next up previous
Next: About this document ...

線形代数学概論 A No.3要約

\fbox{今日のテーマ} ベクトルの一次独立性(続)。一次写像。

ベクトル $ \mathbf v_1,\mathbf v_2,\dots, \mathbf v_t$ は、 その自明でない線形結合

% latex2html id marker 952
$\displaystyle c_1 \mathbf v_1+c_2 \mathbf v_2+\dots+c_t \mathbf v_t
\qquad(c_1,c_2,\dots, c_t \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 954
$\displaystyle , (c_1,c_2,\dots, c_t)\neq (0,0,\dots, 0)).
$

$ \mathbf 0$ に等しくなりうるとき、線形従属、 そうでないとき、線形独立であるというのでした。 線形独立性は、和とスカラー倍という線形代数らしい 言葉で語ることができる一方、それは成分で書くと連立一次方程式と 関連しているのでした。

&dotfill#dotfill;

例 3.1  

$\displaystyle \mathbf v_1=
\begin{pmatrix}
1 \\
2 \\
\end{pmatrix},\mathbf v_...
... \\
1 \\
\end{pmatrix},\mathbf v_3=
\begin{pmatrix}
3 \\
4 \\
\end{pmatrix}$

とおくと、 $ \mathbf v_1,\mathbf v_2,\mathbf v_3$ は一次従属である。 実際、

$\displaystyle 3 \mathbf v_1 -2 \mathbf v_2 - \mathbf v_3 =\mathbf 0
$

だからである。

例 3.2  

$\displaystyle \mathbf v_1=
\begin{pmatrix}
1 \\
2 \\
\end{pmatrix},\mathbf v_...
...\\
4 \\
\end{pmatrix},
\mathbf v_4=
\begin{pmatrix}
5 \\
6 \\
\end{pmatrix}$

とおくと、 $ \mathbf v_1,\mathbf v_2,\mathbf v_3,v_4$ は一次従属である。 実際、

$\displaystyle 3 \mathbf v_1 -2 \mathbf v_2 - \mathbf v_3 =\mathbf 0
$

だからである。(一般に、一次従属なベクトルのあつまりに余分なベクトルを 付け加えてもやはり一次従属である。)

上の例で、 $ \mathbf v_1 \mathbf v_2,\mathbf v_3,\mathbf v_4$ の あいだの線形関係をカンに頼らずに求めるには、連立方程式

\begin{equation*}
\left \{
\begin{aligned}
&\phantom{1}c_1 \phantom{+ 0 c_2}+ 3 c_3 + 5c_4 =0\\
&2 c_1 + c_2 +4 c_3 + 6c_4=0
\end{aligned}\right .
\end{equation*}

を解けば良い。

想像がつくように、二次元ベクトル空間 $ K^2$ の 3個以上のベクトルは必ず 一次従属である。このことは、一般のベクトル空間の「次元」を一次独立性を 用いて定義できる可能性を示している。 実は、ベクトル空間 $ V$ が与えられた時、その中で一次独立なベクトルの 最大数のことを $ V$次元というのである。 &dotfill#dotfill; 数ベクトル空間 $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ と、ほかのベクトル空間を比べたくなる。 あるいは、ベクトル空間同士を比べることもあるだろう。 そのために、次のようなものを使う。

定義 3.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ 上のベクトル空間 $ V,W$ が与えられているとする。$ V$ から $ W$ への 写像 $ f$線形写像であるとは、次のことが成り立つときにいう。

(線形写像 1).
$ f$ は和を保つ。すなわち

% latex2html id marker 1010
$\displaystyle f(\mathbf v_1+ \mathbf v_2)=f(\mathbf v_1) + f(\mathbf v_2)
\qquad (\forall v_1 \in V, \forall v_2 \in V)
$

(線形写像 2).
$ f$ はスカラー倍を保つ。すなわち、

% latex2html id marker 1014
$\displaystyle f(c \mathbf v)= c f(\mathbf v)
\qquad (\forall v \in V, \forall c \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle )
$

