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代数学III 要約 No.8

今日のテーマ

\fbox{3次・4次の方程式の解法}

$\displaystyle X^3-a X^2+b X- c=0
$

を解こう。この方程式の根を $ x_1,x_2,x_3$ とする。 根が何であるか、具体的に知らないわけだが、その存在は既に知っている。 $ x_1,x_2,x_3$ の持つ性質から逆算して、その解き方を見ようというわけだ。

根と解の違いは何だろうか。解は方程式に代入してみたときの 答えである。 根は、もっと根本的なもので、

$\displaystyle X^3-a X^2+b X -c =(X- x_1)(X- x_2)(X-x_3)$ (★)

と一次式の積に因数分解したときに現れるものをさす。 (したがって、当然、根がだぶる(重根)こともある。 「根」というときには厳密には多項式 $ X^3-a X^2 +b X -c$ の根というのが正しい。)

上の式(★)を展開することにより、いわゆる根と係数の関係

% latex2html id marker 730
$\displaystyle x_1+x_2+x_3=a ,\quad x_1 x_2 +x_2 x_3 +x_3 x_1=b,\quad x_1 x_2 x_3=c
$

が得られる。$ a,b,c$ は知っている数だから、 $ x_1,x_2,x_3$ の 基本対称式の値を知っているということになる。前回に述べたことにより、 $ x_1,x_2,x_3$ の対称式の値もこれらから( $ x_1,x_2,x_3$ の値を個別に知らなくても) 計算できる。

したがって、如何にして便利な対称式を作るか、が大事になる。ラグランジュの分解式

% latex2html id marker 740
$\displaystyle r_1=x_1 +\omega x_2 +\omega^2 x_3,\quad
r_2=x_1 +\omega^2 x_2 +\omega x_3
$

を考えてみよう。(ただし % latex2html id marker 742
$ \omega=(-1+\sqrt{-3})/2$ .) これら自体は $ x_1,x_2,x_3$ の対称式ではないが、

補題 8.1   $ t_1=r_1^3+r_2^3$ $ t_2=r_1^3 r_2^3$ はともに $ x_1,x_2,x_3$ の 対称式である。

対称式に関する一般論により $ t_1,t_2$ はもとの係数 $ a,b,c$ の多項式であることが わかる。(実際に計算してみると $ r_1 r_2$ も対称式であることがわかる。) 具体的には

\begin{equation*}
% latex2html id marker 763
\begin{alignedat}{1} &t_1=2 S_{x_1^...
...r_2=S_{x_1^2}-S_{x_1 x_2},\qquad t_2=(r_1 r_2)^3. \end{alignedat}\end{equation*}

したがって、 $ r_1^3,r_2^3$ を二次方程式

$\displaystyle X^2-t_1 X +t_2=0
$

の2根として計算することができ、 それらの3乗根として $ r_1,r_2$ もまた計算できる。そこから $ x_1,x_2,x_3$ を 出すのは実は一次方程式を解けばよいので簡単である。

4次方程式の場合を考えよう。(前ページと記号が一部重複するが混乱しないこと) 根を $ x_1,x_2,x_3,x_4$ とおくと、

$\displaystyle X^4-a X^3+b X^2 -c X +d =
(X- x_1)(X- x_2)(X-x_3)(X-x_4).
$

ここから根と係数の関係が得られ、やはり $ x_1,x_2,x_3,x_4$ の 対称式は $ a,b,c,d$ から( $ x_1,x_2,x_3,x_4$ の値を知らなくても) 計算できる。

ラグランジュの分解式として、

% latex2html id marker 783
$\displaystyle r_1=x_1 - x_2 +x_3-x_4, \quad
r_2=x_1 - x_2 -x_3+x_4, \quad
r_3=x_1 + x_2 -x_3-x_4
$

をとる。 $ r_1^2, r_2^2, r_3^2$ の基本対称式

% latex2html id marker 787
$\displaystyle u_1= r_1^2 +r_2^2+r_3^2, \quad
u_2=r_1^2 r_2^2 +r_2^2 r_3^2 +r_3^2 r_1^2 , \quad
u_3=r_1^2 r_2^2 r_3^2
$

はそれぞれ $ x_1,x_2,x_3,x_4$ の対称式になっていることが分かり、したがって $ a,b,c,d$ から計算できる。 すなわち、 $ r_1^2, r_2^2, r_3^2$

$\displaystyle X^3 -u_1 X^2 + u_2 X - u_3
$

の三根であるから、前段のように巾根を用いて $ a,b,c,d$ から計算できる。 あとはその平方根を計算すれば、 $ r_1,r_2,r_3$ が計算されて、 一次方程式の根として $ x_1,x_2,x_3,x_4$ が計算されるという仕組である。

問題 8.1   3次方程式の解法で、途中の (*)式を証明しなさい。

問題 8.2   3次方程式の解法で、途中の $ t_1,t_2$$ a,b,c$ で表しなさい。

問題 8.3   四次方程式の解法で、 $ u_1$ , $ u_2$ , $ u_3$$ a,b,c,d$ の多項式として実際に書き下しなさい。 (特に難問というほどではないが、計算はかなり面倒である。 可能ならば数式処理ソフトなどを活用するとよい。)


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2006-11-28