next up previous
Next: About this document ...

    

代数学II要約 No.8

第8回目の主題 : \fbox{PID 上の有限生成加群(続き)}

可換環 $ A$ 上の加群 $ M$ の元 $ m_1,m_2,\dots, m_k$ にたいして、 次のような変換を考えていた。

変換1.
$ \{m_1,m_2,m_3,\dots,m_k\}$ の順序を入れ換える。
変換2.
$ \{m_1,m_2,m_3,\dots,m_k\}$ の代わりに それを $ \begin{pmatrix}
a & b \\
c & d
\end{pmatrix}\in {\operatorname{GL}}_2(A)
$ で「ひねった」

$\displaystyle \{a. m_1+b.m_2,c.m_1+ d.m_2,m_3,\dots,m_k\}
$

を考える。
変換3.
$ \{m_1,m_2,m_3,\dots,m_k\}$ の代わりに $ m_1$

$\displaystyle m_1'= m_1+ a_2 m_2+ a_3 m_3 + \dots m_k m_k
$

に置き換えたもの $ \{m_1', m_2,m_3,\dots, m_k\}$ を考える。

手順 8.1   可換 PID $ A$ と、その上の加群 $ M$ が与えられていて、 $ M$$ A$ $ m_1,m_2,\dots, m_k$ で生成されているとする。 $ m_1,m_2,\dots, m_k$ を(変換1), (変換2), (変換3) を 有限回繰り返して得られる $ M$ の生成系 の全体を $ \mathcal S$ とおく。このとき、
  1. 次の操作をストップするまで繰り返し、 $ \underline{w}=\{w_1,w_2,\dots w_k\}\in \mathcal S$ を得る。
    1. $\displaystyle c_1 v_1
+c_2 v_2
\dots +
c_k v_k=0
$

      なる関係式をひとつ見つけてくる。このような関係式で非自明なものが 存在しないならば $ M$ は自由加群である。もし存在するならば、 (変換1) をくり返して、 % latex2html id marker 829
$ c_1\neq 0$ としてよい。
    2. 上の $ v$ に (変換1), (変換2) を繰り返すことにより、 $ c_1 w_1 =0$ なる関係式をもつ $ \{w_1,w_2,\dots, w_k\}\in \mathcal S$ を 見つけることができる。
    3. $ w_1,w_2,\dots, w_n$ の関係式

      $\displaystyle \sum_j a_j w_j
$

      のうち、 $ a_1$$ c_1$ で割り切れないものがもしなければ、ここでストップする。 あれば、$ c_1$$ a_1$ の gcd $ d_1$ にたいして、ある $ d_2,d_3,\dots, d_k\in A $ を見つけて、

      $\displaystyle \sum d_j w_j =0
$

      なる関係式を見つけることができる。$ \{w_j\}$$ v$ の代わりに採用して、 (1)へ。
    命題 7.10 により、以上の操作は必ず有限回でストップする。
  2. この時点で、 $ M= A w_1 \oplus (A w_2 + \dots +A w_k)$ と 直和分解されるので、 $ M'=A w_2,\dots A w_k$ に対して同様の操作を 繰り返す。

上の手順で $ M$ を定理7.4 にあるように直和分解できるが、 その際の $ w$ は、補題7.3の (2)で言われるような極大性の条件を満足するとは 限らない。その要求を満たすには次の補題のようなステップが必要になる。 応用上は定理7.4の形で十分なことが多いので詳細は略す。

補題 8.2   PID 上の加群 $ M$ が二つの元 $ m_1,m_2$ で生成されていて、その関係式が、

% latex2html id marker 876
$\displaystyle a_1 m_1 =0,\quad a_2 m_2=0
$

で与えられているとき、(言い換えると、 $ M\cong A/A a_1 \oplus A/A a_2$ のとき、) 命題 7.9 のように $ d=\gcd(a,b), a',b',x,y$ を選んで、

% latex2html id marker 882
$\displaystyle \bar{m_1}= a_1' m_1 + a_2' m_2 ,\quad \bar{m_2}= -y m_1 +x m_2
$

のように変換(変換2)を施すと、 $ \bar{m_1},\bar{m_2}$ の関係式は

% latex2html id marker 886
$\displaystyle d \bar{m}_1=0,\quad l \bar{m}_2=0 \qquad (l=\operatorname{lcm}(a_1,a_2)=a_1 a_2 /d)
$

であたえられる。

問題 8.1   命題 7.7 を用いて、可換 PID $ A$ 上の有限生成自由加群 $ F$ の有限生成部分加群は 自由加群であることを示しなさい。


next up previous
Next: About this document ...
2010-06-03