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微分積分学概論AI要約 No.2
第2回目の主題 :
次の公理は実数の基本的な性質である。
公理 2.1

の部分集合

が上に有界ならば、

は上限を持つ。
定義 2.2

の部分集合

に対して、その上限のことを

と書く。
補題 2.3
集合

の上限が

であることは、次の二条件が同時に成り立つことと
同値である。
-
.
-
.
「
」
は、「どんな
に対しても、
がなりたつ」という意味、
「
」
は、「なにかある一つの
に対しては、
がなりたつ」という意味で用いる。
正の整数の全体のことをこの講義では
と書く。
数列とは、数学的には次のように定義できる。
定義 2.4
実数列

とは、

から

への写像

(すなわち、正の整数

に実数

を対応させる対応)のことである。
数列
を単なる集合と見てそれが有界かどうか、や
その上限
を議論することができる。公理 2.1により、
上に有界な数列は
上限を持つことがわかる。
定義 2.5
実数列

が
単調増加であるとは、
がなりたつときにいう。
もっと露骨に言えば
が単調増加であるとは
が成り立つということである。
補題 2.6
数列

を
で定義する。このとき
は単調増加である。
は有界である。
定義 2.7
上限
のことを
自然対数の底とよび、

と書く。
問題 2.1
正の実数

をひとつ固定したとき、
で定義される数列

は上に有界であることを示しなさい。
参考のために、
の性質で必要最小限のものを書いておこう。
よく知っている体
から少し離れて、次のような集合
(とその上の演算
,元
,関係式
)を考える。
は体である。すなわち:
は加法群である。
の各元
に対して、その和と呼ばれる元
が
ただひとつ定まる。
-
.
にはゼロ元
と呼ばれる元が存在して、
任意の
に対して
を満たす。
の各元
に対して、そのマイナス元
と呼ばれる元が
存在して、
を満たす。
.
-
は乗法に関して半群をなす。すなわち、
の各元
に対して、その積と呼ばれる元
が
ただひとつ定まる。
-
.
- 分配法則。
.
は乗法に関する単位元
をもつ。すなわち、
任意の
に対して
を満たす。
の乗法は可換である。
.
の
以外の元
は乗法に関して逆元
と呼ばれる元が存在して、
を満たす。
は全順序集合である。
に対して、
か
か
のいずれかが成り立つ。
-
にたいして、「(
and
) ならば
」が成り立つ。
の体の構造と順序構造は両立する。
-
.
-
.
の任意の有界部分集合は
内に上限を持つ。
このとき、
は実数体
と「同じ」(順序体として同型)である。
群、加法群、体について、その詳しい性質は2年生からの代数学で深く勉強する。
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2011-04-15