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日本語技法 No.3

and, or, not と 「ならば」

数学では、 幾つかの、真なる命題(公理)から出発して、 一定の推論規則を使って他の命題(補題や定理)を 導き出す。

(推論規則は、大変易しいが、ときとして日常での推論とは ずれることがある。これは主として、日常生活ではよく行なわれる 「含意」とか「行間を読む」といったものを数学では極力排していることによる。 すなわち、正しい証明を読めば(間違わない限りは、) 誰でも同じ結論にたどり着けるようにしてある。)

既存の命題から、新しい命題を生み出すための基本的な道具が、 「and, or, not」である。その説明のために、まず つぎの定義をしておく。

定義 3.1 (真理値)   命題の真理値を、つぎのように定める。
  1. 命題 $ P$ が正しい(真である)とき、その真理値は $ 1$ であると定める。
  2. 命題 $ P$ が正しくない(偽である)とき、その真理値は 0 であると定める。

定義 3.2   命題 $ P$ が与えられていて、$ P$ の真理値は $ p$ であるとする。このとき、 「not $ P$ 」 なる命題をあらたにつくっても構わない。 この命題の真理値は、$ 1-p$ である。

定義 3.3   命題 $ P,Q$ が与えられていて、$ P$ の真理値は $ p$ , $ Q$ の真理値は % latex2html id marker 785
$ q$ であるとする。このとき、
  1. $ P$ and $ Q$ 」 なる命題をあらたにつくっても構わない。 この命題の真理値は、% latex2html id marker 791
$ p q$ である。
  2. $ P$ or $ Q$ 」 なる命題をあらたにつくっても構わない。 この命題の真理値は、 % latex2html id marker 797
$ \max(p, q)$ である。

定義 3.4   命題 $ P,Q$ が与えられていて、$ P$ の真理値は $ p$ , $ Q$ の真理値は % latex2html id marker 812
$ q$ であるとする。このとき、 「$ P$ $ \implies$ $ Q$ 」 (「$ P$ ならば $ Q$ 」と読む。) なる命題をあらたにつくっても構わない。 この命題の真理値は、 「(not $ P$ ) or $ Q$ 」と同じである。

上の三つは、数学の推論の仕方の基本的な取り決めである。 「or」と「ならば」の使い方はとくに注意が必要である。 日常語としては、これらの語を上記以外の使い方で用いることもあるが、 「議論を明確にする」ために上のようにきめてあるわけだ。

かけ算における九九の表や、筆算のように、 真理値についても表をつくって理解の 助けにすることがある。これを真理表という。 形式は、どのようなものでも良いわけだが、例えばつぎのようにつくる。

P Q P and Q P or Q not P Q (not P)or Q
0 0 0 0 1 0 1
0 1 0 1 1 1 1
1 0 0 1 0 0 0
1 1 1 1 0 1 1

上の表の一番右の欄が 「 $ P\implies Q$ 」の真理値を表している。

問題 3.1   真理値を書き込んで、 下の真理表を完成せよ。
P Q P$ \implies$ Q P and (P$ \implies$ Q) (P and (P$ \implies$ Q))$ \implies$ Q
0 0      
0 1      
1 0      
1 1      

「and, or , not $ \dots$ 」 は日本語ではもちろん それぞれ 「かつ、または、$ \dots$ でない」である。 ここでは、強調のためあえて英語を用いた。 また、つぎのような記法が用いられることもある。

$\displaystyle P \wedge Q$ % latex2html id marker 907
$\displaystyle \qquad$ $\displaystyle P$ and $\displaystyle Q$ % latex2html id marker 910
$\displaystyle \qquad (P$ かつ $\displaystyle Q)$    
$\displaystyle P \vee Q$ % latex2html id marker 913
$\displaystyle \qquad$ $\displaystyle P$    or $\displaystyle Q$ % latex2html id marker 916
$\displaystyle \qquad (P$ または $\displaystyle Q)$    
$\displaystyle \neg P$ % latex2html id marker 919
$\displaystyle \qquad$ $\displaystyle \text {not } P$ % latex2html id marker 921
$\displaystyle \qquad (P$ でない$\displaystyle )$    


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2006-10-18