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日本語技法 No.6

$ \forall$$ \exists$ (その3)

今回は小テストである。裏面の問題を解いて、解答用紙に 解答すること。

なお、

  1. 本やノート等を参照しても良い。ただし、私語は厳禁とする。
  2. 時間は1時限終了時までである。
  3. 解答は簡潔なものであることに越したことはないが、 説明が欄にどうしても収まり切れない場合には適宜*印などを つけて裏面等に付け足しても良い。
  4. 以下の解説も参考にすると良いかも知れない。

$\displaystyle \exists x \forall y P(x,y)
$

を証明するには 全ての $ y$ について一斉に P(x,y) がなりたつような $ x$ の例を挙げれば良い。 すなわち、あなたが自分で $ x$ の例 $ x_0$ を挙げ、その $ x_0$ に関して (一般には何らかの巧妙な「多くのモノをさばく」テクニックを用いて) 全ての $ y$ について一斉に $ P(x_0,y)$ がなりたつことを示すことになる。
例: $ \exists x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \forall y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1273
$ (y^2\geq x)$ は正しい。 なぜなら、$ x=0$ という例に対して

$\displaystyle \forall y \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1279
$\displaystyle (y^2\geq 0)
$

がなりたつからである。

$\displaystyle \forall y \exists x P(x,y)
$

を証明するには、各々の $ y$ に対してそれぞれ $ x$ の例を挙げればよい。

例:

$\displaystyle \forall y \exists x (x>y)
$

は正しい。 なぜなら、各々の実数 $ y$ に対して、$ x$ の例として $ x+1$ をとれば よいからである。

問題 5.1 の答:(1),(2)ともに偽である。なぜなら、命題5.1 を用いて(1),(2) は それぞれ

($ 1'$) $ \exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0} (y^2=3)$

($ 2'$) $ \forall x\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0}\exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ _{>0} (y^2=x)$

と同値である。平方して $ 3$ になる数は % latex2html id marker 1312
$ \pm \sqrt{3}$ に限られ、 それらは有理数ではないから、$ (1')$ は偽である。 また、

$\displaystyle \exists y\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$\displaystyle _{>0} (y^2=x)
$

という $ x$ についての命題を $ P(x)$ と書くと、$ (1')$$ P(3)$ と同じことであり、 $ (2')$

$\displaystyle \forall x\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$\displaystyle _{>0} (P(x))
$

という命題にほかならない。反例 $ x=3$ があるので $ (2')$ も偽である。

\fbox{{\Large 問題}}

生徒 A-I が以下のような主張をしている。これらの主張を数式に翻訳し、 その真偽を理由を挙げて述べなさい。ただし、A,C,D は例題として はじめから解答が書いてある。

\fbox{レベル1}

(例題)生徒 A は、「実数 $ x$ はそれがどんなものであっても $ 3$ 以上である」と言った。

生徒 B は 「 $ 5$ 以上の実数 $ x$ が存在する」と言った。

\fbox{レベル2}

(例題)生徒 C は 「あなたがどんな実数 $ x$ を一つ持ってきても、わたしはそれより $ 5$ 以上大きい実数 $ y$ を挙げることができる」と言った。

(例題)生徒 D は 「わたしの知っているある実数 $ x$ はどんな実数 $ y$ より $ 5$ 以上大きい」 と言った。

生徒 E は 「あなたがどんな実数 $ x$ を一つ持ってきても、 わたしは実数 $ y$ を一つ用意して、 二つの数の和を $ 3$ にできる。」と言った。

生徒 F は 「わたしは実数 $ x$ を一つ用意して、 あなたがどんな実数 $ y$ を一つ持ってきても、 二つの数の和が $ 3$ であるようにできる。」と言った。

生徒 G は 「わたしは $ x$$ y$ という二つの実数を用意して、 あなたがどんな実数 $ z$ を一つ持ってきても、 $ x z =y$ であるようにできる」と言った。

\fbox{レベル 3}(前問までは実数を扱っていたが以下の問題では整数を 扱うことに注意)

次のようなゲームを考えよう。

ゲームは先手、後手の二人で次のような手順で行なわれる。

(手順1).
先手が整数 $ x$ を一つ言う。
(手順2).
後手が整数 $ y$ を一つ言う。
(手順3).
先手が整数 $ z$ を一つ言う。

このとき、

  • $ z$$ x$$ y$ の平均値( $ \frac{x+y}{2}$)ならば先手の勝ち。
  • それ以外ならば後手の勝ち。

生徒 H は、「このゲームで、先手が1手目にどんな整数 $ x$ を言っても、 後手がへまをすれば、先手が勝つことがあり得ます。」 と言った。

生徒 I は、「このゲームは後手がうまくやれば必ず後手の勝ちですね。」 と言った。


\fbox{宿題}

上の諸問題は若干気が利いていない気もする。そこで、 各自が気の利いた $ \exists$, $ \forall$ に関するレベル2かレベル3相当の問題 を作成し、 解答例を作ってみること。 これは次回の小演習の課題とする予定であるが、 いきなりその場では時間が少なくて作れないかも知れないので、 宿題として次回までに案を練っておくことをお勧めする。

当然各人全く違った問題を作成することを期待している。

解答用紙

出席番号、名前:

主張者 数式による翻訳 真偽 理由
A(例) $ \forall x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1406
$ (x\geq 3)$ $ 1$ も実数だが $ 3$ 以上ではない。
B      
C(例) $ \forall x \exists y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1414
$ (y\geq x+5)$ あなたの $ x$ に対して生徒 $ C$$ y=x+6$ を用意すれば良い。
D(例) $ \exists x\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \forall y \in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1426
$ (x\geq y+5)$ そのような $ x$ があったとすると、あなたが $ y$ として $ x$ をとると矛盾が生じる。
E      
F      
G      
H      
I      

出席番号、名前:解答例0000 高知大学 太郎左衛門

主張者 数式による翻訳 真偽 理由
A(例) $ \forall x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1478
$ (x\geq 3)$ $ 1$ も実数だが $ 3$ 以上ではない。
B $ \exists x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1486
$ (x\geq 5)$ $ x=10$ がその例である。
C(例) $ \forall x \exists y \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1492
$ (y\geq x+5)$ あなたの $ x$ に対して 生徒 C は $ y=x+6$ を用意すれば良い。
D(例) $ \exists x\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \forall y \in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1502
$ (x\geq y+5)$ そのような $ x$ があったとすると、あなたが $ y$ として $ x$ をとると矛盾が生じる。
E $ \forall x\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ (x+y=3)$ あなたの $ x$ に対して 生徒 E は $ y=(3-x)$ とすれば良い。
F $ \exists x\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \forall y \in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ (x+y=3)$ そのような $ x$ があったとするとあなたが $ y=-x$ にとると矛盾が生じる。
G $ \exists x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \exists y\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \forall z\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ (xz=y)$ G が $ x=0,y=0$ と決めれば、 どのような $ z\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対しても $ xz=0 z=0=y$ である。
H $ \forall x\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\exists y\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\exists z\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}(z=\frac{x+y}{2})$ 先手の $ x$ に対して後手が $ y=x$ に選んだとしよう。 このとき先手は $ z=x$ を選べば良い。
I % latex2html id marker 1553
$ \forall x\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\exists y\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\forall z\in{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}(z\neq\frac{x+y}{2})$ 先手の $ x$ に対して後手が $ y=-x+1$ に選べば $ \frac{x+y}{2}=\frac{1}{2}$ は整数にならず先手が $ z$ としてどんな整数を選んでも負けである。


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平成19年11月29日