next up previous
Next: About this document ...

    

微分積分学概論AI要約 No.8

\fbox{関数の極限値・左極限、右極限。}

今回から、関数の話に話題の重点をうつす。

これから、 「$ a$ の近くで定義されている(実数値)関数 $ f$ 」 という言い方をもちいることがある。これは、 次の二つの状況を同時に満足していることを 言い表す言葉である。

  1. $ f$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ のある部分集合 $ S$ 上定義されている関数 ( $ f: S\to$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ )である。
  2. $ S$$ a$ を含むある開区間 $ I$ を部分集合として含む

定義 8.1 ( ``1.3.2'' )  

$ f$ は実数 $ a$ の近くで定義された関数であるとする。このとき、 $ x$$ a$ に近づくときの $ f(x)$極限値$ A$ である (「$ x\to a$ のとき $ f$$ A$ に収束する」とも言う) とは、

$\displaystyle \forall \epsilon>0, \exists \delta>0;
( 0<\vert x-a\vert<\delta  \implies  \vert f(x)-A\vert<\epsilon)
$

が満たされるときに言う。

($ x\to a$ の過程において、「$ x=a$ を許さない」というのが 一つのポイントである。これは、

$\displaystyle \lim_{x\to a}\frac{\sin(x)-\sin(a)}{x-a}=\cos(a)
$

のような不定形の極限を相手にすることが多いからである。 )

補題 8.2   上の定義の状況のもとで、関数 $ f(x)$$ x$$ a$ に近づくときの極限値は 存在するとすれば唯一つである。

定義 8.3   $ f(x)$$ x\to a$ の極限を(それがもし存在すれば、)

$\displaystyle \lim_{x\to a} f(x)
$

とかく。

定義 8.4 ( ``1.3.3'' )  

$ f$ は実数 $ a$ の近くで定義された関数であるとする。このとき、 $ x$$ a$ に近づくときの $ f(x)$右極限値$ A$ である (「 $ x\downarrow a$ のとき $ f$$ A$ に収束する」とも言う) とは、

$\displaystyle \forall \epsilon>0, \exists \delta>0;
( 0<x-a<\delta  \implies  \vert f(x)-A\vert<\epsilon)
$

が満たされるときに言う。$ f$ および $ a$ が与えられたとき、右極限値が もし存在すれば一意的である。これを

$\displaystyle \lim_{x\downarrow a} f(x)$    あるいは $\displaystyle \lim_{x\to a+0} f(x)
$

と書く。左極限値も同様に定義される。

問題 8.1  

$\displaystyle \lim_{x\to 2} x^3
$

はいくらか。(結果が正しいことを極限の定義に基づいて証明せよ。)

前回、「アクションプラン」と題して何か喋りましたが、 それは、この間のアンケートの結果を踏まえたもので、 その要点は:

  1. 講義の最初の5分間ぐらいを解説タイムに当てます。
  2. 講義の分からないところ、考え方で良く分からないところなどを レポートに具体的に書いて「これについて解説タイムで解説して欲しい」 という風に要望して頂ければできる限りお答えします。
  3. その他、下のような「ツボ」を要約に載せるようにします。

◎ いつになったら

$ a_n=\frac{1}{n}$ という数列を考えよう。 意訳すれば、コビトサンが一日に一度数字を作ってくれていると考えれば良い。

1日目  $\displaystyle a_1=1$    
2日目  $\displaystyle a_2=0.5$    
3日目  $\displaystyle a_3=0.33333\dots$    
4日目  $\displaystyle a_4=0.25$    
5日目  $\displaystyle a_5=0.2$    
6日目  $\displaystyle a_6=0.1666\dots$    
7日目  $\displaystyle a_7=0.14285714\dots$    

いつになったら $ a_n$ の値は $ 0.01$ より小さくなるだろうか。

答は101日目。

いつになったら $ a_n$ の値は $ 0.001$ より小さくなるだろうか。

答は1001日目。

いつになったら $ a_n$ の値は $ 0.000234$ より小さくなるだろうか。

(ちょっと考えて)答は4274日目。

いちいち聞かれていては面倒だ。記号を用いて自動化しよう。

いつになったら $ a_n$ の値は $ \epsilon(>0)$ より小さくなるだろうか。

答は $ \lceil 1/\epsilon \rceil$ ( $ 1/\epsilon$ より大きい最小の整数)日目。

同様に、いつになったら

$\displaystyle \frac{12 n^2 +25 n +2009} { n^2 +6 n +8}
$

$ 12$ との差は $ 0.1$ 以下になるだろう。

◎「論理的な計算」を理解するために

(a)表には数、裏にはアルファベットの書かれたカードが4枚ある。 それらは A, K, 4, 7 であった。 それらのカードのことごとくが 「母音の裏側の数字は必ず偶数になっている」 というルールを満足していることを確かめるためには、 最低で何枚のカードをめくる必要があるか。(それらはどのカードか。)

(b)4人のヒトがいる。

それらのヒトのことごとくが 「20歳未満はアルコールを飲んではイケナイ」 というルールを満足していることを確かめるためには、 最低で何人のヒトについて新たな情報を得る必要があるか。 (それらはどのヒトか。)

詳細は「偶数」「母音」でネットを検索すると良い。 どちらの問題が分かりやすいだろうか。(爆問学問 File-071より)

◎レポートの解答から

◯ 問題6.2 では、$ \{a_n\}$ が有界であることを証明するのが ポイントである。 「$ \{a_n\}$ が有界として」 とか 「$ \{a_n\}$ が有界と仮定する」で解答が始まるのはのっけからオカシイ。

$ \{a_n\}$$ c$ に収束するということを縮めて $ \lim_{n\to \infty} a_n $ と書くのである。 $ \{a_n\}$ は 「$ \{a_n\}$$ c$ に収束するので、 $ \lim_{n\to \infty} a_n =c$ 」 などと書くのは、全く理解しないという印象を与える。

◯ 収束列が単調とは限らない。 例えば $ (-1)^n \frac{1}{n}$ は 0 に 収束するし、 $ 5+(-1)^n \frac{1}{n}$$ 5$ に収束する。

◯ 「数列が有界である」とは $ \{a_n\}$ 全体が ある区間 $ [N,N']$ に すっぽりと入ることを意味している。 一つ一つの元が有界であるからといって、全体が有界であるとは限らない。


next up previous
Next: About this document ...
2009-06-04