next up previous
Next: About this document ...

    

代数学演習 IB 問題 No.2

\fbox{環の定義・部分環の定義}

注意 これからは、とくにことわらない限り、単位元をもつ環のみを扱う。「環」といえば、 単位元を持つ環と解釈していただきたい。(単位元の存在がとくに重要な時には、 一応ことわる。)ただし、積が可換であるとはまだ仮定しない。

問題 2.1   単位元 $ 1$ を持つ環 $ R$ の元 $ x,y,z$ にたいして、

  $\displaystyle xy=1$   (すなわち $ y$$ x$ の右逆元である。)    
  $\displaystyle zx=1$   (すなわち $ z$$ x$ の左逆元である。)    

が成り立つとき、$ z=y$ であって、

$\displaystyle xy=yx=1$   (すなわち $y(=z)$ は $x$ の逆元である)

が成り立つことを示しなさい。

定義 2.1   単位元の存在する環 $ R$ において、$ R$ のなかで逆元が存在するような元のことを、 $ R$可逆元とか、単元、あるいは単数といいます。

定義 2.2 (部分環の定義)   $ R$ が単位元をもつ環であるとする。$ R$ の部分集合 $ S$$ R$ の部分環であるとは、$ S$ が次の条件を満たす時にいう。
  1. $ S$$ R$ の足し算、かけ算を流用することにより環になっている。
  2. $ S$$ R$ の単位元を元として持つ。

上の条件のうち、 (1)が本質的部分であり、(2) は冒頭で述べた注意に沿うための 技術的条件である。ただし、(2)をぬかしてしまうと理論は見かけ上かなり違った 形になるので単位元のない環を扱う時(がもしあればその時)には注意が必要である。

問題 2.2 (各1)   次のものは複素数全体のなす環 $ {\mathbb{C}}$ の部分環であるか、理由をつけて答えなさい。
  1. $ 5$ 以外の 整数全体の集合 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\setminus\{5\}$ .
  2. % latex2html id marker 1307
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+2 \sqrt{-1}{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}=\{x+2 \sqrt{-1}y; x,y \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\}$ .
  3. % latex2html id marker 1309
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+\frac{1}{2} \sqrt{-1}{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}=\{x+\frac{1}{2} \sqrt{-1}y; x,y \in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\}$ .
  4. % latex2html id marker 1311
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+\frac{-1+\sqrt{-3}}{2}{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ .
  5. % latex2html id marker 1313
$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+\frac{-1+\sqrt{3}}{2}{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ .

問題 2.3   $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ S$ が、 % latex2html id marker 1324
$ 1,\sqrt{3}+\sqrt{5}$ を元として持っているとします。 この時、 % latex2html id marker 1326
$ 2\sqrt{15},4\sqrt{3},4\sqrt{5}$$ S$ の元であることを示しなさい。

問題 2.4   有理数の全体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分環として含むような $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ R$ (つまり、 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$$ \subset R\subset {\mathbb{C}}$ ) が % latex2html id marker 1344
$ \sqrt{2}+\sqrt{3}$ を元として含むとき、 % latex2html id marker 1346
$ \sqrt{2},\sqrt{3}$$ R$ の元であることを示しなさい。

問題 2.5   有理数の全体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分環として含むような $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ R$ % latex2html id marker 1361
$ \sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{5}$ を元として含むとき、 % latex2html id marker 1363
$ \sqrt{2},\sqrt{3},\sqrt{5}$$ R$ の元であることを示しなさい。

問題 2.6   有理数の全体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分環として含むような $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ R$ % latex2html id marker 1378
$ \sqrt{2}+2\sqrt{5}+3\sqrt{7}$ を元として含むとき、 % latex2html id marker 1380
$ \sqrt{2},\sqrt{5},\sqrt{7}$$ R$ の元であることを示しなさい。

問題 2.7   有理数の全体 $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分環として含むような $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ R$ について、次の二つの条件は同値であることを 示しなさい。
  1. % latex2html id marker 1395
$ \sqrt{3}+\sqrt{7}\in R$ .
  2. % latex2html id marker 1397
$ \sqrt{3}\in R$ かつ % latex2html id marker 1399
$ \sqrt{7}\in R$ .

問題 2.8   前問で、$ R$ $ \mbox{${\mathbb{Q}}$}$ を部分環として含む、という条件を 外しても同様のことが言えるだろうか。 正しいなら証明し、間違っているなら反例を あげなさい。

問題 2.9 (各1)  
  1. % latex2html id marker 1415
$ S={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}...
...hbb{Z}}$}}\sqrt{3}=\{k+l\sqrt{2}+m\sqrt{3}; k,l,m\in {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\} $ $ {\mathbb{C}}$ の部分環だろうか?
  2. 上の $ S$ を含む、 $ {\mathbb{C}}$ の部分環で、最小のもの(つまり、$ S$ で 生成される $ {\mathbb{C}}$ の部分環)はなにか?

問題 2.10 (各1)  

% latex2html id marker 1432
$\displaystyle S={\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+2 \sqrt{2}...
...+2\sqrt{6} {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}+ (\sqrt{2}+\sqrt{3}){\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

とおく。このとき、
  1. $ S$ $ {\mathbb{C}}$ の部分環であるだろうか。
  2. % latex2html id marker 1438
$ S \not \ni \sqrt{2}$ をしめしなさい。
  3. % latex2html id marker 1440
$ \sqrt{2}+\sqrt{3} $ を元として含むような $ {\mathbb{C}}$ の部分環 $ R$ は かならず $ S$ を部分集合として含むことを示しなさい。

問題 2.11 (各1)  
  1. $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の可逆元を全て求めよ。
  2. 一般の環 $ R$ について、 $ R$ の可逆元の全体は 群をなすことを証明せよ。

次の問題は上級者用。従って細かい説明はしない。 解こうと思うものは詳細は自分で考えること。 以下、 $ \mathbb{N}=\{0,1,2,3,\dots\}$ という記号を用いる。

問題 2.12 (各1)   環 $ R$ が与えられているとする。 $ R$ の元の列の全体

$\displaystyle S(R)=\{(a_0,a_1,a_2,\dots, a_n,\dots) ;
\forall i \in \mathbb{N}a_i \in R \}
$

に、成分ごとの和で和を定義し、 積を

$\displaystyle (a_i)_{i\in \mathbb{N}}\cdot (b_i)_{i\in \mathbb{N}}=
( \sum_{j=0}^i a_j b_{i-j})_{i \in \mathbb{N}}
$

で定義するとき、

  1. $ S(R)$ はこの和と積について環をなすことをしめしなさい。

  2. $ S(R)$ のののうち、有限数列であるものの (すなわち、数列 $ (a_i) $ であって、 「 % latex2html id marker 1480
$ \exists N \forall i >N \quad a_i=0$ 」 を満たすもの) 全体を $ F(R)$ と書くと、これは $ S(R)$ の部分環をなすことをしめしなさい。
  3. $ r\in R$ に対して、 $ (r,0,0,\dots)$$ c_r$ と 書くことにする。 $ c_R=\{c_r; r\in R\}$$ F(R)$ の 部分環であることを示しなさい。
  4. $ F(R)$ は、 $ c_R$ $ X=(0,1,0,0,\dots)$ で生成されることを 示しなさい。


next up previous
Next: About this document ...
2016-10-14