線形代数学II No.12要約

今日のテーマ: べき零行列の標準形

今回も引き続き、行列は複素数体 $ {\mathbb{C}}$ 上で考える。

定義 12.1   行列 $ A \in M_n({\mathbb{C}})$べき零であるとは、ある正の整数 $ N$ が存在して $ A^N=O$ が成り立つときにいう。

行列 $ A \in M_n({\mathbb{C}})$ が与えられているとする。 $ \lambda\in {\mathbb{C}}$ に対して

$\displaystyle V_{\lambda}=\{\mathbbm v \in {\mathbb{C}}^n\vert
\ \exists N >0$ such that $\displaystyle (A-\lambda E_n) ^N \mathbbm v={\pmb 0} \}
$

のことを $ A$$ \lambda$ に属する弱固有空間 と呼ぶのであった。 $ A$ は弱固有空間 $ V_\lambda$ 上に作用していて( $ A V_\lambda \subset V_\lambda$), $ A-\lambda E_n$$ V_\lambda$ 上 べき零である。

したがって、べき零行列の標準形が興味の対象になる。

補題 12.2   $ N\in M_n({\mathbb{C}})$ について、次のことは同値である。
  1. $ N$ はべき零である。
  2. $ N$ は、対角成分がすべて 0 であるような上半三角行列と相似である。

12.1   $ N_n=
\begin{pmatrix}
0 & 1 & 0 & 0 &\dots& 0 & 0 \\
0 & 0 & 1 & 0& \dots& 0 &...
...
0 & 0 & 0 & 0 &\dots& 0 & 1 \\
0 & 0 & 0 & 0 &\dots& 0 & 0 \\
\end{pmatrix}$ はべき零行列である。

定理 12.3   任意のべき零行列は

$\displaystyle \begin{pmatrix}
N_{k_1} \\
& N_{k_2} \\
&& N_{k_3} \\
&&&\ddots \\
&&&&& N_{k_2} \\
&&&&&& N_{k_l}
\end{pmatrix}$

の形の行列と相似である。