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日本語技法 No.5

$ \forall$$ \exists$ (その2)

$\displaystyle \forall x P(x)
$

を証明するには、全ての $ x$ について一斉にチェックする必要がある。 (したがって、一般には何らかの巧妙な「多くのモノをさばく」テクニックが 必要になる。)
例: $ \forall z\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0} ((4> z^2) {\Leftrightarrow} (2 >z)) $ は正しい。 なぜなら、任意の正の有理数 $ z$ に対して、

$\displaystyle 4>z^2  {\Leftrightarrow} (2-z)(2+z)>0 {\Leftrightarrow} 2-z>0 {\Leftrightarrow} 2>z
$

だからである。

$\displaystyle \exists x P(x)
$

を証明するには、一つで良いから例をあげれば良い。 このときは、できるだけ具体的な例がよい。
例: $ \forall z\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0} ((3> z^2) {\Leftrightarrow} (2 >z)) $ は正しくない。 すなわち、

$\displaystyle \exists z\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$\displaystyle _{>0} ((3> z^2) \not\Leftrightarrow  (2 >z))
$

である。なぜなら、正の有理数 $ z=1.8$ を考えると、 $ 3>1.8^2 $ ではない( $ 1.8^2=3.24$)のに $ 2>1.8$ だからである。

一般に、 $ \forall x P(x)$ の否定は $ \exists x (\neg P(x))$ であり、 $ \exists x P(x)$ の否定は $ \forall x (\neg P(x))$ である。 したがって、例えば

$\displaystyle \left(
\neg(\forall x \exists y \forall z P(x,y,z))
\right)
=
\left(
\exists x \forall y \exists z (\neg P(x,y,z))
\right)
$

という具合に、 $ \forall, \exists$ を含んだ命題の 否定は非常に簡単かつ形式的に得ることができる。

議論が複雑になってきたように感じられたら、 いったん記号で 主張を書いてみて整理するとわかりやすくなることが多い。

また、下の問題のように、幾つかに区切って考えるのも一法である。

その前に一つ注意をしておこう。

命題 5.1   一般に、正の実数 $ a,b$ に対して

$\displaystyle \forall z\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$\displaystyle _{>0} ((a> z^2)\ \Leftrightarrow \ (b >z))
$

が成り立つのは $ a=b^2$ のときで、しかもそのときに限る。

問題 5.1   この問題では % latex2html id marker 808
$ \sqrt{3}$ は無理数であることを証明なしに用いて良い。 以下に挙げるそれぞれの命題は真だろうか、それとも偽だろうか。 それぞれ理由を述べて答えなさい。
  1. $ \exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}
\forall z\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}
((3> z^2) {\Leftrightarrow} (y >z))
$

  2. $ \forall x\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}
\exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}
\forall z\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}
((x> z^2) {\Leftrightarrow} (y >z))
$



平成19年11月29日