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代数学 IA No.8要約

$ G$ の部分群 $ H$ が与えられると、$ G$ 自体のクラス分けが定まるのでした。

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\fbox{今日のテーマ} 《群の、部分群による左剰余類集合は、いつ群になるか。》

群の部分群による剰余集合が、「自然なやり方で」群になるには、 その部分群が正規部分群である事を仮定するのが良い。

定理 8.1   $ G$ を群とし、$ H$ をその部分群とする。このとき、
  1. $ G$ の任意の元 $ g$ に対して、$ g$$ H$ を法とする左剰余類 $ C(g)$

    $\displaystyle gH=\{gh;h\in H\}
$

    と一致する。
  2. $ C(g) \ (=gH)$$ H$ とは元の個数が等しい。
  3. $ G$ の位数 $ \vert G\vert$ が有限ならば、$ G/H$ の元の個数 $ \char93 (G/H)$$ H$ の位数 $ \vert H
\vert$ とはともに有限で、

    $\displaystyle \vert G\vert=\char93 (G/H) \vert H\vert
$

    が成り立つ。

定義 8.1   $ G$ を群、$ K$ をその部分群とする。$ K$$ G$ の正規部分群であるとは、 任意の $ g\in G$ と任意の $ h\in K$ とに対して、

$\displaystyle ghg^{-1}\in K
$

が成り立つときに言う。

例 8.1 (正規部分群の例)  
  1. 可換群の部分群は正規部分群である。特に、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の部分群はすべて正規部分群である。
  2. 有限巡回群 $ C_n$ も可換群であるから、その部分群はすべて正規部分群である。
  3. 二面体群 % latex2html id marker 959
$ \Bbb D_n =\langle a,b; \quad a^n=e,\ b^2=e,\ ab=ba^{-1} \rangle $ の部分群 $ \langle a \rangle $ は正規部分群である。

例 8.2 (正規部分群でない例)  
  1. $ \Bbb D_n$ の部分群 $ \langle b \rangle $$ \Bbb D_n$ の正規部分群ではない。
  2. $ n$ 次対称群 $ \frak S_n$ の部分群 $ \frak S_{n-1}$ $ \frak S_{n-1}$ の 正規部分群ではない。

定理 8.2   $ ($ 重要$ )$ $ G$ を群、$ H$ をその部分群とする。$ G/H$ に次のような乗法を定めて群にしてやりたい。

$\displaystyle \overline{a} \overline{b} =\overline{ab}
$

これが、代表元の取りかたによらずにうまくいって、$ G/H$ が実際に群になるためには、$ H$ が正規部分群である事が必要十分である。

定理 8.3   $ G$ を群、$ N$ をその正規部分群とする。このとき $ G$ の二つの元 $ x,y$ に関する次の二つの条件は同値である。
(1).
ある $ n\in N$ があって、$ xn=y$ が成り立つ。
(2).
ある $ m\in N$ があって、$ mx=y$ が成り立つ。
すなわち、正規部分群でクラスわけする時には、 「左」「右」をあまり気にしなくて良い。

発展

定理 8.4   $ G$ を群とし、その上の同値関係 $ \sim$ が定まっているとする。$ G/\sim$ に 乗法を、

\begin{displaymath}
% latex2html id marker 684\overline{a}\overline{b} =\overl...
... (a,b\in G; \text{$\overline{a}$ 等は $a$ 等のクラスを表す。})
\end{displaymath}

で定めたい。この乗法が代表元の取りかたによらずに定まるならば、

% latex2html id marker 1038
$\displaystyle N=\{x\in G; \quad x \sim e\}
$

$ G$ の正規部分群となり、$ a\sim b$ % latex2html id marker 1044
$ a\equiv b \ ({\operatorname{mod}}N)$ とは同値になる。

※レポート問題

つぎのうち一問を選択して解きなさい。 (期限:次の講義の終了時まで。)

(I).
$ m$ を正の整数とします。二面体群

% latex2html id marker 1048
$\displaystyle \Bbb D_{5m}=\langle a,b; \quad a^{5m}=e, b^2=e, ab=ba^{-1} \rangle
$

の、$ a^5$ で生成された部分群を求めなさい。さらに、これが $ \Bbb D_{5m}$ の正規部分群であるかどうかを調べなさい。

(II).
$ \frak S_3$ の、$ (1\ 2\ 3)$ で生成された部分群をここでは仮に $ A$ と書くことにします。$ A$ は、$ \frak S_3$ の正規部分群であることを示しなさい。さらに、 $ \frak S_3 /A$ はどのような群になるか、かけ算の表をつくって答えなさい。
(III).
《発展》に挙げた定理のうち、$ N$ が正規部分群であると言う部分の証明を書きなさい。 (ヒント:次のステップの各々に説明をつければ良い。どれも「明らか」ではない。(もちろん他のやり方を考えてもよろしい。)


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2012-07-12