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論理と集合要約 No.9

写像を理解するときに、「ホテルヒルベルト」のような解釈もできるのでした。

この解釈では、全射は、「空き室がないこと」に対応し、 単射は、「各部屋個室」(単射でないことは、 相部屋が生じること)に対応するのでした。

全射や単射の存在は、始集合と終集合の元の多さと関係しているのでした。

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第9回目の主題 : \fbox{写像}

定理 9.1 (再)   集合 $ X$ , $ Y$ が与えられているとする。$ X$ のおのおのの元 $ x$ に対して $ Y$ のコピー $ Y_x$ を用意すれば、 $ \{ Y_x\}_{x \in X}$ はひとつの集合の族である。 $ X$ から $ Y$ への写像 $ f$

$\displaystyle \prod_{x \in X} Y_x
$

の元 $ (f(x))_{x \in X}$ と同一視される。すなわち、 直積集合 $ \prod_{x \in X} Y_x $$ X$ から $ Y$ への写像全体の集合と同一視できる。

定義 9.2 (再)   $ X$ から $ Y$ への写像の全体のなす集合を $ Y^X$ と書く。これはまた

$\displaystyle \operatorname{Hom}_{\text{set}} (X,Y)
$

と書く場合もある。

公理 9.3 (選択公理)   空でない集合ばかリからなる集合族 $ \{X_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$ に たいして、 $ \prod_\lambda X_\lambda$ は空ではない。 言い換えると、無限個の空でない集合たち $ X_\lambda$ から、いっせいに一つづつ 元を取り出すことが可能である。

◎写像の合成

定義 9.4   写像 $ f: X\to Y $ $ g: Y \to Z$ が与えられているとする。 このとき、$ f,g$合成写像 $ g\circ f: X\to Z$

$\displaystyle (g\circ f) (x)= g(f(x))
$

で定義する。

次の命題は簡単ではあるが有用である。実用上はこのような命題があることだけ 記憶しておいて、その都度頭の中で確かめるのがいいだろう。

命題 9.5   写像 $ f: X\to Y $ $ g: Y \to Z$ が与えられているとする。 このとき、次がなりたつ。
  1. $ f,g$ がともに単射ならば $ g \circ f$ も単射である。
  2. $ f,g$ がともに全射ならば $ g \circ f$ も全射である。
  3. $ f,g$ がともに全単射ならば $ g \circ f$ も全単射である。
  4. $ g \circ f$ が単射ならば、 $ f$ は単射である。
  5. $ g \circ f$ が全射ならば、 $ g$ は全射である。

定義 9.6   集合 $ X$ に対して、写像 $ X \ni x \mapsto x \in X$$ X$恒等写像といい、 $ {\operatorname{id}}_X$ で表す。

命題 9.7   集合 $ X,Y$ と、写像 $ f: X\to Y $ および $ g: Y\to X$ が与えられているとする。 このとき次のことはすべて同値である。
  1. $ f$ は全単射であって、$ g$$ f$ の逆写像である。
  2. $ g\circ f={\operatorname{id}}_X$ かつ $ f\circ g={\operatorname{id}}_Y$ .
  3. $ f$ は全射であって、 $ g\circ f={\operatorname{id}}_X$ .
  4. $ f$ は単射であって、 $ f\circ g={\operatorname{id}}_Y$ .

上の命題も、 $ (1) {\Leftrightarrow}(2)$ 以外はその都度確認すれば良い。 $ (1) {\Leftrightarrow}(2)$ は特に重要である。

問題 9.1   $ X=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1163
$ _{\geq 0}$ , $ Y=$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$ とおく。 写像 $ f :X \ni x \to x \in Y$ $ g :Y \ni x \to \vert x\vert \in X$ にたいして、

  1. $ g\circ f={\operatorname{id}}_X$ であることを示しなさい。
  2. % latex2html id marker 1174
$ f \circ g \neq {\operatorname{id}}_Y$ であることを示しなさい。
  3. $ f$ , $ g$ はそれぞれ全射、単射、全単射だろうか。

定義 9.8   実数 $ x$ に対して、$ x$ を超えないような整数のうち最大のものを $ \lfloor x \rfloor$ と書く(floor of $ x$ と読む。)。 例えば、

% latex2html id marker 1193
$\displaystyle \lfloor 3.14 \rfloor =3, \quad
\lfloor -3.14 \rfloor= -4, \quad
$

である。また、任意の整数 $ n$ に対して、 $ \lfloor n \rfloor = n$ である。

一般に、実数 $ x$ と整数 $ n$ に対して、

% latex2html id marker 1203
$\displaystyle \lfloor x \rfloor = n \ {\Leftrightarrow}\ n \leq x < n+1
$

にも注意しておこう。昔は $ \lfloor x \rfloor$ のことを $ [x]$ で 書いて、「ガウス記号」と呼ぶことが多かったが、 今や floor のほうが通りが良くなりつつあるようである。

問題 9.2   $ X={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ Y={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ とおく。 写像 $ f :X \ni x \to 2 x \in Y$ $ g :Y \ni x \to \lfloor x/2 \rfloor \in X$ にたいして、

  1. $ g\circ f={\operatorname{id}}_X$ であることを示しなさい。
  2. % latex2html id marker 1224
$ f \circ g \neq {\operatorname{id}}_Y$ であることを示しなさい。
  3. $ f$ , $ g$ はそれぞれ全射、単射、全単射だろうか。

問題 9.3   $ X={\mathbb{C}}[t] $ (複素数係数の $ t$ を変数とする多項式の全体のなす集合), $ Y={\mathbb{C}}[t]$ とおく。 写像 $ f :X \ni p \to \int_0^t p dt \in Y$ $ g :Y \ni p \mapsto \frac{d}{d t} p \in X$ にたいして、

  1. $ g\circ f={\operatorname{id}}_X$ であることを示しなさい。
  2. % latex2html id marker 1247
$ f \circ g \neq {\operatorname{id}}_Y$ であることを示しなさい。
  3. $ f$ , $ g$ はそれぞれ全射、単射、全単射だろうか。


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2012-07-12