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代数学演習 I 問題 No.8

今回(No.8)は、「環」と言えば単位元を持つ可換環のことを指すことにします。また、「準同型」は単位元を保つものだけを考えることにします。

問題 8.1 (各1)   次の各々の環の同型を準同型定理を用いて証明しなさい。
  1. $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]/(X-6) \cong$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ .
  2. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]/(X+7) \cong {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ .
  3. $ {\mathbb{C}}[X]/(X-\pi) \cong {\mathbb{C}}$ (ただし $ \pi$ は円周率。)
  4. $ {\mathbb{F}}_{11}[X]/(X-4)\cong {\mathbb{F}}_{11}$ .

問題 8.2   一般に、体 $ K$ 上の一次式 $ p(X)=a X +b $ ($ a,b \in K$ , % latex2html id marker 1111
$ a\neq 0$ ) に対して、 $ K[X]/(p(X)) \cong K$ であることを示しなさい。

問題 8.3   前問で、$ K$ が体であるという仮定をやめて $ K$ が一般の可換環であると 仮定した場合には、 $ K[X]/(p(X))$$ K$ と同型とは限らないことを示しなさい。

問題 8.4   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$% latex2html id marker 1134
$ [\sqrt{6}]\cong$   $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]/(X^2-6)$$ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ [X]$ を示しなさい。

問題 8.5   有理数体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ の部分集合 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[1/5]=\{m/5^n; m\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}; n=0,1,2,\dots,)$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ の部分環になることを示しなさい。

問題 8.6  

$\displaystyle (5X-1)$$\displaystyle \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$\displaystyle [X]\cap {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]=(5X-1){\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]
$

を示しなさい。

問題 8.7  

$\displaystyle {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[1/5]\cong {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]/(5X-1){\mbox{${\mathbb{Z}}$}}[X]
$

を示しなさい。

問題 8.8   環 $ R$ のイデアル $ I$ と変数 $ X$ について、次の同型を示しなさい。

$\displaystyle R[X]/IR[X] \cong (R/I)[X]
$

問題 8.9   環 $ S$ の部分環 $ R$$ S$ のイデアル $ I$ について、

$\displaystyle R+I=\{r+a;r\in R,a \in I\}
$

は、$ S$ の部分環となることを示しなさい。

問題 8.10   環 $ S$ の部分環 $ R$$ S$ のイデアル $ I$ について、

% latex2html id marker 1210
$\displaystyle S=R+I, \quad R\cap I=0
$

が成り立てば、 $ S/I\cong R$ となることを示しなさい。

問題 8.11   環準同型 $ f:R\to S$ について、$ J$$ S$ のイデアルであれば、 $ f^{-1}(J)$$ R$ のイデアルとなることを示しなさい。

問題 8.12 (各1)   環準同型 $ f:R\to S$ について、
  1. $ I$$ R$ のイデアルのとき、$ f(I)$$ S$ のイデアルとなりますか?(ならなければ反例を挙げてください。)
  2. $ f$ が全射ならどうですか?

問題 8.13   $ K$ を体とします。このとき同型 $ K[X,Y]/XK[X,Y]\cong K[Y]$ を示しなさい。

問題 8.14   環 $ S$ とその部分環 $ R$ とについて、$ P$$ S$ の素イデアルならば、$ P\cap R$$ R$ の素イデアルであることを示しなさい。「素イデアル」を「極大イデアル」にかえるとどうか?

問題 8.15   環 $ R$ のイデアルに $ I$ について、 $ I\cdot I$$ I^2$ と略記します。$ J$$ R$ のイデアルで、$ I+J=R$ となれば、$ I^2+J^2=R$ となることを示しなさい。

問題 8.16   整域 $ R$ の元 $ a,b$ について、次を示しなさい。
  1. $ a\vert b$ である(すなわち、ある $ c\in R$ があって、 $ b=ac$ と書ける)ことと、 $ aR\subset bR$ とは同値である。
  2. $ a$$ b$ とが同伴である(すなわち、$ a\vert b$ かつ $ b\vert a$ が成り立つ)ことと、 $ aR=bR$ とは同値である。

以下は初等整数論からの補遺です。

問題 8.17   正の整数 $ a,b$ の最大公約数が $ 1$ であるための必要十分条件は、

$\displaystyle a l +b m=1
$

を満たす 整数 $ l,m$ が存在することである。これを示しなさい。

問題 8.18 (この問題に限っては前問が解けている、いないに拘わらず その結果を使ってよい。(いずれにせよ講義でやるから。)   ) 前問を用いて、 $ a,b$ が互いに素ならば、 $ a^2$$ b^2$ も互いに素であることを示しなさい。

問題 8.19   前問を用いて、 $ a,b$ が互いに素ならば、 $ a^2$$ b^2$ も互いに素であることを示しなさい。

問題 8.20   前問をもちいて、 % latex2html id marker 1360
$ \sqrt{6}$ は無理数であることを証明しなさい。ただし、 素因数分解の一意性の知識を用いないで証明すること。

問題 8.21   前問と同じ前提条件で、 一般に、平方数でない(つまり、 $ \{n^2; n\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\}$ の元ではない)整数 $ m$ に たいして、 % latex2html id marker 1371
$ \sqrt{m}$ は無理数であることを証明しなさい。

問題 8.22   整数係数の多項式

% latex2html id marker 1378
$\displaystyle p(X)=\sum_{j=0}^n a_j X^j \qquad(a_j\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}} (j=0,1,2,\dots,n),\quad a_n \neq 0)
$

について、 $ p$ の、 0 でない有理根 $ r$ があったとする。 すなわち、$ p(r)=0$ とする。 $ r$ を既約分数 $ \frac{l}{m}$ と書いたとき、
  1. $ r$ の分子 $ l$$ p$ の定数項 $ a_0$ の約数であることを示しなさい。
  2. $ r$ の分母 $ m$$ p$ の最高次の係数 $ a_n$ の約数であることを示しなさい。


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2014-12-19