next up previous
Next: About this document ...

    

解析学 IA演習 No.9

問題 9.1   $ A \in M_{m,l}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ , $ B\in M_{k,l}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ に対して、次の二条件は 同値であることを示しなさい。
  1. $ \forall v \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l (B v=0 \implies A v=0) $ .
  2. $ \exists L\in M_{m,k}($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ があって、 $ A=LB$ がなりたつ。

$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^l$ 上の共通の定義域を持つ(実数値もしくはベクトル値) 関数 $ f,g$ が与えられているとする。 ラグランジュの未定乗数法は、$ g(x)=0$ を満たすような $ x$ のうちで $ f(x)$ の停留値を議論するのに使われる。 $ g(a)=0$ なる $ a$$ f$ が停留するとしよう。 $ g(x)=0$ を満たす $ x$ の全体は

% latex2html id marker 1051
$\displaystyle \{a+h ;\quad (D g)_{a} h=0\}
$

なる空間(接線ならぬ「接線形多様体」)で近似される。この空間上 $ f$ が停留するということは、

$\displaystyle (D g)_a h=0 \implies (D f)_a h=0
$

ということである。前問よりこれは $ Dg\vert _a=L Df\vert _a$ をみたす行列 $ L$ が存在することと同値である。行列 $ L$ を「未定乗数」としてあらたな 変数に組み込むのが素晴しいアイディアである。 が、理論は二の次である。(だったら書くな。) 未定乗数法の最大の良さはその使い勝手の良さにある。以下の数問を参照。

問題 9.2 (各1)   $ x^2+y^2=1$ を満たす $ x,y$ について、$ f(x)=xy$ の極大、極小を 議論したい。
  1. $ F(x,y,\lambda)= x y + \lambda (x^2+y^2-1)$ にたいして、 $ F_x(a,b,l)=0, F_y(a,b,l)=0, F_\lambda(a,b,l)=0$ を同時に満足する $ a,b,l$ を求めなさい。
  2. 上のような $ (a,b,l)$ について、$ f(x)$ が円周上の 極大、極小点であるか(三角関数を用いずに)調べなさい。
  3. 三角関数を用いて、上の結論を再確認しなさい。

問題 9.3 (実)   二次曲線 $ g(x,y)=7 x^2-2 x y + 31 y^2 -1=0$ 上の点のうち、 原点からもっとも近い点ともっとも遠い点をそれぞれ求めなさい。 (ヒント: $ g(x,y)=0$ なる条件下で $ x^2+y^2$ の停留条件を 未定乗数法で求めよ。)

問題 9.4   実二次曲線 $ x^4+y^4=1$ について、前問を繰り返しなさい。

問題 9.5   実二次曲線 $ x^3+y^3=1$ について、前問を繰り返しなさい。 (距離最小の点は存在するが、最大の点は...)

問題 9.6   条件 $ xy+yx+zx=3$ , $ xyz=1$ を満たす $ (x,y,z)$ のなかで、 $ f(x,y,z)=x+y+z$ の値の 停留値を見たい。そこで

$\displaystyle F(x,y,z,\lambda,\mu)=x+y+z+\lambda(xy+yz+zx-3)+\mu(xyz-1)
$

を考えて、 $ F_x,F_y,F_z,F_\lambda,F_\mu$ の共通零点をもとめ、 続いて $ f$ の与条件下での停留点および停留値をもとめよ。

問題 9.7 (各1)   次の式でさだまる陰関数 $ y=\varphi(x)$ について、その微分 $ \varphi'(x)$ を 求めよ。(ヒント:小テストNo.09, 教科書 p.127演習問題)
  1. $ x^2+y^2=1$ .
  2. $ 7 x^2- 2 x y + 31 y^2 -1=0$ .
  3. $ x^4+y^4=1$ .
  4. $ x^3+y^3=1$ .

問題 9.8 (全部で1)   $ f$ は二変数の $ C^2$ 級関数と仮定する。このとき、
  1. 等式

      $\displaystyle f(a+h,b+k)-f(a+h,b)-f(a,b+k)+f(a,b)$    
    $\displaystyle =$ $\displaystyle h k\int_0^1 \left( \int_0^1 (f_y)_x (a+h t, b+ k u ) du \right) dt$    

    と絶対積分評価を用いて、

      $\displaystyle \lim_{(h,k)\to (0,0)} \frac{1}{hk}\left( f(a+h,b+k)-f(a+h,b)-f(a,b+k)+f(a,b) \right)$    
      $\displaystyle =(f_y)_x(a,b)$    

    を示しなさい。
  2. $ (f_y)_x(a,b)=(f_x)_y(a,b)$ を示しなさい。

問題 9.9   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ の開集合 $ U$ 上定義された $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ -値 $ C^1$ 関数 $ f$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ の開集合 $ V$ 上定義された $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^m$ -値連続関数 $ g$ が与えられていて、 $ g(V)\subset V$ かつ $ f\circ g={\operatorname{id}}_V$ がなりたっていたとする。 このとき、もし、点 $ a\in U$$ L=(Df)\vert _a$ が行列として可逆(つまり、 逆行列を持つ。言い換えると、 % latex2html id marker 1196
$ \operatorname{det}(D L)\neq 0$ )だったとすると、 $ g$$ b=f(a)$ において微分可能であって、

$\displaystyle D g\vert _b= L^{-1}
$

がなりたつことを示しなさい。

(ヒント:

$\displaystyle g(b+k)=g(b)+L^{-1} \cdot k + o(\vert\vert k\vert\vert)
$

がなりたつことを示せば良い。 $ x=g(b+k)$ とおけば、

$\displaystyle k=(b+k)-b=f(x)-f(a)=L\cdot (x-a)+o (\vert\vert x-a\vert\vert)
=L\cdot (x-a)+o (\vert\vert g(b+k)-g(b)\vert\vert).
$

あとは $ g$ の連続性に着目すれば良い。)

問題 9.10   本問では、 $ M_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ が行列ノルムに関して完備であることと、行列ノルムの (行列ノルムに関する)連続性を自由に用いて良い。
  1. $ H\in M_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$ が、 $ \vert\vert H\vert\vert<1$ (行列ノルム)を満たせば、

    $\displaystyle S_k=1_n+ H +H^2+ H^3+\dots H^k
$

    とおくと、$ \{S_k\}$ は行列ノルムに関してコーシー列であることを示しなさい。
  2. 上の仮定の下で、$ 1_n-H$ が逆元を持つことを示しなさい。
  3. $ {\operatorname{GL}}_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )\ni X \mapsto X^{-1} \in M_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$$ 1_n$ における一次近似が

    $\displaystyle (1_n+H)^{-1}=1_n^{-1} + (-H) + o(\vert\vert H\vert\vert).
$

    で与えられることを示しなさい。

  4. $ {\operatorname{GL}}_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )\ni X \mapsto X^{-1} \in M_n($$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ )$$ A$ における一次近似が

    $\displaystyle (A+H)^{-1}=A^{-1} + (-A^{-1} H A^{-1}) + o(\vert\vert H\vert\vert).
$

    で与えられることを示しなさい。
本問は $ X\mapsto X^{-1}$$ A$ での微分係数が $ -A^{-1} \bullet A^{-1}$ (つまり $ H\mapsto -A^{-1} H A^{-1}$ なる 線型写像)で与えられることを意味している。


next up previous
Next: About this document ...
2009-07-29