代数学III要約 No.1

今日のテーマ: ガロア理論とは

ガロア理論とは、体の拡大をガロア群という群の構造を調べることにより 明らかにする理論である。 これにより代数方程式が手に取るように扱えるようになる。

ガロア理論はそれ自身代数幾何学や数論の重要な道具になったのみならず、 数学的対象をそれについての対称性により考察するという一般的原理の もととなって数学の爆発的発展の基礎を与えた。

古典的な問題:

共役の活躍:

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$ \alpha=\sqrt{2}+1$ を考えよう。 これは

$\displaystyle \alpha^2-2 \alpha -1=0
$

をみたす。じつは、$ \alpha$ % latex2html id marker 759
$ \beta=-\sqrt{2}+1$ に置き換えた式

$\displaystyle \beta^2-2 \beta -1=0
$

も正しいことが分かる。おなじように、 誰かが、$ \alpha$ は次の等式を満たすことを発見したとする。

$\displaystyle 3\alpha ^5 -6 \alpha^4 -10\alpha^3+9 \alpha^2+17 \alpha+5=0
$

このとき、この式の $ \alpha$ をことごとく $ \beta$ に置き換えた

$\displaystyle 3\beta ^5 -6 \beta^4 -10\beta^3+9 \beta^2+17 \beta+5=0
$

もまた正しい。

「置き換え」は単純なものばかりではない。

根の置き換えをうまく利用すると、方程式論が易しくなる。

不変性、対称性:

共役によって変わらないという性質(不変性)をもつ式はたいへん重要である。 そのような元はほかのものよりも「対称性」が高いと考えることができる。

体:

方程式そのものや、根そのものといった「元」ではなく、 元から始まって和、差、積、商を用いて作られたもの全体の「集合」を うまく用いることにある。これが、体である。

もう少し丁寧に言うと、

定義 1.1   集合$ K$ が体であるとは、つぎの性質を満たすときにいう。
  1. $ K$ には和と積が定義され、それらの演算について $ K$ は単位元を持つ 可換環をなす。
  2. $ K\setminus\{0\}$ の各元は $ K$ 内に逆元を持つ。

体を、根の置き換え全体の集合(“ガロア群”)を考えることによって 統御するのがガロア理論である。