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代数学特論II 要約 No.14

今日のテーマ:

\fbox{微分作用素のインデックスの計算}

関数環の定義の追加と復習。

定義 14.1   $ {\mathbb{C}}[x]$ $ {\mathbb{C}}$$ x$ を追加してできる環、すなわち $ x$ についての $ {\mathbb{C}}$ 係数の多項式全体のなす環、 $ {\mathbb{C}}[[x]]$$ x$ の形式的べき級数のなす環であった。 $ {\mathbb{C}}[[x]]$ の部分環 $ {\mathbb{C}}\convergent{x}$ を、

$\displaystyle {\mathbb{C}}\convergent{x}=\{f=\sum_{i=0}^\infty a_i x^i\in {\mathbb{C}}[[x]];$   $f$ の収束半径は正 $\displaystyle \}
$

で定義し、 $ {\mathbb{C}}$ 上の収束べき級数環と呼ぶ。。

インデックスの記号は、関数環 $ \mathcal F$ を明示して次のように書いておく のがよい。

定義 14.2 (定義13.2再掲)   $ P\in \mathcal D$ とする。 $ M=\mathcal D/\mathcal D P$ とおいて、 $ P$ $ \mathcal F$ 上のインデックスを

$\displaystyle \operatorname{ind}(P;\mathcal F)
=\dim(\operatorname{Hom}_\mathcal D(M,\mathcal F))-
\dim(\operatorname{Ext}^1_{\mathcal D}(M,\mathcal F))
$

で定義する。(但し二つの次元がともに有限次元のとき。)

本講義の参考書「加群十話」にはマルグランジュの定理(161ページの定理10.1)が 書いてある。

定理 14.1 (マルグランジュ)   $ P\in \mathcal D={\mathbb{C}}[x,\partial_x]$ $ P=\sum_{i=0}^m a_i(t)\partial_x^i $ と書いたとき、
  1. $ \operatorname{ind}(P,{\mathbb{C}}\convergent{x})=m-v(a_m)$
  2. % latex2html id marker 838
$ \operatorname{ind}(P,{\mathbb{C}}[[x]])=\underset {0\leq i \leq m}{\max}(i-v(a_i))$
(但し、 $ v(\bullet)$$ \bullet$ の零点の位数をあらわす。)

この講義ではこの定理の証明は述べないが、 次の例についてインデックスがどうなっているか、 述べたい。

例 14.1   $ P=x^2 \partial -1$ にたいして、
  1. $ \operatorname{ind}(P,{\mathbb{C}}\convergent{x})=-1$
  2. $ \operatorname{ind}(P,{\mathbb{C}}[[x]])=0$
実際、この例については

% latex2html id marker 851
$\displaystyle \dim(\operatorname{Hom}_\mathcal D(M,{...
...vergent{x}))=0,\quad
\dim(\operatorname{Hom}_\mathcal D(M,{\mathbb{C}}[[x]])=0
$

$\displaystyle \dim(\operatorname{Ext}^1_{\mathcal D}(M,{\mathbb{C}}[[x]]))=0
$

はすぐにわかる。

% latex2html id marker 855
$\displaystyle \dim(\operatorname{Ext}^1_{\mathcal D}(M,{\mathbb{C}}\convergent{x}))\neq 0
$

がポイントで、これは微分方程式の形式的な解が必ずしも収束しないことと 対応している。



平成16年2月19日