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代数学 IA No.14要約

\fbox{今日のテーマ} 群の集合への作用と表現

定義 14.1   群 $ G$ の集合 $ X$ への作用とは、次のような条件を満たす写像

$\displaystyle G\times X \ni (g,x)\to g.x \in X
$

のことである。
  1. $ (g_1 g_2). x = g_1.(g_2. x)$ ( $ \forall g_1,g_2\in G, \forall x \in X$ ).
  2. $ e.x=x$ ( $ \forall x \in X$ ).

例 14.2   群 $ G$ と、その部分群 $ H$ が与えられたとき、$ G$$ G/H$

$\displaystyle g. [ x ] =[ g x ]
$

により作用する。($ [x] $$ x\in G$$ G/H$ でのクラス).

例 14.3   群 $ G$$ G$ への作用を次の三種類定義することができる。
  1. $ g. x=g x$ . (左作用)
  2. $ g . x = x (g^{-1})$ . (右作用)
  3. $ g. x = g x g^{-1} $ . (共役による作用).

例 14.4   有限群 $ G$ が与えられているとき、 $ X=\{G$   の部分群 $ \}$ への $ G$ の作用が

$\displaystyle g. H= g H g^{-1}
$

により決められる。 更に、正の整数 $ n$ に対して、 $ X_n=\{ H\in X; \vert H\vert=n\}$ とおくと、$ G$ は 上記と同じ定義式により $ X_n$ にも作用する。

補題 14.5   群 $ G$ が有限集合 $ X$ に作用しているとする。このとき $ G$ から $ \mathfrak{S}_n$ ($ n=\char93  X$ )への群準同型が $ G \ni g \mapsto [ x \mapsto g.x] \in \mathfrak{S}_n$ により定まる。

命題 14.6   群 $ G$ が有限集合 $ X$ に作用しているとする。このとき:
  1. $ X$ に同値関係 $ \sim$ が、

    $\displaystyle x_1 \sim x_2 {\Leftrightarrow}\exists g\in G$ such that $\displaystyle g. x_1=x_2
$

    で定まる。 $ \sim$ に関して $ x $ と同値なものの全体を、$ x $$ G$ -軌道という。
  2. $ x $$ G$ -軌道は、 $ G.x=\{g.x ; g\in G\}$ に等しく、 $ G/G_x$ と同一視できる。ここで、 $ G_x=\{g \in G; g.x=x\}$$ x $ の固定群と呼ばれる $ G$ の部分群である。
  3. $ \vert G\vert= \sum_{\text{orbit}} \vert G\vert/\vert G_x\vert$ .

定義 14.7   素数 $ p$ が与えられているとする。 有限群 $ G$ に対して、$ G$$ p$ -シロー群 $ P$ とは
  1. $ P$$ G$ の部分群である。
  2. $ P$ の位数は $ p$ のべき $ p^k$ である。
  3. $ \frac{\vert G\vert}{p^k}$$ p$ で割り切れない。
が成り立つときにいう。

一般に、任意の有限群 $ G$ と任意の素数$ p$ に対して、 $ G$$ p$ -シロー群が存在する。(シローの定理) ここでは、Milne のテキスト http://www.jmilne.org/math/CourseNotes/gt.html を参考にした 証明を述べる。 なお、シローの定理はさらにいくつかの結果を合わせたものを指すのが 普通であるが、それについては、群論の進んだ成書か、上記Milne のテキストを 参照のこと。

命題 14.8   有限群 $ G$ の部分群 $ H$ と、$ G$$ p$ -シロー群 $ P$ に対して、 $ G/P$ につぎのようなクラス分けを導入する。

$\displaystyle [g_1]\sim [g_2] \ {\Leftrightarrow}\ \exists h \in H$    such that $\displaystyle [h.g_1 ]= [g_2].
$

このとき、

  1. $ [g_1]\in G/P$ と同じクラスであるような $ G$ の元の個数は
    $ \vert H\vert/\vert H\cap g_1 P g_1^{-1}\vert$ である。
  2. $ \vert G\vert/\vert P\vert = \sum_\lambda \vert H\vert/\vert H \cap g_1 P g_1^{-1}\vert$
  3. とくに、$ H$ にも $ p$ -シロー群が存在する。

一般の群 $ G$ に対してシローの定理を証明するには、 確実にシロー部分群をもつような群 $ G'$$ G$ を埋め込めば良い。 そのような群の例としては 有限体 $ {\mathbb{F}}_p$ 上の一般線形群などもあるが、 それには少しだけ体論の知識を必要とする。 ここでは $ G$ $ \mathfrak{S}_{p^n}$ に埋め込むことを考えよう。 $ n$ を大きく取れば埋め込みを作ることは易しい。 $ \mathfrak{S}_{p^n}$$ p$ -シロー群は、つぎのように存在する。

命題 14.9  

$\displaystyle A=
\{
(\alpha_0,\dots, \alpha_n)\in \prod_{j=0}^n
\operatorname{...
...ox{${\mathbb{Z}}$}}/pZ)^j,{\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})
\}
$

とおき、

\begin{equation*}
H=\left\{
\varphi: ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p{\mbox{${\mathbb{...
...1,\dots, i_{j-1}) \\
&(j=0,1,2,\dots ,n)
\end{aligned}\right \}
\end{equation*}

と定義する。このとき:

  1. $ \vert H\vert \subset \mathfrak{S}( ({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})^n)$ .
  2. $ \vert H\vert =\char93  A=p^{1+p+p^2+\dots p^{n-1}}$ .

系 14.10   $ H$ $ \mathfrak{S}({\mbox{${\mathbb{Z}}$}}/p{\mbox{${\mathbb{Z}}$}})$$ p$ -シロー群である。


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2017-07-19