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代数学特論II 要約 No.13

今日のテーマ:

\fbox{(多項式係数)1変数微分方程式と加群の理論} $ R$ は環であるとする。

定義 13.1   $ R$ 加群 $ M,N$ が与えられているとき、 $ M$ から $ N$ への $ R$-加群準同型の全体を

$\displaystyle \operatorname{Hom}_R(M,N)
$

と書く。

以下、 $ \mathcal F$ で適当な関数空間(例えば、 $ {\mathbb{C}}[[x]]$ をあらわすことにする。 $ \mathcal F$ $ \mathcal D$ の作用について閉じているような.

補題 13.1   微分作用素のなす環 $ \mathcal D ={\mathbb{C}}[x,\partial_x]$ と、その一つの元 $ P=P(x,\partial)$ に対して、 $ M=\mathcal D/\mathcal D P$ は一つの $ D$- 加群である。 関数環 $ \mathcal F$ に対して、

$\displaystyle \operatorname{Hom}_{\mathcal D} (M,\mathcal F)
$

$ \mathcal F$ での $ Pf=0$ なる方程式の解の空間と同一視できる。

補題 13.2   微分作用素のなす環 $ \mathcal D ={\mathbb{C}}[x,\partial_x]$ と、その一つの元 $ P=P(x,\partial)$ に対して、上と同様に $ M=\mathcal D/\mathcal D P$ とおくと、
  1. $\displaystyle 0\to \mathcal D \overset{\bullet P}\to \mathcal D \to M\to 0
$

    なる完全系列が存在する。
  2. 上の完全系列から

    $\displaystyle 0\to
\operatorname{Hom}_{\mathcal D}(M,\mathcal F)
\to
\operatorn...
...thcal D,\mathcal F)
\to
\operatorname{Hom}_{\mathcal D}(\mathcal D,\mathcal F)
$

    なる完全系列が定義され、さらにこの完全系列は

    $\displaystyle 0\to
\operatorname{Hom}_{\mathcal D}(M,\mathcal F)
\to
\mathcal F
\overset{P.}{\to}
\mathcal F
$

    と同一視できる。

うえの $ \mathcal F
\overset{P.}{\to}
\mathcal F$ は全射ではない。実は、 $ \mathcal F/ P. \mathcal F$ はホモロジー代数で言うところの $ \operatorname{Ext}^1_{\mathcal D}(M,\mathcal F)$ に一致する。 ここのところの議論には問題を一変数に限定したことが効いている。 多変数だとどうなるのかや、詳細については 本講義の参考書に挙げた「加群十話」に譲ろう。

とりあえず今は次のことにだけ注意しておこう。

命題 13.1   微分作用素のなす環 $ \mathcal D ={\mathbb{C}}[x,\partial_x]$ と、その一つの元 $ P=P(x,\partial)$ に対して、 $ M=\mathcal D/\mathcal D P$ とおく。 関数環 $ \mathcal F$ に対して、

$\displaystyle \operatorname{Ext}^1(M,\mathcal F)=\mathcal F /\{P u; u \in \mathcal F\}
$

がなりたつ。

定義 13.2   $ P$ $ \mathcal F$ 上のインデックスを

$\displaystyle \operatorname{ind}P=\dim(\operatorname{Hom}_\mathcal D(M,\mathcal F)-
\dim(\operatorname{Ext}^1_{\mathcal D}(M,\mathcal F))
$

で定義する。(但し二つの次元がともに有限次元のとき。)

問題 13.1   $ \partial-1 $ $ {\mathbb{C}}[[x]]$ 上のインデックスを求めよ。



平成16年2月19日