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論理と集合要約 No.14

第14回目の主題 : \fbox{商集合の記述}

問題 14.1 (再)   $ f:$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \ni t \mapsto (\cos(t),\sin(t)) \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ に対して、
  1. $ 0 \sim_f 2 \pi$ であることを示しなさい。
  2. $ 0 \not\sim_f \pi$ であることを示しなさい。
  3. $ 0 \sim_f a$ となるような $ a\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ をすべて求めなさい。
  4. $ a \sim_f b$ となるための $ a,b\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ の条件は なんだろうか。

問題 14.2 (再)   $ X=$(平仮名の全体のなす集合) , $ y=$(アルファベット小文字全体のなす集合) , $ f: X\to Y$$ x\in X$ に対して、$ x$ を ローマ字小文字表記(ヘボン式)した時の最後の文字に写すことにより定める。 このとき、

  1. あなたの自由に選んだ平仮名5文字 $ x_1,x_2,x_3,x_4,x_5$ について、 $ f(x_1),f(x_2),f(x_3),f(x_4),f(x_5)$ を求めなさい。
  2. 「あ $ \sim_f $ た」 であることを示しなさい。
  3. 「い $ \not\sim_f $ た」 であることを示しなさい。
  4. $ \sim_f $ に関して同じクラスであるための条件を簡潔に述べなさい。
  5. 商集合 $ X/\sim_f$ の元の個数 $ \char93 (X/\sim_f)$ はいくつか。

問題 14.3 (再)   $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}_{>0}$ , $ Y=\{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9\}$ とし、 $ f: X\to Y$ を、 $ f(x)=$($x$ を10で割った余り) で定義する。 このとき、
  1. あなたの自由に選んだ正の整数 $ x_1,x_2,x_3,x_4,x_5$ について、 $ f(x_1),f(x_2),f(x_3),f(x_4),f(x_5)$ を求めなさい。
  2. $ 75 \sim_f 55 $ であることを示しなさい。
  3. $ 85 \not \sim_f 1018$ であることを示しなさい。
  4. $ \sim_f $ に関して同じクラスであるための条件を 10進数による表記をもちいて簡潔に述べなさい。
  5. $ x \sim_f y$ $ x-y \in 10 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ は同値であることを示しなさい。
  6. 商集合 $ X/\sim_f$ の元の個数 $ \char93 (X/\sim_f)$ はいくつか。

写像が与えられていなくても、同値関係を与えることはできる。

$ X$ に同値関係 $ \sim$ があたえられているとき、$ X\sim$ における $ x\in X$ のクラスを $ [x]$ だとか、$ \bar x$ で表現することが多い。

問題 14.4   $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の同値関係を

$\displaystyle n_1\sim n_2  {\Leftrightarrow} n_1 -n_2 \in 11{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

で定義する。このとき、
  1. $ \sim$ は実際に同値関係であることを確認せよ。
  2. $ n$ のクラスを $ [n]$ と書くとき、$ [0]=[121]$ であることを示しなさい。
  3. % latex2html id marker 1276
$ [3]\neq [7]$ であることを示しなさい。
  4. $ 7$ と同じクラスになる整数を $ 5$ 個挙げなさい。

\fbox{商集合からの写像}

集合 $ X$ の商集合 $ X/\sim$ から 別の集合 $ Y$ への写像 $ f:(X/\sim) \to Y$ を定義することを考えてみよう。 各クラス $ C$ がどこに行くかを決めることになる。 よくあるのは、$ C$代表をひとつ取ってきて、それの行き先を きめるやり方である。2つのケースがある。

  1. 各クラスから卓越した代表をひとつ選んできて、それに応じた行き先を決める。 (「貴族主義的」)
  2. 同じクラスの元ならばどの元を代表にしても全く同じになるように行き先を選ぶ。 (「民主主義的」)

数学では、民主主義的な場合を考える必要性がよく起こる。 そこでこれについて説明しよう。

命題 14.1   $ X$ に同値関係 $ \sim$ が定まっているとし、$ x\in X$ のクラスを $ [x]$ で 表すことにする。このとき、$ X$ から $ Y$ への写像 $ g$

% latex2html id marker 1314
$\displaystyle \forall x_1\in X \forall x_2 \in X \quad (x_1 \sim x_2 \implies g(x_1)=g(x_2))$ (◎)

