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比喩的表現を用いた証明。

$ A$ を「妖精国」のように考える。 $ A$ の元を(妖精だが)「人」と呼び $ g(x)=y$ のとき、$ y$$ x$ の子であると言うことにする。 $ x$$ y$ の親であるという表現も使う。

$ g$ が写像であることは、つぎのように翻訳される

(妖精1).
$ A$ の任意の人は子をただひとり必ずもつ。

$ g$ が単射であることは、つぎのように翻訳される。

(妖精2).
$ A$ の各人の親は、いるとすればただ一人である。

妖精と言うより、ナメック星人のイメージだな。

$ x$ の子や、子の子、その子、$ \dots$$ x$ の子孫と呼ぶ。

$ x$ の親や、親の親、その親、$ \dots$$ x$ の先祖と呼ぶ。

$ x$ の先祖と、子孫を合わせたものを $ x$ の親戚と呼ぼう。

妖精たちには、へそを持つものとないものがおり、へそを持つ妖精の全体の 集合が $ B$ であると考えよう。 仮定により,

(妖精3).
親を持つ人は へそを持つ。

毎年正月になると、妖精国 $ A$ の各人は「お守り」を作り、 次の要領で $ A$ の人にわたす。

(正月1).
「お守り」をつくるのは、妖精国 $ A$ の人全員である。
(正月2).
各人が、へそのある人一人に「お守り」を渡す。
(正月3).
渡す相手は(自分がへそを持てば)自分自身でも良い。
(正月4).
へそのある人は全員「お守り」を受け取るようにする。
(正月5).
「お守り」を2つ以上受け取る人はいてはいけない。

このような渡しかたが実際に存在するか、それが問題である。$ x$ に対して、 渡す相手を $ f(x)$ と置けば、$ f$$ A$$ B$ の間の全単射を与えることに なるからである。

(答) (といってもこれがただひとつの解というわけではない。)

妖精国 $ A$ の各人 $ x$ は、次のように行動すれば良い。

  1. $ x$ の先祖はすべて親を持つ場合。

    $ x$ の親戚はすべてへそを持つ。 そこでその一族の皆は(もちろん $ x$ も)それぞれ自分自身に「お守り」を渡す。

  2. $ x$ の先祖の中で、親を持たないものが一つでもある場合。

    そのものを $ x$ の一族の最長老とよぶことにする。

    $ x$ の親戚はその最長老の子孫の全体と一致する。 最長老自身はへそを持つことも持たないこともある。

    1. $ x$ の一族の最長老がへそを持つ場合。

      $ x$ を含めてその一族の皆はやはりそれぞれ自分自身に「お守り」を渡す。

    2. $ x$ の一族の最長老がへそを持たない場合。

      $ x$ を含めてその一族のみなはそれぞれ自分の子に「お守り」を渡す。

      *この場合最長老はへそがないから自分で自分にお守りを渡すことが できない。そこで最長老は自分の子にお守りを渡し、以下順繰りに 代々自分の子供にお守りを渡すことにするのである。



2012-06-25