「線形」という言葉の由来は次の命題から分かるかもしれない。

定義 3.2 (若干間に合わせ的)  
  1. $ K$ 上の線形空間 $ V$ の二点 $ \mathbf v_1 $ $ \mathbf v_2$ を結ぶ直線とは、$ V$ の部分集合で、

    $\displaystyle \{t \mathbf v_1 + (1-t) \mathbf w; t \in K\}
$

    なる形をしたものである。
  2. $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ 上の線形空間 $ V$ の2つの点 $ \mathbf v_1 $ $ \mathbf v_2$ を 結ぶ線分とは、$ V$ の部分集合で、

    $\displaystyle \{t \mathbf v_1 + (1-t) \mathbf v_2; t \in [0,1]\}
$

    なる形をしたものである。

この定義では「直線」や「線分」として $ \mathbf v_1=\mathbf v_2$ の場合 (本来は「点」と呼ぶべきもの)を含む。そのほうが下の命題の記述が 簡潔になってラクだからだが、使用の場合にはちょっと注意が必要である。

命題 3.1   線形写像 $ f$ について、
  1. $ f$ $ \mathbf v_1,\mathbf v_2$ をとおる直線を $ f(\mathbf v_1),
f(\mathbf (v_2)$ をとおる直線に写す。
  2. 線形写像 $ f$ $ \mathbf v,\mathbf w$ のあいだの線分を $ f(\mathbf v),f(\mathbf w)$ のあいだの線分に写す。

定義 3.3   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ のベクトル

$\displaystyle \mathbf e_1=
\begin{pmatrix}
1 \\
0 \\
0\\
\vdots
\\
0
\end{p...
...
\dots,
\mathbf e_n
\begin{pmatrix}
0 \\
0 \\
0\\
\vdots
\\
1
\end{pmatrix}$

( $ \mathbf e_i$ は第 $ i$ 成分が $ 1$ でその他の成分は 0 で あるようなベクトル)のことを基本ベクトルと呼ぶ

定理 3.2   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ から他のベクトル空間 $ W$ への線形写像 $ f$ は 基本ベクトルの行き先 $ \{f(\mathbf e_1),f(\mathbf e_2),\dots, f(\mathbf e_n)\}$ だけを決めれば定まる。

※レポート問題

問題 3.1   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^3$ への線形写像 $ f$ が与えられていて、

$\displaystyle f(\mathbf e_1)=
\begin{pmatrix}
1\\
2\\
3
\end{pmatrix},
f(\mathbf e_2)=
\begin{pmatrix}
5\\
6\\
7
\end{pmatrix}$

を満足するとする。このとき $ f(-\mathbf e_1 + 5 \mathbf e_2)$ を求めなさい。

問題 3.2 (下で、「図」はおおまかなもので良い。 更に、適当に顔を落書きしても良い。)  
  1. 次の 8つのベクトルを順に線分で結んで図示しなさい。(最後の $ \mathbf e_2$ $ \mathbf e_1$ も結ぶこと。)

      % latex2html id marker 1124
$\displaystyle \mathbf e_1,\quad 3 \mathbf e_1 ,\quad 4 \mathbf e_1 + \mathbf e_2,\quad 4 \mathbf e_1 +4 \mathbf e_2,$    
      % latex2html id marker 1125
$\displaystyle 3 \mathbf e_1 +3 \mathbf e_2,\quad \mathbf e_1 +3 \mathbf e_2,\quad 4 \mathbf e_2 ,\quad \mathbf e_2$    

  2. $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ から $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ への線形写像 $ f$ が与えられていて、

    % latex2html id marker 1135
$\displaystyle f(\mathbf e_1)=\mathbf e_1,\quad f(\mathbf e_2)=\mathbf e_1+ \mathbf e_2
$

    を満たすとするとき、上の図形を $ f$ で 写した先の図を書きなさい。


next up previous
Next: About this document ...
2012-11-16