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論理と集合要約 No.6

第6回目の主題 : \fbox{集合の演算の例}

集合を扱う際は 個々の元を取り出し、 諸性質を論理で証明する。

例えば、 $ A=6{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ , $ B=2{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ にたいして、 $ A \subset B$ を示すには、

  1. $ A$ の各元 $ x$ について、
  2. $ x=6 n =2 (3 n)$ であることを示し、
  3. $ x=2(3n)\in B$ と結論する。
というステップを踏むのだった。

同様に、 $ A_2=\{ x\in$$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \vert x>20 \}$ , $ B_2=\{x\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \vert x^4 -7 x -9 >0\}$ に対して、 $ A_2 \subset B_2$ を示すには、

  1. $ A_2$ の各元 $ x$ について、
  2. % latex2html id marker 1054
$\displaystyle x^4-7x-9 \geq x^4 - 10 x^3 -10 x^3 \geq x^3 (x-20) > 0
$

    であることを示し、
  3. $ x\in B_2$ と結論する。
と良い。

問題 6.1   実係数の多項式 $ f(x)=a_n x^n+a_{n-1} x^{n-1}+ \dots +a_1 x + a_0$ が、 $ a_n>0$ を満たすとする。 $ M= \frac{n}{a_n}\max\{\vert a_n\vert,\vert a_{n-1}\vert ,\vert a_{n-2}\vert,\dots, \vert a_0\vert\}$ とおくと、

$\displaystyle \{ x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle \vert x >M \} \subset \{x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle \vert f(x) >0\}
$

が成り立つことを示しなさい。

集合の一般論でも同様。

問題 6.2   集合 $ A,B,C,D$ に対して、

$\displaystyle (A \subset C$$\displaystyle \text { and } B \subset D )\implies A\cup B \subset C \cup D
$

を示しなさい。

問題 6.3   集合 $ X,Y,Z$ に対して、 $ X \subset Y \implies Z \setminus X \supset Z \setminus Y$ を示しなさい。

問題 6.4   集合族 $ \{A_i\}, \{B_i\}$ が与えられた時、包含関係

$\displaystyle (\cup A_i) \setminus (\cup B_i) \subset \cup (A_i \setminus B_i)
$

および

$\displaystyle (\cap A_i) \setminus (\cap B_i) \supset \cap (A_i \setminus B_i)
$

を示しなさい、

&dotfill#dotfill;

$ v=(v_1,v_2,\dots,v_n) \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ にたいし、そのノルムを

% latex2html id marker 1109
$\displaystyle \vert\vert v\vert\vert=\sqrt{v_1^2+v_2^2+ \dots + v_n^2}
$

で定義する。このとき、 $ v=(v_1,v_2,\dots,v_n) \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ , $ w=(w_1,w_2,\dots, w_n)$ にたいして、

% latex2html id marker 1117
$\displaystyle \vert\vert v+w\vert\vert \leq \vert\vert v\vert\vert +\vert\vert w\vert\vert
$

がなりたつ。(三角不等式。)

一般に、 $ a\in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$$ r>0$ に対して、

$\displaystyle B_r(a)=\{ x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$$\displaystyle ^n; \vert\vert x-a\vert\vert< r\}
$

$\displaystyle \bar{B}_r(a)=\{ x \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1131
$\displaystyle ^n; \vert\vert x-a\vert\vert\leq r\}
$

とおく。

$ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の部分集合 $ U$

$\displaystyle \forall x \in U \exists r \in$   $\displaystyle \mbox{${\mathbb{R}}$}$% latex2html id marker 1140
$\displaystyle _{>0} \quad B_r(x) \subset U
$

を満たすとき、(通常位相に関して)開集合であると呼ばれる。 開集合とは、「境界を含まない集合」ということの数学的な表現である。

開集合というものをベースにして、「遠い」「近い」「つながっている」などの 概念を数学的に取り扱えるようにしたものが位相空間論である。 位相空間論は現代数学において大変重要な位置を占めていて、 進んで数学を学びたい人は、例えば微分積分学の学習と並行して学習してみるのも オススメである。

「境界」という言葉自体も数学的に表現できるが、 ここではそこまでは踏み込まないことにする。

問題 6.5   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の開球 $ B_1(0)$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の開集合であることを示しなさい。

問題 6.6   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の閉球 $ \bar{B}_1(0)$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の開集合ではないことを示しなさい。

問題 6.7   $ \{(x,0) ; x \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ \}$ $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^2$ の開集合ではないことを示しなさい。

問題 6.8   任意の $ a,b \in$   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ と任意の正の数 $ r_1,r_2$ にたいして、 $ B_ {r_1}(a)\cap B_{r_2}(b) $ は開集合であることを示しなさい。

問題 6.9  

$\displaystyle \bigcap_{n=1}^\infty B_{1+1/n} (0)=\bar B_1(0)
$

であることを示しなさい。

一般に、開集合の2つの共通部分は開集合だが、 無限個の共通部分は開集合とは限らない。

問題 6.10   $ \mbox{${\mathbb{R}}$}$$ ^n$ の開集合であることは、開球の和集合であることと同値であることを 示しなさい。


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2015-05-28