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代数学II要約 No.12

今日のテーマ: \fbox{
対称群の表現とヤング図形
}

今回は、気分を変えて、対称群の既約表現を実際に与える方法について(証明は抜きで)述べよう。

ヤング図形とは、正方形の箱を、縦横に次のような恰好で 並べたものである。

% latex2html id marker 760
$\displaystyle \yng(2,1),\quad \yng (3,2,2),\quad \yng (6,3,1),$    等々

つまり、横に並んだ正方形の数が単調非増加になるようにならべるわけだ。

正方形の数が$ n$ 個のヤング図形のことを、$ n$ 次のヤング図形という。 実は $ n$ 次の対称群 $ \mathfrak{S}_n$ の既約表現は、 $ n$-次のヤング図形の分だけあって、 実際にそこから構成できることが知られている。 つまり、 $ \mathfrak{S}_3$ の既約表現は

% latex2html id marker 774
$\displaystyle \yng(1,1,1), \quad \yng(2,1),\quad \yng(3)
$

に対応する3つがあり、 $ \mathfrak{S}_4$ の既約表現は

% latex2html id marker 778
$\displaystyle \yng(1,1,1,1), \quad \yng(2,1,1),\quad \yng(2,2), \quad \yng(3,1),\quad \yng(4)
$

の4つがあると言うことになる。

$ n$ 次のヤング図形 $ \lambda$ をひとつとって そのおのおのの正方形に $ 1$ から $ n$ までの数字を だぶらないように書き入れたものを($ \lambda$ を台とする)ヤングの盤という。 ヤングの盤には、次のような調子で多項式を対応させることができる。

$\displaystyle \Delta (\young(123,45,6))=\Delta_{146}\Delta_{25}\Delta_{3}
$

ただし、右辺に出てくるのは「差積」であって、

  $\displaystyle \Delta_{ijk}=(X_i-X_j)(X_i-X_k)(X_j-X_k),$    
  $\displaystyle \Delta_{ij}=(X_i-X_j),$    
  $\displaystyle \Delta_{i}=1$    

などという具合にあたえられる。

$ \mathfrak{S}_n$ の元は $ n$-変数の多項式の全体に文字の置き換えで作用する。 $ \Delta_T$ の形の多項式に $ \mathfrak{S}_n$ の元を作用すると、 $ T$ と同じ台を もって文字をつけ替えたような別のヤングの盤 $ T'$ があって、

$\displaystyle \sigma(\Delta_T)=\Delta_{T'}
$

となることはすぐに確かめられるから、一つのヤング図形 $ \lambda$ を固定する毎に、 そのような $ \lambda$ を台に持つような盤全体に関する線型結合

% latex2html id marker 813
$\displaystyle \sum_{\text{$T$ の 台は $\lambda$}} a_T \Delta_T \qquad (a_T\in {\mathbb{C}})
$

の全体は $ \mathfrak{S}_n$ の表現になる。これを(本講義の参考書にあわせて) $ \pi_\lambda$ (表現空間の方は $ V_\lambda$) と書くことにしよう。

実は、$ \Delta_T$ どうしは独立ではなく、関係式が幾つかあることに 注意せねばならない。 $ \mathfrak{S}_2$ の既約表現は次の空間で与えられる。

% latex2html id marker 825
$\displaystyle V_{\yng(1,1)}={\mathbb{C}}(X_1-X_2),\qquad V_{\yng(2)}={\mathbb{C}}
$

同様に、 $ \mathfrak{S}_3$ の既約表現は次の空間で与えられる。

% latex2html id marker 829
$\displaystyle V_{\yng(1,1,1)}={\mathbb{C}}((X_1-X_2)(X_1-X_3)(X_2-X_3))
,\qquad V_{\yng(3)}={\mathbb{C}}
$

$\displaystyle V_{\yng(2,1)}={\mathbb{C}}(X_1-X_2)+{\mathbb{C}}(X_1-X_3)
$

( $ X_2-X_3=-(X_1-X_2)+(X_1-X_3)$に注意)

問題 12.1   3次のヤング図形 $ \lambda$(3つある)のそれぞれについて、 $ {\mathbb{C}}[\mathfrak{S}_3]$ の元 $ z=S(1 2)(=(1 2)+(1 3)+(2 3))$ $ (\pi_\lambda, V_\lambda)$ 上の作用は定数倍で与えられる。 それらの値を決定しなさい。(結果をNo.9で述べたことと比べよ。)

問題 12.2   $ 4$ 次のヤング図形 $ \lambda$ (5つある)のそれぞれについて、 $ {\mathbb{C}}[\mathfrak{S}_4]$ の元 $ z=S(1 2)$ $ (\pi_\lambda, V_\lambda)$ 上 どのような作用を行うか記述しなさい。



平成15年7月23日