を満たせば、新たな写像 $ f:(X/\sim) \to Y$

$\displaystyle f([x])=g(x)
$

で定義することができる。

条件(◎)をみたすとき、 $ f:(X/\sim)\ni [x]\mapsto g(x)\in Y$代表元の取り方によらずにうまく定義されるという。

「うまく定義される」という語句は文字通り定義が正しく行われている ことを述べている言葉であるから、 この場合のみではなくていろいろな場面で出現しうる。

問題 14.5   $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ に、同値関係 $ \sim$

$\displaystyle a_1 \sim a_2 {\Leftrightarrow}a_1 -a_2 \in 10 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

で定義し、この同値関係に関する $ n$ のクラスを $ [n]$ で書き表すことにする。 このとき、
  1. $ (X/\sim) \ni [n] \mapsto (-1)^n \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ はうまく定義されることを示しなさい。
  2. $ (X/\sim) \ni [n] \mapsto n \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ はうまく定義されないことを示しなさい。

上の(2)では、ハッキリ言えば定義が間違っているわけだが、 「貴族主義的な」アプローチをとってこれを修正することにより定義を 正しいものに直すことは可能である。 例えば、$ (X/\sim)$ の任意の元 $ C$ にたいして、$ C$ の「代表」$ n_C$ として、 「$ C$ の元の中で、非負で最小のもの」をとることにする(定義を改善する)と、

$\displaystyle (X/\sim) \ni C \mapsto n_C \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

はうまく定義された写像である。 もちろんこの場合は「代表元のとり方によらない」という語句は通用しない。 むしろ代表元をシッカリ選んでいるのである。

問題 14.6   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ の同値関係 $ \propto$

$\displaystyle (x,y)\propto (x',y') {\Leftrightarrow} (\exists \lambda >0 ((x,y)=\lambda (x',y')))
$

で定義する。このとき、
  1. $ (6,10)\propto ( 3,5)$ であることを示しなさい。
  2. $ (3,5)\propto ( 6,10)$ であることを示しなさい。
  3. $ (3,5)\not\propto ( 6,7)$ であることを示しなさい。
  4. $ \propto$ は実際に $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ の同値関係であることを示しなさい。
  5. $ (0,0)$ とこの同値関係で同値なのは $ (0,0)$ 自身のみであること を示しなさい。 (とくに $ \propto$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2\setminus\{(0,0)\}$ の同値関係を与えることがわかる。)
  6. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2\setminus\{(0,0)\}$ の元 $ (x,y)$ にたいし、その $ X/\propto $ でのクラスを $ [x,y]$ と書くと、

    % latex2html id marker 1395
$\displaystyle f_{\ref{q:proj}}:(X/\propto) \ni [x,y]
\mapsto (\frac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}, \frac{y}{\sqrt{x^2+y^2}})
\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ^2
$

    はうまく定義されることを示しなさい。

実は上の問題の $ (X/\propto) $ % latex2html id marker 1401
$ f_{\ref{q:proj}}$ により 単位円周 $ S^1=\{(x,y)\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2; x^2+y^2=1\}$ と同一視できることが分かる。

問題 14.7   $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2\setminus \{0,0\}$ の同値関係 $ \sim$

$\displaystyle (x,y)\sim (x',y') {\Leftrightarrow} (\exists \lambda \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ((x,y)=\lambda (x',y')))
$

で定義する。このとき、 $ X$ の元 $ (x,y)$ にたいし、その $ X/\sim$ でのクラスを $ [x:y]$ と書くと、

% latex2html id marker 1430
$\displaystyle f_{\ref{q:baikaku}}
:(X/\sim) \ni [x:y] \mapsto (\frac{x^2-y^2}{x^2+y^2}, \frac{2 x y}{x^2+y^2})
\in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ^2
$

はうまく定義されることを示しなさい。 さらに % latex2html id marker 1434
$ f_{\ref{q:baikaku}}([\cos(\theta):\sin(\theta)])$ を求めなさい。

% latex2html id marker 1436
$ f_{\ref{q:baikaku}}$$ (X/\sim)$$ S^1$ との同一視を与え、 $ S^1 \hookrightarrow X \to (X/\sim) \cong S^1$ は三角関数の倍角の公式に 対応する。 逆に言うと、倍角の公式を 知っていると % latex2html id marker 1444
$ f_{\ref{q:baikaku}}$ の構成を思いつくことができる。


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2011-07-20