next up previous
: この文書について...

代数学II要約 No.9

今日のテーマ:

\fbox{
群環の中心を用いて表現を分解する。
}

今回も表現は $ {\mathbb{C}}$ 上のものを考えることにする。

次の命題は、群の表現が中心元の固有空間を考えることによって 分解されることを示している。

命題 9.1   $ G$-加群 $ V$ が与えられているとし、 $ r\in {\mathbb{C}}[G]$$ V$ 上の表現行列を $ \pi_V(r)$ と書くことにする。 $ z\in Z({\mathbb{C}}[G])$ にたいして、 $ \pi_V(z)$ の固有値の一つ $ \lambda$ をとると、 $ \pi_V(z)-\lambda 1_V$ の核 $ W$$ V$$ G$-部分加群になる。 とくに、$ V$ が既約な $ G$-加群のときには、$ \pi_V(z)$ は必ずスカラー行列 になる。

  $ \mathfrak{S}_3$ の群環 $ {\mathbb{C}}[\mathfrak{S}_3]$ の中心 $ Z({\mathbb{C}}[\mathfrak{S}_3])$ $ 1, S(1\ 2), S(1\ 2\ 3)$ の 線型結合の全体と一致する。その環構造を調べてみよう。

$\displaystyle S(1\ 2)^2=3(1+S(1\ 2\ 3))
$

$\displaystyle S(1\ 2)S(1\ 2\ 3)=2S(1\ 2)
$

$ z=S(1\ 2)$ とおくと、

$\displaystyle z^3-9z=0
$

したがって、 $ \mathfrak{S}_3$ の表現は、$ z=0$, $ z=3$, $ z=-3$ のそれぞれの部分に 分解できる。

$ \mathfrak{S}_3$ の置換表現は次のように分解される。

$\displaystyle {\mathbb{C}}^3={\mathbb{C}}
\begin{pmatrix}
1 \\
1 \\
1
\end{pm...
...}\oplus
\left\{
\begin{pmatrix}
x \\
y \\
z
\end{pmatrix};
x+y+z=0
\right \}
$

同様に、 $ \mathfrak{S}_3$ の正則表現も3つの表現(1次元が2つと4次元が1つ)の 直和に分解される。 1次元の表現は、

% latex2html id marker 820
$\displaystyle \frac{1}{3}(z(z+3))=1+S(1\ 2) +S(1\ 2\ 3) \quad (=\sum_{g \in \mathfrak{S}_3} g)
$

で生成されるものと、

$\displaystyle z^2-9=3(S(1\ 2\ 3)-2)
$

で生成されるものである。 4次元のものは実はまだ既約ではない。

問題 9.1   $ {\mathbb{C}}[\mathfrak{S}_4]$ の元 $ z=S(1\ 2)$ にたいして、$ z^2$ $ 1, S(1\ 2), S(1\ 2\ 3)$, $ S((1\ 2)(3\ 4))$, $ S(1\ 2\ 3\ 4)$ の線型結合で 書き表せ。

問題 9.2   4個の元 $ \{1,2,3,4\}$ の偶置換の全体のなす群(4次交代群) $ \mathfrak{A}_4$ に ついて、その群環の中心 $ Z({\mathbb{C}}[\mathfrak{A}_4])$ の構造を 調べよ。



2003/6/25