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1=7

代数学 IA No.7要約

今日のテーマ: 置換群 ・ 整数の加法群

置換

$\displaystyle a=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
2&3&4&1
\end{pmatrix}$

は、 $ 1,2,3,4$ がそれぞれ《変身》して $ 2,3,4,1$ になると 言う操作であって、これを、

$\displaystyle a(1)=2, a(2)=3,a(3)=4,a(4)=1
$

というようにも書く。

二つの置換の結合(演算)は通常《後ろから読》む。たとえば、

% latex2html id marker 1004
$\displaystyle a=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
2&3&4&1
\end{pmatrix},
\quad
b=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
3&1&2&4
\end{pmatrix}$

の掛け算 $ ab$ は、

$\displaystyle ab=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
2&3&4&1
\end{pmatrix}\begin{pmatr...
...&4 \\
3&1&2&4
\end{pmatrix}=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4 \\
4&2&3&1
\end{pmatrix}$

つまり、例えば $ 1$$ b$$ 3$ に化けて、次に $ a$$ 3$$ 4$ に化けるので、 結果として $ 1$$ ab$ によって $ 4$ に化けることになる。

いくつかの元 $ \{a_1,a_2,\dots, a_r\}$ を順繰りに変える置換、すなわち

$\displaystyle \begin{pmatrix}
a_1 & a_2& \dots & a_{r-1} &a_r \\
a_2 & a_3& \dots & a_r &1
\end{pmatrix}$

のことを 巡回置換と呼び、 $ (a_1,a_2,\dots a_r)$ と書き表す。

定義 7.1   集合 $ S$ が与えられたとする。このとき $ S$ から $ S$ への全単射の全体は 写像の合成に関して群をなす。これを $ S$ 上の対称群と言う。 有限集合上の対称群を有限対称群と呼ぶ。$ n$ 個の元からなる 集合 $ \{1,2,\dots,n\}$ の上の対称群を、$ n$ 次の対称群と呼び、$ \frak S_n$ で書き表す。

要は、$ n$ 個の元 $ 1,\dots,n$ の置換全体のなす群が $ n$ 次の対称群である。

定理 7.2   $ n$ 次の対称群の位数は $ n!$ である。

定義 7.3   対称群 $ \frak S_n$ の部分群のことを置換群という。

任意の置換は互いに同じ文字を含まない巡回置換の積として表すことができる。例えば 、置換

$\displaystyle \sigma=
\begin{pmatrix}
1&2&3&4&5&6&7&8&9\\
4&5&7&6&2&1&8&9&3
\end{pmatrix}$

をよくみてみると、次のような変身の様子が分かる。

  % latex2html id marker 1078
$\displaystyle 3\overset{\sigma}{\mapsto} 7\overset...
...igma}{\mapsto} 1 \qquad 2\overset{\sigma}{\mapsto} 5\overset{\sigma}{\mapsto} 2$    

したがって、

$\displaystyle \sigma=
(3\ 7\ 8\ 9)
(1 \ 4 \ 6 )(2\ 5)
$

であることが分かる。

置換の概念および記号は、 $ \{1,2,3\dots, n\}$ のような集合だけではなく、 他の集合でも使える。

たとえば、 $ \mu_n({\mathbb{C}})$ の元を一斉に $ \{\zeta_n\}$ 倍することは

$\displaystyle (1 \ \zeta\ \zeta^2\ \zeta^3\ \dots \zeta^{n-1})
$

なる置換に対応する。

$ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}},+)$ は可換群なのであった。 演算としては加法 $ +$ を用いる。 $ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}},+)$ に対してももちろん群の一般論が使える。 ただし、記法に関しては注意が必要である。

補題 7.4   任意の % latex2html id marker 1101
$ n\in Z_{\leq 0}$ に対し、 $ n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ $ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}},+)$ の部分群であり、 逆に、 $ ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}},+)$ の部分群はこのようにして得られるものに限る。

$ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の部分集合 $ n{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ を考えよう。話を見えやすくするために $ n=12$ とし、 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}\subset 12 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ を考える。 群の一般論により、剰余集合 $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/12{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ が存在する。 それは、

% latex2html id marker 1119
$\displaystyle a\equiv b \ {\Leftrightarrow}\ a-b \in 12 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}
$

により整数を類別したものである。

$ 12$ を法とした剰余類というのを高校で習った人もいるかもしれない。 それらの人にとっては、 % latex2html id marker 1123
$ a \equiv_{12 {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}} b $ というのは % latex2html id marker 1125
$ a\equiv b \pmod{12} $ と同義である。

$ \mu_{12}({\mathbb{C}})$ $ {\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/12{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}$ の間に

$\displaystyle \zeta^{k} \leftrightarrow [k]$   ($k$ のクラス)

という一対一対応があることにも注意しておこう。


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2017-05-25