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代数学III 要約 No.7

今日のテーマ

\fbox{対称式}

定義 7.1   体 $ K$ の有限次代数拡大体とは、$ K$ の拡大体で、 拡大次数が有限のものをいう。

前回の講義で、次の二つのことを用いた。

定理 7.1   体 $ K$ 上の一変数多項式 $ f(X)\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]$ が与えられたとき、$ K$ 上の 有限次代数拡大体 $ L$ で、$ f$$ L$ 上一次式の積に分解するようなものが存在する。

命題 7.2   体 $ K$ は有理数体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を含むとする。 このとき、$ K$ 上代数的な元 $ \alpha$$ K$ 上の最小多項式は重根を持たない。

命題 7.2 の証明は一応すんでいる。今回は、定理7.1の証明をすませたあと、 つぎの定理を証明する。

定理 7.3   任意の対称式は基本対称式であらわせる。 もっと詳しく言うと、
  1. $ X_1,X_2,\dots,X_n$ の多項式で、対称式になっているものは 基本対称式の多項式として書き表すことができる。
  2. $ X_1,X_2,\dots,X_n$ の有理式で、対称式になっているものは 基本対称式の有理式として書き表すことができる。

上の定理から次の系が直ちに従う。

系 7.1   $ K$ 上の一変数 $ n$ 次多項式 $ f$ の根を $ \alpha_1,\dots,\alpha_n$ とする。 $ \alpha_1,\dots,\alpha_n$ の対称式で書けるような元は全て $ K$ の元である。

定理の証明には、次の記号を用いるのが便利である。(ただし、一般に 通用する記号というわけではない。)

記号

単項式 $ X_1^{i_1} X_2^{i_2} \dots X_n^{i_n}$ のうち、変数の入れ換えに よって生じるものを全て集めて足したものを、ここでは、 $ S_{X_1^{i_1} X_2^{i_2} \dots X_n^{i_n}}$ とかく。 たとえば、3変数なら、

% latex2html id marker 766
$\displaystyle S_{X^2YZ}=X^2YZ+XY^2Z+XYZ^2,\quad S_{X^2Y}=X^2Y+XY^2+Y^2Z+Y Z^2+X Z^2+Z^2 X
$

等等である。(ただし、 $ X_1,X_2,X_3$ と書くと煩わしいので $ X,Y,Z$ と書いた。)

この記号を使えば、 $ X_1,X_2,\dots,X_n$ の基本対称式は、

% latex2html id marker 774
$\displaystyle s_1=S_{X_1}, \quad
s_2=S_{X_1 X_2}, \quad
s_3=S_{X_1 X_2 X_3}, \quad \dots \quad
,s_n=S_{X_1 X_2 X_3\dots X_n}
$

と書き表すことができる。

問題 7.1   三変数 ($ n=3$) のとき、 $ S_{X^3Y^2 Z}$ を 基本対称式の多項式で表しなさい。



平成16年5月31日