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代数学III 要約 No.11

今日のテーマ

\fbox{群の不変体}

定義 11.1   $ L$$ K$ のガロア拡大のとき、 $ G=\operatorname{Gal}(L/K)$ の部分群 $ H$ に対して、

% latex2html id marker 745
$\displaystyle L^H=\{x\in L; \sigma(x)=x \qquad \forall x \in H\}
$

とおく。 これは $ L$$ K$ の中間体である。

つぎのことはすぐにわかる。

補題 11.1   上の定義の仮定のもとで、$ L$$ L^H$ のガロア拡大である。 さらに、$ H$ は自然に $ \operatorname{Gal}(L/L^H)$ の部分群とみなせる。

今日示したい重要な事実は、$ H$ が実は $ \operatorname{Gal}(L/L^H)$ と一致することである。 (下の定理 11.1.) そのためにつぎの補題を用いる。証明には「$ H$ による対称化(平均化)」の テクニックを用いる。

補題 11.2   $ L$$ K$ のガロア拡大であるとする。 任意の $ a \in L$ $ G=\operatorname{Gal}(L/K)$ の部分群 $ H$ に対して、 $ L^H$ -係数のモニックな多項式 $ f(X)$ で、次の性質を満たすものが存在する。
  1. $ \deg(f)=\vert H\vert$
  2. $ f(a)=0$

系 11.1   上の補題の仮定のもとで、 % latex2html id marker 798
$ [L:L^H]\leq \vert H\vert$ .

この系から直ちに、求めたかったつぎのことがわかる。

定理 11.1 (部分群から部分体へ)   $ L$$ K$ のガロア拡大のとき、 $ G=\operatorname{Gal}(L/K)$ の部分群 $ H$ に対して、 $ L$$ L^H$ のガロア拡大であって、 $ \operatorname{Gal}(L/L^H)= H$

問題 11.1   $ L=$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 826
$ (\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5})$ とおく。 $ G=\operatorname{Gal}(L/$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ )$ の部分群 $ H$ で、 位数が $ 2$ あるいは $ 4$ であるものを一つ見つけ、その $ H$ に対して $ L^H$ を決定せよ。



2006-12-14