代数学IB要約 No.15

例題 15.1   環としての同型 $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]/(X^2-2 X -4) \cong$   $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[\sqrt{5}]$ が存在することを示しなさい。

この問題を理解するためのポイント:

• $(X^2-2 X-4)$ とは、$X^2-2 X-4$ で生成される $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]$ のイデアル、 すなわち $X^2-2 X-4$ を含む $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]$ のイデアルのうち最小のものでした。 以下このイデアルを $I$ と書きましょう。
• $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]/ I$ とは、 $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]$ の剰余環であって、それは $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]$ に 同値関係(クラス分け)を
  $$p\sim q \quad {\Leftrightarrow}\quad p-q \in I$$
  で定めたクラスの全体でした。剰余環は環の構造を持つのでした。
• $X$ の $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[X]/ I$ におけるクラスを $a$ と書くことにすると、 剰余環の定義により、 $a^2-2 a -4=0$ つまり、$a$ は $X^2-2 X-4$ の根の役割をします。
• $X^2-2 X-4$ の根は、 $1\pm\sqrt{5}$ .
• $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$$[\sqrt{5}]$ とは、 $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$ と $\sqrt{5}$ を含む最小の環をさすのでした。

この問題を解くためのポイント:

• 環の準同型定理を使用する、その論理的な大枠がわかっているか否か。
• どのような環準同型 $\varphi$ を使用するか。
• $\varphi$ の像は何か。
• 核が $(X^2-2 X-4)$ と等しいことを示せるか、とくに、
  • 論理的な枠組みがわかっているか否か。(``$\subset$ '' と ``$\supset$ '')
  • 多項式 $X^2-2 X-4$ が $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上既約であることを証明できるか。
  • 多項式 $X^2-2 X-4$ が $\mbox{${\mathbb{Q}}$}$ 上既約であることをうまく使用できるか。

例題 15.2   $12345$ で割ると $3$ あまり、$11111$ で割ると $4$ 余る整数をすべて求めよ。

この問題を理解するためのポイント:

• 整数 $a$ と $b$ が互いに素ならばユークリッドの互除法により
  $$a l + bm =1$$
  を満たす整数 $l,m$ が存在することがわかり、具体的に求めることも できるのでした。
• ユークリッドの互除法は、素因数分解に関する諸知識よりも 単純で、基本的であることに注意します。
• 上記 $l,m$ を用いると、$x$ が $a$ で割り切れ、 $b$ でも割り切れるならば、 $x$ は $ab$ で割り切れる。 という事も証明できます。

この問題を解くためのポイント:

• ユークリッドの互除法により、関係式 $-2224 \cdot 12345 + 2471 \cdot 11111= 1$ を 導けるか。
• この関係式から、求める解のうち一つを得ることが出来るか。
• 解の全部を挙げることが出来るか否か。 もちろん、もれなく数え上げていることを 論理的に証明できなければならない。