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代数学II 試験略解

問題 14.1   写像 $ {\mathbb{F}}_p \ni x \mapsto x^k-x^2 \in {\mathbb{F}}_p$ が定値写像 $ {\mathbb{F}}_p \ni x \mapsto 0 \in {\mathbb{F}}_p$ と等しくなるための $ k,p$ の条件を 求めなさい。 (わからない場合には $ k,p$ のできるだけ多くの組みに対して二つの写像が 等しいかどうか判定せよ。)

(答え) $ k>0$ で、$ k-2 $$ p-1$ で割り切れればよい。

(証明) 便宜上, 最初の写像を $ f$,次の写像を $ g$ とおく。 $ k=0$ なら $ f=g$ となるのは不可能なので、 $ k>0$ の場合を考える。 このとき、 $ f(0)=g(0)=0$ であるから, $ x\in {\mathbb{F}}_p^\times$ のときの $ f$$ g$ の値が一致するかどうか調べればよい。

いま、 $ k-2=(p-1)m$ なる整数 $ m$ があったとすると、 フェルマの小定理により

$\displaystyle x^k-x^2=(x^{p-1})^m x^2-x^2 =1^m x^2-x^2=0
$

となり、$ f(x)=g(x)$ がすべての $ x\in {\mathbb{F}}_p^\times$ について成り立つことが わかる。

逆に, $ f=g$ と仮定しよう。$ k-2 $$ p-1$ で割った 商を $ m$, あまりを $ r$ とおくと、全ての $ x\in {\mathbb{F}}_p^\times$ にたいして,

$\displaystyle f(x)=x^k-x^2=x^2(x^r-1)
$

であることが上と同様にしてわかる。 $ f(x)=g(x)=0$ で, かつ % latex2html id marker 1151
$ x^2\neq 0$ (で、かつ $ {\mathbb{F}}_p$ は体)だから、$ x^r-1=0$ がすべての $ x\in {\mathbb{F}}_p^\times$ について成り立つことになる。もし % latex2html id marker 1159
$ r\neq 0$ ならば, これは $ p-1$ 個 の元が $ r$ 次方程式の根になることになって、矛盾。ゆえに、 $ r=0$ である。

この問題に限らず、解答は証明(とは言わないまでもなぜその答えで正しいかの 説明)があってはじめて一人前である。

問題 14.2   体 $ K$ の2つの元 $ x,y$ が、 $ x^2+y^2=0$ を満たすとき、$ x=0$ かつ $ y=0$ と いえるだろうか。いえるならば証明をつけ、いえないならば反例を 3つ以上あげなさい。($ K$ の標数が 0 の場合と 0 でない場合の両方について 議論すること.)

(答え)

これは簡単である。標数 0 なら $ K={\mathbb{C}}$

$\displaystyle 1^2+(i)^2=0
$

などが反例となる。

標数が正のものに関しては、標数 $ 2$ $ K={\mathbb{F}}_2$

$\displaystyle 1^2+1^2=0
$

標数 $ 5$ $ K={\mathbb{F}}_5$ で,

$\displaystyle 1^2+2^2=0
$

などを反例にあげればよい。

問題 14.3   $ {\mathbb{F}}_5$ 上の多項式 $ X^2+X-1$ の根を $ \alpha$ とおく時、 $ {\mathbb{F}}_{5}[\alpha]$ の多項式 $ X^6-1$ を一次式の積に分解しなさい。

(答え)

この問題はまちがっておった。二次式のほうは $ X^2+X+2$ にすべきであった。 $ X^2+X-1$ は既約でないからである。

問題のままでは, $ X^6-1$ は一次式の積に分解できない。 ただし(なぜ分解できないかまで含めた)正しい指摘は皆無であった。寂しい限りである。

本当は $ ({\mathbb{F}}_{25})^\times$ の位数が 24 であることを用いる問題だった。

問題 14.4   奇素数 $ p$ が与えられているとするとき、 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の2変数の方程式系 $ V_1=V((X^2-2Y^2-1)(Y-2))$ の合同ゼータ関数 $ Z(V_1/{\mathbb{F}}_p,t)$ を求めよ。

$ V(X^2-2Y^2-1)$$ V(Y-2)$ の共通部分は $ (3,2),(-3,2)$ の二点である。 それ以外は講義で説明した通りである。 念のために述べておくと、 $ W= V(X^2-2Y^2-1)$ とおいて, % latex2html id marker 1235
$ W({\mathbb{F}}_q)$ の元の 数を求める必要があるのだが、

(1) $ 2$ % latex2html id marker 1239
$ {\mathbb{F}}_q$ で平方根を持つときには、 % latex2html id marker 1241
$ W({\mathbb{F}}_q)$ の元の数は % latex2html id marker 1243
$ {\mathbb{F}}_q^\times$ の元の数と同じであって、% latex2html id marker 1245
$ q-1$ である。

(2) $ 2$ % latex2html id marker 1249
$ {\mathbb{F}}_q$ で平方根を持たないときには, % latex2html id marker 1251
$ W({\mathbb{F}}_q)$ の元のうち $ (1,0)$ 以外は

% latex2html id marker 1255
$\displaystyle (\frac{m^2+2}{m^2-2},\frac{2m}{m^2-2}) \qquad (m\in {\mathbb{F}}_q)
$

とパラメータ表示できて、 % latex2html id marker 1257
$ \char93  W({\mathbb{F}}_q)=q+1$ になる.

