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代数学III要約 No.4

今日のテーマ: \fbox{共役}

共役は昔は共軛と書いた。したがって、 この字は「きょうやく」と読むのが正しい。 このへんの事情については wikipedia の共役の項にも記述が見られる。 ネットも捨てたもんじゃない。

$ K$ 上の代数的数 $ \alpha$ を付け加えてできた体 $ K(\alpha)$ の構造は、 実際には $ \alpha$$ K$ 上の最小多項式 $ f_0$ によって完全に決まるのであった。

定義 4.1   体 $ K$ の拡大体 $ L$ から 体 $ K$ の拡大体 $ L'$ への写像 $ \varphi$中への $ K$ -同型であるとは、 $ \varphi$ が環準同型であって、 なおかつ $ K$ 上で恒等写像に等しい時に言う。 言い換えると、$ L$ から $ L'$ の中への $ K$ -同型とは環の準同型であって、 同時に $ K$ -線形写像でも あるもののことである。 さらに、中への $ K$ -同型 $ \varphi$ が全射であるとき、$ \varphi$ を単に $ K$ -同型と呼ぶ(このとき $ \varphi$ は必然的に全単射である) 。

命題 4.2   体 $ K$ 上の拡大体 $ L$ の元 $ \alpha,\beta$ が、いずれも $ K$ 上 代数的であるとき、 次のことは同値である。
  1. $ \alpha,\beta$$ K$ 上の最小多項式が等しい。
  2. $ K(\alpha)$ から $ K(\beta)$ への $ K$ -同型 $ \varphi$ で、 $ \varphi(\alpha)=\varphi(\beta)$ を満たすものが存在する。
  3. $ K[X]$ の任意の元 $ a,b$ に対して、

    % latex2html id marker 895
$\displaystyle a(\alpha)=b(\alpha)\quad {\Leftrightarrow}\quad a(\beta)=b(\beta)
$

定義 4.3   上の同値な条件のひとつ(ゆえに、全部)が成り立つとき、 $ \alpha,\beta$$ K$共役であるという。

問題 4.1   % latex2html id marker 911
$ \alpha=\sqrt{2}+3$ % latex2html id marker 913
$ \beta=-\sqrt{2}+3$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上共役ではあるが、 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 918
$ (\sqrt{2})$ 上共役ではないことを示しなさい。 (本問では % latex2html id marker 920
$ \sqrt{2}$ が無理数であることは証明なしに用いて良いことにする。)

問題 4.2   体 $ K$ の拡大体 $ L$ と、$ L$ の元 $ \alpha_1,\alpha_2,\beta_1,\beta_2$ が 与えられているとする。 $ \alpha_1$$ \beta_1$ とが $ K$ 上共役で、 $ \alpha_2$$ \beta_2$ とが $ K$ 上共役ならば、 $ \alpha_1+ \alpha_2 $ $ \beta_1 +\beta_2$$ K$ 上共役であると 必ず言えるだろうか?



2010-10-22