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代数学 IB No.5要約

\fbox{今日のテーマ} 《剰余環、素イデアル、極大イデアル》

前回までに、環 $ R$ の、そのイデアル $ I$ による剰余環について解説した。

$\displaystyle \bar{x}=\bar{y} {\Leftrightarrow}x-y \in I
$

なる判定法により $ R$ にクラス分けが入ること、$ R/I$ に加法、乗法が 代表元のとり方によらずに定まることがポイントであった。 たとえば $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/11 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ において、

$\displaystyle \overline{153}\times \overline{493}
$

を計算するのに、 $ \overline{153\times 493}$ を計算してもよいが、 $ \overline{153}=\overline{-1}, \overline{493}=\overline{-2}$ と代表元を取り換えてから $ \overline{-1}\times \overline{-2} $ とやっても良いわけである。

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可換環 $ R$ と、$ R$ の部分集合 $ S$ について、 $ S$ を含む $ R$ のイデアルのうち最小のものを、$ S$ で生成される $ R$ のイデアル といい、$ (S)$ と表すのであった。 $ S$ が有限集合の場合には、 $ (\{a_1,a_2,\dots,a_n\})$ のことを普通 単に $ (a_1,a_2,\dots,a_n)$ と書く。

補題 5.1   可換環 $ R$ の有限部分集合 $ T=\{a_1,a_2,\dots,a_n\}$ に対して、

$\displaystyle (T)$ $\displaystyle =R a_1+R a_2+R a_3+\dots+R a_n$    
  $\displaystyle (=\{\sum_{j=1}^n c_j a_j ; c_j \in R\})$    

が成り立つ。

定義 5.1   可換環 $ R$ の元 $ x$$ R$零因子であるとは、 $ xy=0$ かつ % latex2html id marker 1113
$ y\neq 0$ をみたす $ R$ の元 $ y$ が存在するときに言う。

定義 5.2   可換環 $ R$ があたえられたとする。
  1. $ R$ に 0 以外の零因子がないなら、 $ R$整域であるという。
  2. $ R$ の 0 以外の元が $ R$ で可逆であるとき、$ R$であるという。

もちろん、体は必ず整域である。

定義 5.3   可換環 $ R$ のイデアル $ I$ (% latex2html id marker 1147
$ R\neq I$ )について、
  1. $ R/I$ が整域であるとき、$ I$$ R$ の素イデアルであるという。
  2. $ R/I$ が体であるとき、$ I$$ R$ の極大イデアルであるという。

これらの名前の由来はもっとあとのほうで述べる。 さしあたっては、次の例が重要である。

例 5.1  
  1. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアル $ \{0\}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の素イデアルであるが、 極大イデアルではない。
  2. 素数 $ p$ があたえられたとき、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアル $ p {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の極大イデアルである。
  3. 正の整数 $ n$ が素数でないとき、 $ n {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ のイデアルではあるが、 素イデアルではない。

定義 5.4   素数 $ p$ が与えられたとき、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ は(上の例に述べたように)元の数が $ p$ の体である。 この体を $ {\mathbb{F}}_p$ と書く。

整域でない環では、今までの「常識」が通用しないことがある:

補題 5.2   $ R$ と、その上の一変数多項式 $ f(X)$ が与えられているとする。 $ d=\deg(f)$ ($ f$ の次数)とおくとき、
  1. $ R$ が整域ならば、 $ f(r)=0$ をみたす $ R$ の元 $ r$$ d$ 個以下である。
  2. $ R$ が整域でなければ、 $ f(r)=0$ をみたす $ R$ の元 $ r$$ d$ 個以上存在する場合もある。

(2)の例:

  1. $ R={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ f(X)=3 X$ は一次式だが、$ 0,2,4$ のどれを代入しても 0 である。
  2. $ R={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ f(X)=(X-1)(X-2)$ は二次式だが、$ 1,2,4,5$ のどれを代入しても 0 である。

※レポート問題

(期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
$ {\mathbb{F}}_{13}={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/13{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の、0 以外の各元について、その逆元をもとめて、 下の表を完成させなさい。

$ x$ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
$ x^{-1}$ 1 7         2          


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2011-11-04