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論理と集合要約 No.12

第12回目の主題 : \fbox{写像は定義域の元を類別する。}

定義 12.1 (再)   写像 $ f: X\to Y$ が与えられているとき、
  1. $ X$ の部分集合 $ A$ に対して、その $ f$ による (順像とも言う) $ f(A)$

    $\displaystyle f(A)=\{ f(x) \vert x \in A\}
$

    で定義する。

  2. $ Y$ の部分集合 $ B$ に対して、その $ f$ による逆像 $ \overset{-1}{f}(B)$

    $\displaystyle \overset{-1}{f}(B)=\{ x \in X ; f(x)\in B\}
$

    により定義する。

問題 12.1 (再)   $ f:$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y)\to x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ にたいして、
  1. $ \overset{-1}{f}(\{0\})$ を求めよ。
  2. $ \overset{-1}{f}(\{-3\})$ を求めよ。
  3. $ \overset{-1}{f}([1,5])$ を求めよ。
  4. $ \overset{-1}{f}([3,4])$ をもとめよ。

一般に、写像 $ f: X\to Y$ が与えられると、$ X$ の元は $ f$ の値によって クラス分けされる。

問題 12.2   $ f: X\to Y$ が与えられているとし、 $ y\in Y$ に対して、 $ \overset{-1}{f}(\{y\})$ のことを $ X_{y}$ と 書くことにする。 次のことを示しなさい。
  1. $ X$ $ \{X_y\}_{y\in Y}$ の和集合である。
  2. $ y\in Y$ に対して、 % latex2html id marker 1179
$ \overset{-1}{f}(\{y\})\neq \emptyset  {\Leftrightarrow} y \in f(Y)$ .
  3. % latex2html id marker 1181
$ X_y \cap X_{y'}\neq \emptyset  {\Leftrightarrow} X_y = X_{y'}$ .

$ X_y$ のなかで、重複するものを省くことにより、 $ X$ の下の意味でのクラス分けを作ることができる。 (厳密には選択公理を仮定する必要がある。)

定義 12.2   集合 $ X$ の部分集合の族 $ \{C_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda}$$ X$クラス分け (分割とも言う)であるとは、つぎのことが成り立つときに言う。
  1. $ \displaystyle \bigcup_{\lambda \in \Lambda} C_\lambda =X$ .
  2. $ \lambda_1,\lambda_2 \in \Lambda$ , % latex2html id marker 1202
$ \lambda_1 \neq \lambda_2 $ ならば $ C_{\lambda_1} \cap C_{\lambda_2} =\emptyset$ .

◎クラス分けと同値関係。

クラス分けは、「クラス分けの表を書く」ことにより定義することができる。 ただし、次のような難点がある。

  1. 表は一般には無限個の元からなり、書くのが大変である。 (全部を書ききるのは不可能である。)
  2. $ X$ の元 $ x_1,x_2$ が同じクラスかどうか見るのに、いちいち クラス分けの表を見てから考えるのは面倒である。

そこで、クラス分けを定める別の方法を説明しよう。 「 $ x, x' \in X$ が同じクラスである か同じクラスでないかのみを判定するマシン」が与えられているところを 想像すると良い。

定義 12.3   $ X$ の2つの元 $ x,y$ にたいして、$ x \sim y$ か、そうでない( $ x\not\sim y$ ) か がきちんと定まっていて、次の性質を持つとき、$ \sim $ のことを $ X$ 上の同値関係という。
  1. $ \forall x \in X \forall y \in X \forall z \in X$ (「$ x \sim y$ and $ y \sim z $$ \implies$ $ x \sim z$ ).
  2. $ \forall x \in X$ ($ x \sim x$ ).
  3. $ \forall x \in X \forall y \in X $ ($ x \sim y$ $ \implies$ $ y \sim x$ ).

「同値関係」と、論理で言うところの「同値」とは (遠縁の親戚ぐらいにはあたるが)、別物である。よく区別すること。

問題 12.3   $ X$ のクラス分け $ \{C_\lambda \}_{\lambda \in \Lambda}$ が与えられたとき、 $ x \sim x'$ であることを

$\displaystyle \exists \lambda ( x\in C_\lambda$    and $\displaystyle x' \in C_\lambda)
$

か否かで判定すれば、この $ \sim $ は同値関係であることを示しなさい。

問題 12.4   $ X$ に同値関係 $ \sim $ が与えられているとき、 $ x \in X$ に対して、

$\displaystyle C_x= \{ x' \in X ; x'\sim x\}
$

とおくとき、次のことを示しなさい。
  1. $ x \in C_x $ . とくに、 $ \displaystyle \bigcup_{x \in X } C_x =X$ .
  2. $ x' \in C_x $ $ \implies$ $ x \in C_{x'}$ .
  3. % latex2html id marker 1290
$ C_x \cap C_{x'} \neq \emptyset  {\Leftrightarrow} x \sim x'  {\Leftrightarrow}\
C_x = C_{x'} $ .

先ほどと同様に、$ C_x$ のなかから重複するものを省くことにより、 $ X$ のクラス分けを得ることができる。 容易に分かるように、上記2問題の操作は互いに逆になっている。 すなわち、クラス分けを与えることとと同値関係を与えることは 本質的に同じ事である。

問題 12.5   写像 $ f: X\to Y$ が与えられているとき、 $ x \sim_f x'$ か否かの判定を $ f(x) = f(x')$ か否かでするとき、 すなわち、

$\displaystyle x \sim_f x'  {\Leftrightarrow} f(x) = f(x')
$

と定めるとき、$ \sim_f $$ X$ の同値関係であることを 定義に従って示しなさい。

「ホテルヒルベルト」的な表現をしてみよう。 写像 $ f$ により、$ X$ のそれぞれの ヒトはホテル $ Y$ のある部屋に入る。 $ x_1\sim_f x_2$ とは、 $ x_1$ さんと $ x_2$ さんが同じ部屋に泊まることを意味する。 入る部屋によって $ X$ のクラス分けが行われるというわけである。

問題 12.6   $ f: {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\to {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$$ f(n)=n^2$ で定義するとき、
  1. $ 1 \sim_f n$ となるような $ n\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ をすべて求めなさい。
  2. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$$ \sim_f $ に関するクラス分けの表を書きなさい。

問題 12.7   $ f:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y) \mapsto x \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対して、
  1. $ (1,0) \sim_f (1,5)$ であることを示しなさい。
  2. $ (1,0) \not\sim_f (2,5)$ であることを示しなさい。
  3. $ (1,0) \sim_f (a,b)$ となるような $ (a,b)\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ をすべて求めなさい。

問題 12.8   $ f:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2 \ni (x,y) \mapsto x^2+y^2 \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対して、
  1. $ (1,0) \sim_f (0,-1)$ であることを示しなさい。
  2. $ (1,0) \not\sim_f (2,5)$ であることを示しなさい。
  3. $ (1,0) \sim_f (a,b)$ となるような $ (a,b)\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ をすべて求めなさい。


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2011-07-06