next up previous
Next: About this document ...

1=5

代数学 C No.5要約

\fbox{今日のテーマ} 《同値関係》

$ \bullet$ 《同値関係》と《クラス分け》とは一つの現象を裏と表とから眺めたものである。

●定理3.3の証明の完結

定理3.3(再録)

  1. 等式 $ a^n=e,b^2=e,bab^{-1}=a^{-1}$ が成り立つ。
  2. $ a^k b a^l= a^{k-l}b $ が全ての整数 $ k,l$ について成り立つ。
  3. $ \mathbb{D}_n$ の元は

    $\displaystyle e,a,a^2,a^3,\dots,a^{n-1},
b,ab,a^2b,a^3b,\dots,a^{n-1}b
$

    $ 2n$ 個ある。特に、 $ \mathbb{D}_n$ の位数は $ 2n$ である。

注意: 次の例に垣間見られるように、一般に群の元が与えられた時にそれが生成する 部分群がどのようなものかを決定するのは上の例ほど単純ではない。

(例★)      $ G=\mathfrak{S}_4$ とし、 $ \sigma=(1 2),\tau=(1 3)(2 4)$ とおく。 このとき, $ \sigma\tau\sigma (=(2 3)(1 4))$ $ \sigma^k \tau^l$ $ \tau^l\sigma^k$ $ (k,l\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}})$ の形では表すことができない。

●定理2.5の証明

定理2.5(再録)      $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の部分群は必ず

% latex2html id marker 1064
$\displaystyle n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\quad (=\text{$n$ の倍数の集合}) \qquad (n=0,1,2,3,\dots)
$

のどれかである。(もちろん、 $ n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の部分群になっている。)

定義 5.1 (同値関係の定義)   集合 $ X$ が与えられているとする。 $ X$ に次のような条件を満たす「二項関係」 「$ \sim$ 」 が定まっているとき、「$ \sim$ 」 のことを同値関係と言う。

  1. 任意の $ a,b\in X$ に対して、$ a\sim b$ か、そうでないかがはっきりと決まっている。
  2. $ a,b,c\in X$ が、 $ a \sim b , b\sim c$ を満たせば、 $ a \sim c$ も成り立っている。
  3. 任意の $ a\in X$ に対して、$ a\sim a$ が成り立っている。
  4. $ a,b\in X$ が、$ a\sim b$ を満たせば、$ b\sim a$ も成り立っている。

例 5.1   つぎの例はそれぞれ $ X$ 上の同値関係である。

  1. $ X=\{$平面上の三角形$ \}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a$$ b$ とは合同
  2. $ X=\{$平面上の三角形$ \}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a$$ b$ とは相似
  3. $ X=\{$日本人$ \}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a$$ b$ とは名前が同じ。
  4. $ X=\{$高知大生$ \}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a$$ b$ とは所属する学科が同じ。
  5. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a-b \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ .

例 5.2   次の例は $ X$ 上の同値関係ではない。
  1. $ X=\{$日本人$ \}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a$$ b$ とは友達である。
  2. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ % latex2html id marker 1174
$ a\leq b$ .

集合に同値関係を入れるということは、集合のクラス分けをする事と同じことになる。クラス分けの正確な定義は、次のようになる。

定義 5.2   集合 $ X$ が与えられているとする。 $ X$ のクラス分けが与えられている、というのは、 次のような条件を満たす $ X$ の部分集合の族 $ \{X_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ が与えられているときに言う。
  1. $ \{X_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$互いに交わらない。 すなわち、 $ \lambda_1,\lambda_2$ が異なる $ \Lambda$ の元ならば、

    $\displaystyle X_{\lambda_1} \cap X_{\lambda_2}=\emptyset
$

    がなりたつ。
  2. $ \{X_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ $ X$ 全体を覆いつくす。すなわち、

    $\displaystyle \bigcup_{\lambda\in \Lambda} X_{\lambda}=X
$

    がなりたつ。(各 $ X_\lambda$ のことを「クラス」とか「類」とか呼ぶ。

定理 5.1   集合 $ X$ が与えられているとする。このとき、
  1. $ X$ 上に同値関係 $ \sim$ が与えられると、 $ X$ のクラス分けが、次のようにして定まる。

    $\displaystyle a \sim b  {\Leftrightarrow} $   $ a$$ b$ とは同じクラスに属する$\displaystyle .$ (※)

    $ a$ と同値なものの全体からなる $ X$ の部分集合を $ C(a)$ と書くと、$ X$ のクラス分けは、 $ \{C(a)\}_{a\in X}$ から同じものを省いたものである。

  2. 逆に、$ X$ 上のクラス分けが与えられているとき、$ ($$ )$ によって $ X$ 上に同値関係が定まる。

定義 5.3   集合 $ X$ 上の同値関係 $ \sim$ が与えられているとする。$ X$ のクラスの一つ一つをそれぞれ一つの元とみた集合を、$ X$$ \sim$ による商集合と言い、$ X/\sim$ で表す。

例 5.3  
  1. 正の整数 $ n$ を一つ固定し、 $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a-b \in n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ と定める。 この場合、$ X/\sim$ は前回解説した ``拡張した番号をつけられた頂点の集合" と同一視される。

  2. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b  {\Leftrightarrow} $ $ a-b \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ . この場合、$ X/\sim$ は円周と同一視される。

レポート問題

(I) 日常生活に現れる簡単な集合 $ X$ とその上の同値関係 $ \sim$ の例をあげ、その例において $ X/\sim$ がどのようなものであるか 述べよ。 (条件の設定の仕方によっては同値関係と呼べるかどうか 怪しいものもある。そのようなものについては、どこが弱点か、 どのようにすれば改善するかも述べること。)

(II) (例★)の証明をつけよ。

(III) (例★)において、 $ \sigma,\tau$ で生成される $ G$ の部分群を求めよ。


next up previous
Next: About this document ...
2006-05-15