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1=6

代数学 IA No.6要約

群とは、操作の集まりでした。群をうまく扱うためには、 適当な「同一視」を行うと便利な場合があるのでした。 ルービックキューブがそれなりに汚れてきても面の色の揃い方だけで区別したり、 正 $ n$ 角形の頂点に複数の名前を与えて、 $ [k]_n=[l]_n$$ k-l$$ n$ の倍数の時にする。等です。

\fbox{今日のテーマ} 《同値関係》

$ \bullet$ 《同値関係》と《クラス分け》とは一つの現象を裏と表とから眺めたものである。

定義 6.1 (同値関係の定義)   集合 $ X$ が与えられているとする。 $ X$ に次のような条件を満たす「二項関係」 「$ \sim$ 」 が定まっているとき、「$ \sim$ 」 のことを同値関係と言う。

  1. 任意の $ a,b\in X$ に対して、$ a\sim b$ か、そうでないかがはっきりと決まっている。
  2. $ a,b,c\in X$ が、 $ a \sim b , b\sim c$ を満たせば、 $ a \sim c$ も成り立っている。
  3. 任意の $ a\in X$ に対して、$ a\sim a$ が成り立っている。
  4. $ a,b\in X$ が、$ a\sim b$ を満たせば、$ b\sim a$ も成り立っている。

例 6.1   つぎの例はそれぞれ $ X$ 上の同値関係である。

  1. $ X=\{$平面上の三角形$ \}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a$$ b$ とは合同
  2. $ X=\{$平面上の三角形$ \}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a$$ b$ とは相似
  3. $ X=\{$日本人$ \}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a$$ b$ とは名前が同じ。
  4. $ X=\{$高知大生$ \}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a$$ b$ とは所属する学科が同じ。
  5. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a-b \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ .

例 6.2   次の例は $ X$ 上の同値関係ではない。
  1. $ X=\{$日本人$ \}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a$$ b$ とは友達である。
  2. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ % latex2html id marker 1093
$ a\leq b$ .

集合に同値関係を入れるということは、集合のクラス分けをする事と同じことになる。クラス分けの正確な定義は、次のようになる。

定義 6.2   集合 $ X$ が与えられているとする。 $ X$ のクラス分けが与えられている、というのは、 次のような条件を満たす $ X$ の部分集合の族 $ \{X_{\lambda}\}_{\lambda\in \Lambda}$ が与えられているときに言う。
  1. $ \{X_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$互いに交わらない。 すなわち、 $ \lambda_1,\lambda_2$ が異なる $ \Lambda$ の元ならば、

    $\displaystyle X_{\lambda_1} \cap X_{\lambda_2}=\emptyset
$

    がなりたつ。
  2. $ \{X_\lambda\}_{\lambda\in \Lambda}$ $ X$ 全体を覆いつくす。すなわち、

    $\displaystyle \bigcup_{\lambda\in \Lambda} X_{\lambda}=X
$

    がなりたつ。(各 $ X_\lambda$ のことを「クラス」とか「類」とか呼ぶ。

定理 6.1   集合 $ X$ が与えられているとする。このとき、
  1. $ X$ 上に同値関係 $ \sim$ が与えられると、 $ X$ のクラス分けが、次のようにして定まる。

    $\displaystyle a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $   $ a$$ b$ とは同じクラスに属する$\displaystyle .$ (※)

    $ a$ と同値なものの全体からなる $ X$ の部分集合を $ C(a)$ と書くと、$ X$ のクラス分けは、 $ \{C(a)\}_{a\in X}$ から同じものを省いたものである。

  2. 逆に、$ X$ 上のクラス分けが与えられているとき、$ ($$ )$ によって $ X$ 上に同値関係が定まる。

定義 6.3   集合 $ X$ 上の同値関係 $ \sim$ が与えられているとする。$ X$ のクラスの一つ一つをそれぞれ一つの元とみた集合を、$ X$$ \sim$ による商集合と言い、$ X/\sim$ で表す。 対応 $ x \mapsto [x]$ ($ x$ のクラス) を自然な射影と呼ぶ。

例 6.3  
  1. 正の整数 $ n$ を一つ固定し、 $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a-b \in n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ と定める。 この場合、$ X/\sim$ は前回解説した ``拡張した番号をつけられた頂点の集合" と同一視される。

  2. $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ , $ a \sim b \ {\Leftrightarrow}\ $ $ a-b \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ . この場合、$ X/\sim$ は円周と同一視される。

定理 6.2  
  1. 集合 $ S$ から集合 $ T$ への写像 $ f:S\to T$ が与えられているとする。このとき、

    $\displaystyle x\sim_f y {\Leftrightarrow}f(x)=f(y)
$

    により、同値関係が定まり、$ S/\sim_f$ $ \operatorname{Image}(f)$ と一対一に対応する。
  2. 集合 $ X$ に同値関係 $ \sim$ が定まっているとき、写像 $ \pi: X \to X/\sim$ に対して上の対応で定まる $ X$ 上の同値関係 $ \sim_\pi$ は 元の $ \sim$ と一致する。

レポート問題

(I) 日常生活に現れる簡単な集合 $ X$ とその上の同値関係 $ \sim$ の例をあげ、その例において $ X/\sim$ がどのようなものであるか 述べよ。 (条件の設定の仕方によっては同値関係と呼べるかどうか 怪しいものもある。そのようなものについては、どこが弱点か、 どのようにすれば改善するかも述べること。)


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2012-07-12