したがって $ 2$ が modulo $ p$ で平方剰余ならば,

$\displaystyle Z(W/{\mathbb{F}}_p,t)$ $\displaystyle =\exp(\sum_{k=1}^\infty( (p^k-1)/k t^k)$    
  $\displaystyle =\frac{1-t}{1-pt}$    

となり, $ 2$ が modulo $ p$ で平方非剰余ならば $ \char93 (W({\mathbb{F}}_{p^r})=p^r+(-1)^r$ と なって,

$\displaystyle Z(W/{\mathbb{F}}_p,t)$ $\displaystyle =\exp(\sum_{k=1}^\infty( (p^k+(-1)^k)/k t^k)$    
  $\displaystyle =\frac{1}{(1-pt)(1+t)}$    

あとは、一般に,方程式系 $ W,U$ に対して,

$\displaystyle Z(W\cup U)=Z(W)Z(U)/Z(W\cap U)
$

が成り立つ(もちろん上のようなゼータレベルでなく,個数のレベルで同じことを してもよい.)ことをを用いればよい。

答えは

$ p$ が平方剰余のとき(つまり $ p$$ 8$ で割ったあまりが $ 1$ または $ 7$ のとき,

$\displaystyle Z(V_1,t)=\frac{1-t}{1-pt}
\frac{(1-t)^2}{1-pt}=\frac{(1-t)^3}{(1-pt)^2}
$

$ p$ が平方非剰余のとき(つまり $ p$$ 8$ で割ったあまりが $ 3$ または $ 5$ のとき,

$\displaystyle Z(V_1,t)=\frac{1}{(1-pt)(1+t)}
\frac{(1-t)^2}{1-pt}=\frac{(1-t)^2}{(1-pt)^2(1+t)}
$

という具合になる.

問題 14.5   奇素数 $ p$ が与えられているとするとき、 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の3変数の方程式系 $ V_2=V((X^2+Y^2-Z^2)$ の合同ゼータ関数 $ Z(V_2/{\mathbb{F}}_p,t)$ を求めよ。

$ X$ 座標 $ x$ の値によって % latex2html id marker 1316
$ V_2({\mathbb{F}}_{q})$ の元を分類すればよい。 (これは幾何学的には円錐を平面で切ることにあたる). $ x=0$ のときは、 $ V(Y^2-Z^2)$ の解の数だが、これは先刻承知(% latex2html id marker 1322
$ 2q-1$)のはずである。 % latex2html id marker 1324
$ x\neq 0$ のときは、$ Y/x$, $ Z/x$$ Y,Z$ と変数変換することにより, % latex2html id marker 1332
$ \char93 (V(x^2+Y^2-Z^2)({\mathbb{F}}_{q}))=\char93 (V(1+Y^2-Z^2)({\mathbb{F}}_{q}))$ をえる。 この解の数は前問同様 % latex2html id marker 1334
$ q-1$ になる。あとはそれらを足せばよい。

% latex2html id marker 1336
$\displaystyle \char93  V(X^2+Y^2-Z^2)({\mathbb{F}}_{q})= 2q-1 +(q-1)(q-1)=q^2
$

よって

$\displaystyle Z(V_2/{\mathbb{F}}_p,t)=\exp(\sum_{k=1}^\infty \frac{p^{2k}}{k} t^k)=\frac{1}{1-p^2t}
$

となる。

問題 14.6   $ n=123556429$ とするとき、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ での $ 2^n$ の値を 計算せよ。また、$ n$ は素数といえるかどうか、判定しなさい。 計算は全部を載せる必要はないが、どのような方法を採ったかは 明記すること。

(答え)

MuPAD の powermod 関数をつかえば簡単であった。答えは $ 84299180$ である。 したがって、フェルマの小定理の対偶により, $ n$ は素数でないことがわかる。 念のためにいっておくと, $ 2^n=2$ だからと言って、$ n$ が 素数であるとは限らない。

powermod なんぞ知らぬという人のほうが多いであろう。 次の等式を何度も使えばよい。

$\displaystyle a b^{n}=(ab^\epsilon) (b^2)^{[n/2]}
$

ここで $ [\bullet]$ はガウス記号, $ \epsilon=n-2[n/2]$ ($ n$$ 2$ でわったあまり) である。 計算回数は $ \log n$ に比例して、$ n$ 回かけ算するのとは比較にならないぐらい速い。

いずれにせよ、計算機を活用しないと面倒な問題であった。


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2002年7月31日