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代数学 IB No.12要約

\fbox{今日のテーマ} 《素元分解環》(3)

命題 12.1   素元分解環 $ R$ 上の一変数多項式

$\displaystyle f(X)=c_d X^d+c_{d-1}X^{d-1}+\dots +c_1 X +c_0
$

について、
  1. $ g\in R[X]$$ R[X]$ のなかで $ f$ の約元であるならば、 $ g$ の定数項は $ f$ の定数項 $ c_0$ の約数であり、 $ g$ の最高次の係数は $ f$ の最高次の係数 $ c_d$ の約数である。
  2. $ f$ の根で、$ K=Q(R)$ に含まれるものは必ず

    % latex2html id marker 834
$\displaystyle a/b \quad (a,b\in R,\ a\vert c_d,\ b\vert c_0)
$

    なる形をしている。

例 12.1   $ f(X)=15 X^3 +59 X^2+ 23 X -77$ とおく。$ f$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ の元として 素元分解したい。
  1. $ f$ の根で $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ (=Q({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}))$ に属するものは

    % latex2html id marker 852
$\displaystyle a/b \quad (a,b\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}},\ a\vert 15,\ b\vert 77)
$

    なる形をしている。($ 32$ 通りの可能性がある。)
  2. そのうち、本当に根であるものは $ c=-7/3$ の一つのみである。
  3. 因数定理により、$ f$$ X-c$ を (環 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]$ のなかで)因数に持つ。
  4. 実際に割ってみると

    $\displaystyle f(X)=(X+7/3)(15 X^2+24 X -33)
$

  5. ポイントは、上の因数分解で全体を定数倍だけ調節することにより、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ の元としての因数分解を得られる所にある。

    $\displaystyle f(X)=(3X+7)(5 X^2+8 X -11)
$

  6. $ g(X)=5 X^2 +8 X-11$ は有理数の根を持たない。
  7. 二次式をが可約であれば一次のの因子をもつはずである。 ゆえに $ g$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上既約である。
  8. $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上既約な $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ 上の原始的多項式であるから、$ g$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ 上既約である。 すなわち $ f(X)=(3X+7)g(X)$$ f$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ の元としての 素元分解である。

問題 12.1   $ 2$ 以上の整数 $ n$ にたいして、

$\displaystyle f_n(X)=X^n+ 7X +7
$

と定義する。このとき $ f_n(X)$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]$ の中で可約である(=既約でない)ような $ n$ の値を全て求めなさい。



2008-12-16