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代数学II 要約 No.10

今日のテーマ

\fbox{シローの定理(2)}

定理 10.1 (シローの定理 )   $ G$ の位数が $ p^a m$ ($ p$ は素数、$ m$$ p$ とは互いに素)であるとき、
  1. 位数 $ p^a$$ G$ の部分群が存在する。 (これを $ G$$ p$-シロー群と呼ぶ)
  2. $ G$$ p$ シロー群の個数を $ n$ とすると、$ n-1$$ p$ で割り切れる。
  3. $ G$$ p$-シロー群の一つを $ P$ とする。 $ G$ の部分群 $ P_1$ の 位数が、 $ p^a$ の約数である(すなわち、$ P_1$ はそれ自体 $ p$-群である とすると、

    $\displaystyle x P_1 x^{-1} \subset P
$

    なる $ x\in G$ が存在する。
  4. $ G$$ p$-シロー群はどれも互いに共役である。

前回は、この定理の(1)の部分を証明したが、少し分かりにくかったかも知れぬ。

まず、定理の主張から説明しておこう。 $ G$ の位数 $ n$$ p$ で割れるだけ割って、$ a$ 回で割れなくなったとする。 例えば、 $ n=12$$ p=2$ なら、$ n$$ p$$ 2$ 回割れて、$ p^a=4$ という具合である。このとき、$ G$ の部分群で、 位数 $ p^a$ のものが存在するということである。

例 10.1  

そのようなシロー群は、どのように見つければよいのか、これが前回の証明であって、

  1. もし $ G$ の部分群 $ G'$ で、$ G$ より真に小さく、なおかつ $ \vert G'\vert$$ p^a$ の倍数であるようなものを見つけることができれば、話の対象を $ G$ から $ G'$ に 移すことができる。($ G'$ の部分群は $ G$ の部分群でもあるからである。)
  2. $ G$ の部分群 $ G'$ の例としては、$ G$ のいろいろな元 $ g$ に対する 中心化群 $ H_g$ を 考えることができる。$ g$ をいろいろとることで、 かなりの確率でそのような $ G'$ を見つけることができるだろう。
  3. もし不幸にもそのようなものが一つもなかったとするしよう。このときは 類等式を利用して、$ G$ の中心 $ Z(G)$$ p$ の倍数で なければならないことが分かる。ところが $ G$ の中心が大きければ、 $ Z(G)$ の部分群 $ Z$ を適当にとって それで剰余群を作ることにより $ G/Z$$ Z$ の二つに話を分けて やはり話を位数が $ \vert G\vert$ より小さな群に帰着させることができるのである。

最後の部分は、具体的には次のような補題を証明すればよい。

補題 10.1  
  1. 可換群 $ Z$ の位数が素数 $ p$ で割れるならば、 $ Z$ の元 $ z$ で、 位数がちょうど $ p$ のものが存在する。
  2. $ G$ の中心 $ Z(G)$ の部分群 $ A$は、必ず $ G$ の正規部分群である。

問題 10.1   $ \mathfrak{S}_4$ の 2-シロー群、 3-シロー群の個数はそれぞれいくらか。

問題 10.2   $ \mathfrak{S}_5$ の 2-シロー群、 3-シロー群、5-シロー群の個数はそれぞれいくらか。



平成16年6月21日