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代数学II 要約 No.11

今日のテーマ

\fbox{シローの定理の応用}

シローの定理をもちいると、例えば次の結果を証明できる。

命題 11.1   % latex2html id marker 750
$ p,q$ は素数で、% latex2html id marker 752
$ p<q$ であるとする。このとき、 位数が % latex2html id marker 754
$ p q$ の群 $ G$ について、次のことが言える。
  1. $ G$ には位数 $ p$ の部分群 $ H$ と、位数 % latex2html id marker 764
$ q$ の部分群 $ K$ が存在する。
  2. $ K$$ G$ の正規部分群である。
  3. $ G\cong H \ltimes K$ である。

シローの定理とは違うが、次のことにも注意しておこう。

補題 11.1   有限群 $ G$ の部分群 $ H$ が与えられたとき、

$\displaystyle N_G(H)=\{x \in G; x H x^{-1} =H\}
$

は、$ G$ の部分群であり、 $ N_G(H)\subset H$ である。 $ G$ の部分群で $ H$ と共役なものの個数 $ k$ は、 $ [G:N_G(H)]$ にひとしい。 とくに、 $ k$$ [G:H]$ の約数である。

系 11.1   有限群 $ G$ の位数が $ p^a m$ ($ m$$ p$ で割り切れない)であるとする。 このとき、 $ G$$ p$-シロー群の個数 $ k$$ m$ の約数である。

シローの定理により $ k-1$$ p$ の倍数であることに注目すると、 上のこととあわせて $ p$-シロー群の数について強い制限がつくことが分かる。

次の二つの補題も位数が低い群を調べる際には有効である。

補題 11.2   群 $ G$ の素数位数の部分群 $ P_1,P_2$ があるとき、$ P_1=P_2$ または $ P_1\cap P_2=\{e\}$ のどちらかが成り立つ。

補題 11.3   有限群 $ G$ の位数 $ n$ が素数 $ p$ でただ一度だけ割れるとする。 すなわち、し、$ n=p m$ で、$ m$$ p$ で割れないとする。 $ G$$ p$-シロー群の個数を $ k$ 個とすると、 $ G$ の元で、位数が $ p$ のものはちょうど $ (p-1)k$ 個である。

問題 11.1   位数 $ 2^2 \times 5$ の群 $ G$ には必ず自明でない正規部分群 $ N$ が 存在することを示しなさい。

問題 11.2   位数 $ 2^2 \times 3$ の群 $ G$$ 3$-シロー群か $ 2$-シロー群のいずれかは正規部分群である ことを示しなさい。 (どちらの場合も起こり得る。)



平成16年6月25日