今日のテーマ:
体
上の一変数既約多項式
が与えられているとする。
に
の根
を付け加えてできたような体
を
つくることができるのであった。
もちろん、
は
上一次の因数
をもつ。
しかし、
がこれ以上因数分解できるかどうかは
場合による。
とその上の(既約とは限らない)一変数多項式
が与えられているとする。このとき、
の拡大体
が
の分解体であるとは、
が
上の多項式として
1次式の積に分解できるときにいう。
もっと一般に、 体
上の有限個の一変数多項式
が与えられたとき、
がその分解体
であるとは、各
が
で一次式の積に分解できるようなときにいう。
(これは実際には積
の分解体ということと同じである。)
与えられた一変数多項式
にたいして、
その分解体は一意とは限らない。じっさい、
が
の分解体なら、
の拡大体はどれも
の分解体である。
上の任意の一変数多項式
は分解体をもつ。すなわち、
ある体
で、
が
上一次式の積に分解できるようなものが存在する。
上の命題を用いると、
が
の分解体であるとは、
を十分大きい体
に埋め込んだ時に
の
における
上の共役がすべて
に
含まれているということと同値であるということがわかる。
の拡大体
と、その拡大体
が与えられているとする。
の
上の最小多項式を
と置こう。
このときもし
が
の分解体ならば次のことが成り立つ。
中への
-同型
が任意に与えられたとき、
の延長であるような中への同型
が存在する。
上の定理の条件は 「(
の十分大きな拡大体
の中で,)
のすべての
上の
(
内での)共役が
に属する」ということと同値である。
とその上の一変数多項式
が与えられたとき、
の分解体
が存在するのであった。
の中での
の根を
と
おくとき、
は明らかに
の拡大体で
の分解体のうち極小なものである。
これを
の極小分解体(minimal splitting field)と呼ぼう。上で「間に合わせ的」と書いたのは次のように「最小...」と呼ぶことが 普通だからである。(英語なら the が付くか否かの違いに過ぎない。)
とその上の一変数多項式
が与えられたとき、
の極小分解体はすべて互いに
-同型である。
したがってそれらをいちいち区別せずに最小分解体
(the minimal splitting field)と呼ぶ。今回のまとめ:
一変数多項式はそれがどんなものであれ体を拡大すれば 一次式の積に分解できるということ、そのために必要な体はどれも 同型であることを学んだ。このことは今後の議論に重要な基礎を与える。

とおく。このとき、
は
の因数であることを示しなさい。
のひとつの根を
と置くと、
も
の根であることを示しなさい。

は
上の
の最小分解体であることを
示しなさい。
は

の元として既約であることを示しなさい。
(ヒント:
が既約でなかったとして、
と因数分解されたとする。
はともにモニックとして良い。前問の結果をもちいて、
の定数項が
また
の根であることを示せ。その結果
が
上に
解を持つことにするが、これは
の複素数体上の素因数分解の
結果に反する。(
は実数の根をもたない)。