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代数学II要約 No.14

今日のテーマ: \fbox{群の表現と加群の理論}

◎完全系列

定義 14.1   環 $ A$ と、 $ A$ -加群 $ L,M,N$ が与えられているとする。 このとき、
  1. $ A$ -加群の準同型 $ f,g$ を並べた「系列」

    $\displaystyle L\overset{f}{\to} M \overset{g}{\to} N
$

    完全系列(exact sequence)であるとは、 $ \operatorname{Image}(f)=\operatorname{Ker}(g)$ である時にいう。
  2. もっと長い $ A$ -加群の「系列」

    $\displaystyle \to M_{i}\overset{f_i}{\to}
M_{i+1}\overset{f_{i+1}}{\to}
M_{i+2}\to
$

    についても、これが完全系列(exact sequence)であるということを $ \operatorname{Image}(f_i)=\operatorname{Ker}(f_{i+1})$ が成り立つことで定義する。

補題 14.2   環 $ A$ 上の任意の $ A$ -加群 $ L,M$ とその間の準同型 $ f$ にたいし、
  1. $ 0\to L \overset{f}{\to} M$ が完全 $ {\Leftrightarrow}$ $ f$ が単射。
  2. $ L \overset{f}{\to} M \to 0$ が完全 $ {\Leftrightarrow}$ $ f$ が全射。

定義 14.3  

$\displaystyle 0\to L \to M \to N \to 0
$

の形の完全列を短完全列とよぶ。

補題 14.4   $ A$ -加群の 短完全列

$\displaystyle 0\to L \overset{f}{\to} M \overset{g}{\to} N \to 0$ (*)

について、次は同値である。
  1. $ A$ -準同型写像 $ \nu:N\to M $ で、 $ g\circ \nu={\operatorname{id}}$ を 満たすものが存在する。 (このような $ \nu$ のことを $ g$section と呼ぶ。
  2. $ M$ の部分加群 $ K$ $ M=f(L) \oplus K$ を満たすものが存在する。

  3. $ A$ -準同型写像 $ \mu:M\to L $ で、 $ \mu \circ f={\operatorname{id}}$ を 満たすものが存在する。 (このような $ \mu$ のことを $ f$section と呼ぶ。

定義 14.5   上の補題の仮定のもとで、(1)-(3)のうちひとつ(したがって、全部)の条件が 成り立つとき、(*) は分裂する(split) という。

線形代数学の知識ですぐわかるように、体上の 短完全列は必ず分解する。 他方、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ -加群の完全列

$\displaystyle 0\to {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\overset{\times 3}{\to} {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\to {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/3{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\to 0
$

は分裂しない。(体以外の)大抵の環 $ A$ に対しては、このように分裂しない短完全列が 存在するのだが、下記のような例外もある。

定理 14.6 (マシュケの定理(を加群の言葉で述べたもの))   体 $ k$ と有限群 $ G$ が与えられていて、$ G$ の位数 $ g$$ k$ の標数 $ p$ とは 互いに素であると仮定する。このとき、$ k[G]$ -加群の短完全列($ A=k[G]$ のときの (*)) は必ず分裂する。

証明は $ g$$ k$ -加群としての section を $ G$ の作用でもって 「 平均を取る」ことにより得られる。

問題 14.1   有限群 $ G$ にたいして、 $ \Psi:{\mathbb{C}}[G]\to {\mathbb{C}}$ を、 $ \Psi(\sum_g a_g\cdot g)=\sum_g a_g)$ で定める。
  1. $ \Psi$ $ {\mathbb{C}}[G]$ -加群の準同型であることを示しなさい。ただし、 $ {\mathbb{C}}$ には $ G$ は自明に作用する (すなわち、 % latex2html id marker 1100
$ g.c=c \qquad \forall g\in G \forall c\in {\mathbb{C}})$ ) ものとする。
  2. $ \Psi$ の核 を $ K$ と置く。このとき、 $ {\mathbb{C}}[G]$ -加群の短完全列

    $\displaystyle 0\to K {\to} {\mathbb{C}}[G] \overset{\Psi}{\to} {\mathbb{C}}\to 0$ (**)

    の分裂を与えるような $ \Psi$ の section $ \sigma: {\mathbb{C}}\to {\mathbb{C}}[G]$ をひとつ与えよ。 (わかりにくい場合には $ G=C_3$ の場合のみに解答を書いても良い)


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2013-07-17