それが属する固有値を求めなさい。



2002年7月15日