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代数学 I No.5要約

\fbox{今日のテーマ} 《剰余環、素イデアル、極大イデアル》

定義 5.1   可換環 $ R$ があたえられたとする。
  1. $ R$ に 0 以外の零因子がないなら、 $ R$ は整域であるという。
  2. $ R$ の 0 以外の元が $ R$ で可逆であるとき、$ R$ は体であるという。

もちろん、体は必ず整域である。

定義 5.2   可換環 $ R$ のイデアル $ I$ (% latex2html id marker 923
$ R\neq I$ )について、
  1. $ R/I$ が整域であるとき、$ I$$ R$ の素イデアルであるという。
  2. $ R/I$ が体であるとき、$ I$$ R$ の極大イデアルであるという。

これらの名前の由来はもっとあとのほうで述べる。 さしあたっては、次の例が重要である。

例 5.1  
  1. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアル $ \{0\}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の素イデアルであるが、 極大イデアルではない。
  2. 素数 $ p$ があたえられたとき、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアル $ p {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の極大イデアルである。
  3. 正の整数 $ n$ が素数でないとき、 $ n {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアルではあるが、 素イデアルではない。

定義 5.3   素数 $ p$ が与えられたとき、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ は(上の例に述べたように)元の数が $ p$ の体である。 この体を $ {\mathbb{F}}_p$ と書く。

補題 5.1   $ R$ と、その上の一変数多項式 $ f(X)$ が与えられているとする。 $ d=\deg(f)$ ($ f$ の次数)とおくとき、
  1. $ R$ が整域ならば、 $ f(r)=0$ をみたす $ R$ の元 $ r$$ d$ 個以下である。
  2. $ R$ が整域でなければ、 $ f(r)=0$ をみたす $ R$ の元 $ r$$ d$ 個以上存在する場合もある。

(2)の例:

  1. $ R={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ f(X)=3 X$ は一次式だが、$ 0,2,4$ のどれを代入しても 0 である。
  2. $ R={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ f(X)=(X-1)(X-2)$ は二次式だが、$ 1,2,4,5$ のどれを代入しても 0 である。

※レポート問題

つぎのうち一問を選択して解きなさい。 (期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
正の数 % latex2html id marker 1022
$ n,d \geq 2$ と、 $ R={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ 上の $ d$ 次多項式 $ f(X)$ で、 $ f(x)=0$ をみたす $ x\in R$ の数が $ d$ 個より多いものの例を 挙げ、実際にそのような $ x\in R$$ d+1$ 個以上書きなさい。


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2007-10-30