next up previous
Next: About this document ...

    

解析学 IA No.8要約

\fbox{今日のテーマ} 一次近似、二次近似。(まとめ)

$ f$ の微分とは、$ f$ の一次近似のことなのであった。 言い換えると、ベクトル $ a$$ h=(h_i)$ とに対して、

$\displaystyle f(a+h)=f(a)+\sum_i f_{x_i}(a) h_i + o(\vert\vert h\vert\vert).
$

微分を一次近似の言葉で解釈することにより、様々な公式が理解しやすくなり、 覚えやすくなる。これは一変数でもそうで、例えば、

$\displaystyle (f\circ g)'(a)=f'(g(a)) g'(a)
$

$\displaystyle g(a+h)=g(a)+ g'(a) h +o(\vert h\vert)
$

$\displaystyle f(u+v)=f(u)+f'(u) v + o(\vert v\vert)
$

という一次近似の合成として理解できる。

$ f$ のテイラー展開とは、さらに高次の項も含めて近似を良くすることに相当する。 例えば、$ f$ の二次近似は

$\displaystyle f(a+h)=f(a)+\sum_i f_{x_i}(a) h_i +\frac{1}{2} \sum_{i,j} f_{x_i x_j} h_i h_j+ o(\vert\vert h\vert\vert^2).
$

である。 とくに、二変数では、

$\displaystyle f(a+h,b+k)$ $\displaystyle =f(a,b)+f_{x}(a,b)h + f_y(a,b) k$    
  $\displaystyle + \frac{1}{2} f_{xx}(a,b) h^2 +2 f_{xy}(a,b) hk +f_{yy}(a,b) k^2 +o(\vert\vert h,k\vert\vert^2)$    

という具合に書ける。 二次近似が特に目だった働きを見せるのは、$ Df(a)=0$ すなわち、$ f$$ 1$ 次 近似が消えてしまっているときである。そのときには二次の項がクローズアップされる ことになる。 二変数の場合でいえば、 $ f_x(a,b)=0$ かつ $ f_y(a,b)=0$ のとき、

$\displaystyle f(a+h,b+k)=f(a,b)
+\frac{1}{2}
f_{xx}(a,b) h^2
+2 f_{xy}(a,b) hk
+f_{yy}(a,b) k^2
+o(\vert\vert h,k\vert\vert^2)
$

が成り立つことを意味している。これは、$ f$$ (a,b)$ の付近での挙動が 大まかに 二次式で記述できるということを言っている。

教科書の``定理4.11(極値の判定法)''はその考えに基づいており、 証明の考え方は一変数の場合に準ずる。

但し二次形式の扱い方という高次元の問題が残っていた。 これについては線形代数学で扱う(かも知れない。)

二変数二次形式は例外的にやさしい。これは本質的に一変数の二次式を 扱うのと同等に扱えるからである。たとえば

% latex2html id marker 748
$\displaystyle x^2+2xy+ y^2 =(x+y)^2, \quad
x^2+2xy+ 2y^2 =(x+y)^2+y^2
$

はそれぞれ

% latex2html id marker 750
$\displaystyle x^2+2 x + 1= (x+1)^2 ,\quad
x^2+2 x + 2= (x+1)^2+1
$

に対応している。(この考え方は式の斉次化、非斉次化の話として一般化される。)

※レポート問題 (期限:次の講義の終了時まで。)

問題 8.1   一変数のテイラー展開の知識を用いて、 固定した $ t$ について

$\displaystyle \sin(t+\Delta t)=\sin(t)+ c_1 \Delta t + c_2 (\Delta t)^2 +o(\vert\Delta t\vert^2)
$

をみたす $ c_1$ , $ c_2$ を求めなさい。(剰余項の評価等の詳細は問わない。) さらに、 $ f(x,y)=x^2 y$ にたいして、 $ f(a+h,b+k)$$ h,k$ について整理したものを上記の式に代入することにより、 $ \sin(x^2 y)$$ a,b$ における 2次近似を求めなさい。



2009-06-09